日本の伝統工芸技術を使い、和洋折衷なモダンアートを提案する「EN_」。

  • 2023.09.06

固定概念に縛られず、日本の伝統技法に新しい解釈を加えたアート作品を生み出す「EN_」。日本の伝統工芸の復権と、伝統の枠を超えた新しいモダンアートの試みとしても注目したい。ファッション業界出身という「EN_」の代表、小川直人さんだからこそできた、数々の試みや作品を取材した。

衰退しつつある伝統産業の魅力をアートを通して再発見してもらいたい。

「Brookink 『EN_』 」代表・小川直人さん|アパレル業界でブランドのディレクションなど務める傍ら、伝統工芸の衰退に何かしたいと2019年に「EN_」を創立。地元・滋賀の職人と作品を生み出している

「元々、実家が仏壇仏具の製造や修理を行う会社で、そちらは兄が継いでいますが、最近仏壇が売れないんですよ。ウチは木工から塗装、金箔など自社で生産しているんですが、その技術が廃れてしまうのはもったいないので、まずは漆を手に取ってもらいたいという思いからスタートしました」

琵琶湖近くのショールーム。元々は家業の仏具店のショールームだったところを改装して利用。アポイント制で見学も可

と話すのは、漆塗りなどの伝統技術を使った新しい作品を提案する「EN_」の小川直人さん。小川さん自身は作り手ではなく、ファッション業界出身。異業種だからこそできる伝統に縛られない柔軟な発想と幅広い人脈を活かし、まずは自身が若い頃から好きだったストリートカルチャーの象徴であるスケートボードのデッキに漆に漆塗りを施し、そこに化粧をあしらったものや、流木に漆を塗った花器などの作品を生み出した。

ショールームの内部。これまで手がけてきた作品とこれから売り出す「信楽焼×漆塗り」の作品が並ぶ。ディスプレイに使用される什器も知り合いの鉄作家のオリジナル作品だそう

ほかにも、新たな試みとして地元滋賀の信楽焼に漆を塗った器も開発するなど、廃れゆく伝統工芸の可能性へと挑戦している。

「漆塗りも、イラストを描いてくれたのも地元の作家で、信楽焼も地元・滋賀の伝統工芸ですが、皆いい腕を持っているのに苦労してるんですよ。こうした作家さんのご縁を繋ぎながら新しい魅力として地方から発信していけたらとも思っています。まだ始まって4年目なのでこれからですが、いずれは海外にも進出したいですね」

漆塗りを施した後に、滋賀県出身で小川さんと親交のある水墨画家・高橋良氏による水墨画が描かれた作品。「猪鹿蝶」が題材。高橋氏の作品はインスタグラム(@ryotakahashi)でも見られる
同じく水墨画家の高橋良氏が手がけたシリーズ。漆塗芸では定番の鳥と侍を組み合わせたオリジナルのキャラが目を引く。「EN_」の作品はインスタグラム(@en_make_it_last)でも見られる
漆塗りを施したデッキにお寺の内陣で使用される金物を大胆にあしらった作品。当初は職人さんは新しい試みに消極的だったが、今では協力的だそう
ショールーム奥のワークスペースには小川さんの10代の頃から好きだったというアメリカンポップアートのポスターやシュープリーム、アンダーカバーといったストリート系ブランドのアイテムが並べられている

スケートボードをオリエンタルなアート作品に昇華!

スケートボードのデッキに漆塗りを施した後、仏具などに使われる建具や金箔の装飾品をあしらった「オリエンタルデッキ」。実際の制作は、実家の会社に在籍する仏具製作の職人が手がけただけあって、塗りはもちろん細かい細工の仕上げまで見事な仕上がり。

日本古来から伝わる美意識と匠の技に新しい解釈を加えるモダンアート。

暮らしの中に手軽に伝統工芸とアートが取り入れられる。

より手軽に漆をというコンセプトで信楽焼に漆を塗った器と、同じく滋賀の畳店とコラボした漆塗り×信楽焼ポット。サボテン付きで約1万円と手に取りやすい価格。

枯れた盆栽に新たな息吹を吹き込むDEAD BONSAIシリーズ。

たまたまサボテン農園を訪れているときに見かけて一目惚れした枯れ盆栽。売り物でなかったものの無理して譲ってもらったものを、鉄作家の知人が手掛けるフレームと組み合わせることで見事なアート作品へと仕立てた。ディスプレイとしてインパクト大。応相談

漆の高級感と流木の枯れ具合が絶妙にマッチ。

漆塗りを施した流木を花器にしてドライフラワーを活けた「EN_」初期の作品シリーズ。漆のツヤが独特の高級感をもたらす。当然全て一点物。ただし、いい形の流木の入手が困難なため現在は製作していない。販売ではなくオフィスやイベントのディスプレイとしてレンタルは可能。

着物の生地を再利用したコンセプト作品。

実家に眠っていた西陣織の着物の生地を使アンティークの椅子の生地として使用。こちらは試作だそうだが、海外や国内でもホテルなどの施設においたら外国人にウケそう。柔軟な発想が消えゆく伝統産業の復興のヒントになるかもしれない。

本業はアパレル関連のディレクション業。

小川さんが関わるブランドのウエア類。右はカジュアルブランド「bend(s)」(@bends19)。左は自身のブランド「HANEI」(@hanei_color_your_life)と京都を中心に銭湯カルチャーを発信する「FROCLUB」(@fro_spadupa_club26)とのコラボ品

【問い合わせ】
EN_
http://en-makeitlast.com
Instagram @en_make_it_last

(出典/「Lightning2023年8月号 Vol.352」)

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