ファッションセンスが際立つ! ヴィンテージ雑誌を素材にしたコラージュアート。

雑誌のイラストや写真をコラージュしたアートは、実はポップアートの先駆けといわれている。そんなクラシカルな手法をもとにヴィンテージ雑誌をコラージュして独自の世界観を打ち出す注目のアーティストが東京にいた。それが大手セレクトショップでMDとして働く長谷部慎之介さんだ。長谷部さんがコラージュアートを始めるきっかけと、その作品について取材した。

コロナ禍の自宅時間にコラージュアートを始めた。

「Collagemaker」長谷部 慎之介さん|老舗の某大手セレクトショップにてMDを務めるファッションのプロフェッショナル。以前は度々店頭にも立ち、スタイリングだけでなく、ショップディスプレイなど空間演出も手掛けていた。その経験と抜群のセンスは、作品にも表れている。Instagram@onebook_a_day

アメリカンポップアートの先駆けといわれているコラージュアートの世界で、いま注目されている人物が東京にいる。それが長谷部さんだ。本業は、なんと某大手セレクトショップのMDである。

「仕事上、日々アメリカ衣料に触れてきたので、ポップアートは元々好きでした。コラージュアートに興味を持ったきっかけは、植草甚一さんです。自分は絵を描く技術もセンスもなかったんですが、アーティストに対する憧れや尊敬の念がありましたし、ショップのビジュアルやレイアウトを構築したり、服のコーディネイトを考える感覚がコラージュアートに重なり、自分にもできるかもしれないと思ったんです」

仕事柄、資料として1940~’60年代のアメリカの雑誌(LIFE、Esquire、National Geographic、The Saturday Evening Postなど)を収集していたため、素材は手元にたくさんあった。保管場所の関係もあり、そろそろ一部を処分しなければと思っていた矢先、コロナウィルスによるパンデミックで自宅時間が急増。処分する予定だったそれらを使い、コラージュアートを始めることにした。

長谷部さんが初めて手掛けた作品がこちら。タイトルは『have a drink』。コロナ禍の自宅時間が、コラージュしてみたいという想いを後押ししてこの作品が生まれた

作品サイズは、額に合わせて5~6サイズを最初から用意し、それに合わせてマットを用意。ヴィンテージ雑誌を1ページずつめくりながら、ベースになる素材を決め、全体のテーマやイメージを連想しながらコラージュする素材を探していく。その途方もない作業から幾多の作品が生まれるのだ。手掛けた作品の名は、完成後に考えるそう。

「最初は素材を切り出すのが楽しくて、とにかく切りまくってました(笑)。写経みたいなものですかね。いまはコラージュすると決めてから切っています。苦手な作業は糊付けです。一発勝負で失敗できないですから」

『December 1947』という作品で、1947年12月1日発行のLIFE誌をもとに制作。ネクタイを動かして下から景色が覗くアレンジが目を引く
人物のイラスト部分に実際の生地スワッチをコラージュするという、なんとも長谷部さんらしい作品。本業のスタイリングセンスが存分に活かされている

中学校の美術の時間に模写をしていたのが、ベルギーの画家ルネ・マグリットだった。その独創的ながらも“違和感がない仕上がり”を長谷部さんも常に目指しており、どの作品もコラージュする素材同士の角度や立体感、サイズ感などのマッチングに執着している。さらに魅力的なのは、ファッション的なエッセンスが随所に散りばめられていること。だからこそ、ファッション業界でも話題になっているのである。

芸術新潮の1998年5月号は、長谷部さんが好きなルネ・マグリットの特集号。何気なく中学の美術の授業で模写をしていたマグリットの影響は、現在のアートワークに少なからず関係している
主にアメリカの1940~’60年代の雑誌を使うが、中には『ソビエトグラフ』など日本のものも……。今でも古書店や古本市な どを回って素材を収集している。周りに置いてあるのは、額装する前のコラージュ作品で、未完成品も含めると100点以上ストックする

これまで手掛けたのは500作品以上。ここでは昨年の個展に出品した作品の一部を紹介。

Collage Art_04 this is cat!

