衰退しつつある伝統産業の魅力をアートを通して再発見してもらいたい。
「元々、実家が仏壇仏具の製造や修理を行う会社で、そちらは兄が継いでいますが、最近仏壇が売れないんですよ。ウチは木工から塗装、金箔など自社で生産しているんですが、その技術が廃れてしまうのはもったいないので、まずは漆を手に取ってもらいたいという思いからスタートしました」
と話すのは、漆塗りなどの伝統技術を使った新しい作品を提案する「EN_」の小川直人さん。小川さん自身は作り手ではなく、ファッション業界出身。異業種だからこそできる伝統に縛られない柔軟な発想と幅広い人脈を活かし、まずは自身が若い頃から好きだったストリートカルチャーの象徴であるスケートボードのデッキに漆に漆塗りを施し、そこに化粧をあしらったものや、流木に漆を塗った花器などの作品を生み出した。
ほかにも、新たな試みとして地元滋賀の信楽焼に漆を塗った器も開発するなど、廃れゆく伝統工芸の可能性へと挑戦している。
「漆塗りも、イラストを描いてくれたのも地元の作家で、信楽焼も地元・滋賀の伝統工芸ですが、皆いい腕を持っているのに苦労してるんですよ。こうした作家さんのご縁を繋ぎながら新しい魅力として地方から発信していけたらとも思っています。まだ始まって4年目なのでこれからですが、いずれは海外にも進出したいですね」
スケートボードをオリエンタルなアート作品に昇華!
スケートボードのデッキに漆塗りを施した後、仏具などに使われる建具や金箔の装飾品をあしらった「オリエンタルデッキ」。実際の制作は、実家の会社に在籍する仏具製作の職人が手がけただけあって、塗りはもちろん細かい細工の仕上げまで見事な仕上がり。
日本古来から伝わる美意識と匠の技に新しい解釈を加えるモダンアート。
暮らしの中に手軽に伝統工芸とアートが取り入れられる。
より手軽に漆をというコンセプトで信楽焼に漆を塗った器と、同じく滋賀の畳店とコラボした漆塗り×信楽焼ポット。サボテン付きで約1万円と手に取りやすい価格。
枯れた盆栽に新たな息吹を吹き込むDEAD BONSAIシリーズ。
たまたまサボテン農園を訪れているときに見かけて一目惚れした枯れ盆栽。売り物でなかったものの無理して譲ってもらったものを、鉄作家の知人が手掛けるフレームと組み合わせることで見事なアート作品へと仕立てた。ディスプレイとしてインパクト大。応相談
漆の高級感と流木の枯れ具合が絶妙にマッチ。
漆塗りを施した流木を花器にしてドライフラワーを活けた「EN_」初期の作品シリーズ。漆のツヤが独特の高級感をもたらす。当然全て一点物。ただし、いい形の流木の入手が困難なため現在は製作していない。販売ではなくオフィスやイベントのディスプレイとしてレンタルは可能。
着物の生地を再利用したコンセプト作品。
実家に眠っていた西陣織の着物の生地を使アンティークの椅子の生地として使用。こちらは試作だそうだが、海外や国内でもホテルなどの施設においたら外国人にウケそう。柔軟な発想が消えゆく伝統産業の復興のヒントになるかもしれない。
本業はアパレル関連のディレクション業。
小川さんが関わるブランドのウエア類。右はカジュアルブランド「bend(s)」(@bends19)。左は自身のブランド「HANEI」(@hanei_color_your_life)と京都を中心に銭湯カルチャーを発信する「FROCLUB」(@fro_spadupa_club26)とのコラボ品
【問い合わせ】
EN_
http://en-makeitlast.com
Instagram @en_make_it_last
(出典/「Lightning2023年8月号 Vol.352」)
Text/M.Terano 寺野正樹 Photo/M.Kato 加藤正憲
関連する記事
-
- 2024.11.20
「お洒落だな〜」と感じるインテリアになるポップアート12選。
-
- 2024.11.12
絵の具にしかできない表現を模索し続けるアーティスト・品川はるな