コロナ禍の自宅時間にコラージュアートを始めた。
アメリカンポップアートの先駆けといわれているコラージュアートの世界で、いま注目されている人物が東京にいる。それが長谷部さんだ。本業は、なんと某大手セレクトショップのMDである。
「仕事上、日々アメリカ衣料に触れてきたので、ポップアートは元々好きでした。コラージュアートに興味を持ったきっかけは、植草甚一さんです。自分は絵を描く技術もセンスもなかったんですが、アーティストに対する憧れや尊敬の念がありましたし、ショップのビジュアルやレイアウトを構築したり、服のコーディネイトを考える感覚がコラージュアートに重なり、自分にもできるかもしれないと思ったんです」
仕事柄、資料として1940~’60年代のアメリカの雑誌(LIFE、Esquire、National Geographic、The Saturday Evening Postなど)を収集していたため、素材は手元にたくさんあった。保管場所の関係もあり、そろそろ一部を処分しなければと思っていた矢先、コロナウィルスによるパンデミックで自宅時間が急増。処分する予定だったそれらを使い、コラージュアートを始めることにした。
作品サイズは、額に合わせて5~6サイズを最初から用意し、それに合わせてマットを用意。ヴィンテージ雑誌を1ページずつめくりながら、ベースになる素材を決め、全体のテーマやイメージを連想しながらコラージュする素材を探していく。その途方もない作業から幾多の作品が生まれるのだ。手掛けた作品の名は、完成後に考えるそう。
「最初は素材を切り出すのが楽しくて、とにかく切りまくってました(笑)。写経みたいなものですかね。いまはコラージュすると決めてから切っています。苦手な作業は糊付けです。一発勝負で失敗できないですから」
中学校の美術の時間に模写をしていたのが、ベルギーの画家ルネ・マグリットだった。その独創的ながらも“違和感がない仕上がり”を長谷部さんも常に目指しており、どの作品もコラージュする素材同士の角度や立体感、サイズ感などのマッチングに執着している。さらに魅力的なのは、ファッション的なエッセンスが随所に散りばめられていること。だからこそ、ファッション業界でも話題になっているのである。
これまで手掛けたのは500作品以上。ここでは昨年の個展に出品した作品の一部を紹介。
Collage Art_04 this is cat!
Collage Art_07 hostage
Collage Art_12 UNTITLED
Collage Art_13 old clock man
Collage Art_18 VCR head android
Collage Art_20 UNTITLED
Collage Art_21 tomato catsup
Collage Art_22 red-meat speech
【問い合わせ】
Instagram @onebook_a_day
(出典/「Lightning2023年8月号 Vol.352」)
Text/T.Miura 三浦正行 Photo/S.Kai 甲斐俊一郎
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