廃車の窓ガラスをグラスに。深川硝子工芸の小樽再生ガラス。

長年使われその役割を終えたとき、捨てられるのではなく別のカタチに変化し再び愛されるプロダクツ。そんなプロダクツの持つ歴史とモノとしての素晴らしさを再発見する企画。今回は廃車の窓ガラスをグラスに生まれ変わらせる深川硝子工芸を取材した。

ガラスの街、小樽で作られる再生ガラスのテーブルウエア。

深川硝子工芸の職人さんは23 人ほど。プロダクツによって担当が決まっているそうで、再生ガラス作りも専門の職人がいる

創業1906年の深川硝子工芸が北海道・小樽の地に拠点を移したのは約20年前のこと。新しい工場を新設する上で、先代は2つのことを念頭に建てた。

「まず地下タンクを作り雨水や雪解け水を貯水、濾過する循環システムを取り入れることで、水道水の使用量を削減。もうひとつは、1500℃近くまで熱が上がる溶解窯が10機あるのですが、その廃熱を社屋や敷地駐車場に巡らせて、冬は廃熱で雪が溶けるようにしています。なので会社には暖房設備がひとつもなくて、真冬でも廃熱だけで会社中が温まるんです」

と話すのは代表の出口健太さん。環境的配慮をしている会社ということもあったのか、北海道の大手リサイクル会社から廃車の窓ガラスのアップサイクルを依頼された。現在廃車の95%はリサイクルされているが、残りの5%はできていない。それが窓ガラスとバンパーだ。

北海道の産業廃棄物業者に集まってきた廃車。クルマの95%はリサイクルされるが、ガラスとバンパーは活用が困難だった
廃車から窓ガラスを手作業で外す。再生ガラスとして使われるのは、フロントとリアガラスの2カ所。これを再溶解する

小樽再生ガラスで使われているのは、フロントとリアのガラス材。それを小樽再生ガラスのテーブルウエアに加工して発表したのが2年前のことだ。

工芸用ガラスの場合、粘性が低いため扱いやすいが、窓ガラスは冷めて固まるのが早いため成形を短時間で行わなければならず、職人泣かせな素材。それでも、あえて気泡を残して素材感を出したり、口当たりがよく洗いやすい飲み口にしたりと小樽再生ガラスならではの特徴を持たせた。ちょいレトロなデザインもより多くの人の心をつかむはずだ。

取り出した窓ガラスは粉砕して細かくして溶解窯へ。深川硝子工芸では、約1500℃近くの溶解窯が全10機あるそうだ
息を吹き込みそれぞれのグラスの形にしていく。ポイントは飲み口部分を約2㎜以下にすること。かなりの技術が必要になるという
溶けているガラスを吹き竿に巻き取って、くるくると回しながら形を整える。窓ガラスは冷めやすいので、素早く作業。ここからが職人の腕の見せどころ!
成形直後のガラスは急激に冷やすと割れやすい。徐冷炉と呼ばれるところで、ゆっくりと冷やしていく

素材を魅力をそのまま活かしたグラスの数々。

右からカフェグラス(高さ85㎜、口径85㎜、2640円)、フリーグラス(高さ62㎜、口径80㎜、2420円)、サワーグラス(高さ135㎜、口径78㎜、3080円)、フロートグラス(高さ130㎜、口径85㎜、4180円)

飲み口の厚みを約2㎜以下にして、ビールやハイボールが美味しく感じる薄さにしているのが特徴のひとつ。

窓硝子の薄いグリーンが残っていたり、気泡が入ったままにしているのも素材感を存分に味わって欲しいから。

【DATA】
深川硝子工芸
TEL0134-31-3002
https://fukagawaglass.co.jp
https://tomi-glass.online

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2023年8月号 Vol.352」)

この記事を書いた人
めぐミルク
この記事を書いた人

めぐミルク

手仕事大好きDIY女子

文房具、デザイン、ニッポンカルチャーなどのジャンルレスな雑誌編集を経てLightningへ。共通しているのはとにかくプロダクツが好きだということ。取材に行くたび、旅行するたびに欲しいものは即決で買ってしまうという散財グセがある。Lightningでは飲食、ハウジング、インテリアなどを担当。
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