【東京横丁酒場ガイド】婆娑羅(三鷹)|郊外で輝く、コの字カウンターの宇宙。

”せんべろ”や”ハシゴ酒”、”ネオ大衆酒場”などが昭和時代を知らない若者の間で流行っている今、「安くて旨い」横丁酒場が人気を集めている。吉祥寺の隣町で東京のベッドタウンでもある三鷹。そこで暖簾を掲げる「婆娑羅」は、渋い飲み屋の外観に誘われて入ると繊細な料理と酒が楽しめる隠れ家的な町酒場だ。

繊細な料理と酒をゆったり楽しむ町酒場。

日本で一番人気の住宅街・吉祥寺の隣駅、三鷹はぼくの地元に近い。かつては名画座も2館あって、中高時代は毎週のように自転車で通った。そんな時分から渋い飲み屋だなぁと、気にしていた店だ。

実際に入ったのは三十路をだいぶ過ぎた頃ではなかったか……。メニューのベースは焼きとんに煮込みだが、旬の刺身や野菜のおばんざいも多数扱う。リーズナブルな価格設定だがどれも逸品。ずっとシングルなので、そんな料理がつくづくありがたい。

店名のバサラはサンスクリット語で「金剛」の意だが、そこから意味が転じ、型破りな南北朝時代の社会風潮や文化的流行をも表す。まったくもって、名は体を表す店だ

ご主人の大澤伸雄さんは滅多に愛想も言わず、職人気質な印象だが、それも繊細さの裏返しだと料理でわかる。やわらかな紫イカの丸焼きなどを当てに、オリジナル芋焼酎をロックで飲んでいると、あっという間に空……。料理が得意だったという大澤さんの母上の味が、どの品にも潜んでいる。

国立のとある居酒屋の店主に見初められ、居酒屋を始めることになった大澤さん。ゆったりとした口調にほほえみの絶えない気さくさが魅力

繊細、新鮮、リーズナブルな「婆娑羅」メニュー。

季節を問わず大人気だというしめ鯖(700)

イモ焼酎3種をブレンドした「婆娑羅オリジナルブレンド(470)」。

大沢さんのお母さんが家庭用として使っていたぬかで作った店の人気メニュー、 ぬか漬け。なんと80年以上継ぎ足しているというから驚き(450)

DATA
婆娑羅
東京都武蔵野市中町1-3-1 桜井ビル1F
TEL0422-54-1666
営業/17時~22
休み/日曜・祝日

※値段など情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/別冊Lightning Vol.209TOKYOノスタルジック横丁」)

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