Collage Art_07 hostage

Collage Art_12 UNTITLED

Collage Art_13 old clock man

Collage Art_18 VCR head android

Collage Art_20 UNTITLED

Collage Art_21 tomato catsup

Collage Art_22 red-meat speech

【問い合わせ】
Instagram @onebook_a_day

(出典/「Lightning2023年8月号 Vol.352」)

この記事を書いた人
ランボルギーニ三浦
この記事を書いた人

ランボルギーニ三浦

ヴィンテージ古着の目利き

全国的に名を轟かせていた札幌の老舗ヴィンテージショップに就職。29歳で上京。Lightning編集部、兄弟誌・2nd編集部で編集長を務めた後、現在は、Lightning副編集長に。ヴィンテージ、古着の知識はその道のプロに匹敵。最近はヴィンテージのロレックスが最大の関心事で、市場調査も日課のひとつ。ランボルギーニ三浦の由来は、もちろんあの名車。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

全16色! 10年以上のロングセラーを誇る「HEATH」の名作ネルシャツが超人気なワケ

  • 2026.09.30

秋冬のアメカジ服の定番、ネルシャツ。横浜のセレクトショップHEATHが手がけるオリジナルブランドBLUE PORTのネルシャツが10年以上のロングセラーを誇るとのことで、その人気の秘密に迫る。 【理由①】優れたコストパフォーマンス ディテールやシルエットにもこだわった高いクオリティに対して、なんと税...

イタリア・パルマで誕生。世界屈指のベルト「Anderson’s」、その生まれる場所へ

  • 2026.09.17

1966年、イタリア北部に位置する美食の街・パルマで創業したベルトメーカー「アンダーソンズ」。装いを完成させる“名脇役的存在”のベルトをメインとする稀有な存在にして、世界的な評価を獲得する某ブランドのプロダクトはどのように生まれるのか。その魂が宿る自社工場に足を運んだ。 イタリア・パルマの地に宿る6...

無垢の金属、輝く伝統。純金や純プラチナを使った「市松」の究極の逸品

  • 2026.09.25

純金や純プラチナなど、純度100%の軟らかい金属をアクセサリーにするためには非常に高い技術が必要だ。それを可能にするのが「市松」。約30年にわたって培った“叩く”技術が可能にする唯一無二のリングの輝きに迫る。 熟練の技なくしては完成しない究極の逸品 原材料高騰の影響もあって、希少性が高まっている純金...

毎日に、最良の定番。B.V.D.の「GOLD」は昔ながらの良さと、いま欲しいバランスを兼ね備えたTシャツ

  • 2026.09.16

長く愛されてきた定番には、変わらない理由がある。B.V.D.の「GOLD」もそのひとつ。肌着として培ってきた心地よさをそのままに、今の気分で一枚でも着られるリラックスフィットが加わった。昔ながらの良さと、いま欲しいバランス。その両方を備えた、新しい定番のかたちを見ていこう。 変わらない着心地にゆとり...

Pick Up おすすめ記事

名作[ハリケーントップ]誕生から40周年! 「CHUMS」の「ハローウェア」が再登場

  • 2026.09.23

「チャムス」の名作[ハリケーントップ]の誕生から40年を迎える今年、「ハローウェア」が再登場する。そのコレクションを紹介する前に、まずはブランドが歩んできた歴史を紐解いていこう。これまでの歩みを知れば、「ハローウェア」をもっと楽しめるはずだ。 ハロー、懐かしくて新しいチャムス サングラスを川に落とさ...

ニューヨーク・ブルックリン発! 作業服由来のデイリーウエアはこう着こなす。

  • 2026.09.16

創業1904年、高層ビルの建設が相次ぐ当時のニューヨークでリアルワーカーに向けて、作業服を提供していた「ブルックリンオーバーオール」。そんな確固たる出自に由来する男服は、カジュアルウエアとして現代にDNAを継ぐ。 旧きよきデザインと生地づくりで飽きのこない王道のワークスタイル 40年代の個体をベース...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

本格派でコスパも優れる「Amber Threads」のライトアウターで秋を始めよう!

  • 2026.10.05

古着店「DOSTYLE」を運営する「ドラマ」が手がける気鋭のアメカジブランド「Amber Threads」。“トレンドとヴィンテージを融合したアメカジスタイル”を掲げる同ブランドはバリエーション豊かなライトアウターを展開する。ヴィンテージをベースとした本格派でありながらコストパフォーマンスにも優れる...

トラッドの相棒にドゥニームのジーンズを! ウエアハウスが1988年のクラボウデニムを再現

  • 2026.09.17

1980〜90年代に日本のセルビッジジーンズの先駆けとして一世を風靡したデニムブランド「ドゥニーム」。同ブランドの創業当時のレシピをもとに、再始動を手掛けたのが「ウエアハウス」だ。彼らの徹底的な研究・解析によって生み出された至極の1本は、まさにオーセンティックそのもの。そして、本当の意味での“良い色...