アメリカでもホットロッドカルチャーが色濃く受け継がれているのが西海岸。乾いた空気と暖かい気候はヴィンテージカーには最適のエリアだ。そんなカリフォルニアで戦後すぐに生まれた、いわゆるトラディショナルなスタイルのホットロッドだけを集めたイベントが開催された。そこに集まるマシンたちに、アメリカのクルマ好きのコアな一面を見ることができる。
リヨン航空博物館の前は滑走路で開催される「HOT RODS ON THE TARMAC」
ホットロッドのなかでもとくにコアなファンが多いトラディショナルなスタイル。ベースとなるクルマはもとより、中にはカスタムするパーツまでも当時のヴィンテージパーツを全米中から探してくるなど、その情熱とこだわりは折り紙付き。そんな連中が集まるイベントがカリフォルニアはオレンジカウンティのジョン・ウェイン空港にあるリヨン航空博物館で開催された。
ここは第二次大戦で使われた戦闘機の実機を中心にハンガー(飛行機の格納庫)に展示される場所で、ホットロッド文化が生まれた戦後になぞらえて、当時の飛行機と、ノスタルジックなスタイルのホットロッドを同時展示するという、いかにもアメリカらしいイベント。普段は開けられることがないハンガーを全開にして、その前にホットロッドが並ぶ姿は圧巻。イベントの開催は会場の都合でたった3時間という短いものだったが、それでも多くの愛好家が自慢のマシンをここに持ち込んで、会場はノスタルジックな空間へと変貌。そのほとんどが自走やってくるから恐れ入る。
「クラシックカーでも走らせなければ意味が無い。しかも現代車両をも凌駕するスピードで」というホットロッド愛好家の情熱は、多くを語るよりも、咆哮するV8エンジンのサウンドが教えてくれる。旧きよき文化やプロダクツを愛する人たちの情熱は、こうして次の世代に受け継がれていく。
会場で見かけた、気になるホットロッドを紹介!
ルーフが完全に作り直されている1939年式リンカーン・ゼファー。大人っぽく低くするため、チョップではなく新造され、フロントのウインドシールドは2ピース化。仕上がりが完璧すぎてこれがノーマルかと思うほどだ。
オリジナルのスタイルを残したままエンジンは怪力仕様になった’40年式フォード・コンバーチブル。’40年式フォードは’32年式に次ぐホットロッドの定番ベース車両として人気。オリジナル重視のスタイルも雰囲気あり。
大胆にルーフをチョップして低いスタイルを手に入れた’37年式フォード。個性的なティアドロップ型のヘッドライトはこれが純正。戦前のフォードに見ることができる手の込んだデザインはそのまま活かすのが正解である。
’32年式フォード・ロードスターをベースにフェンダーをチョップしたベーシックなホットロッド。いわゆるトラディショナルなホットロッドといえばこういうスタイルが思い浮かぶほど正しい姿。
’40〜’60年代にレースに出ていた車両で、東海岸の博物館に展示されていたという’40年式フォードを所有するクレイグ。レースに出ていただけに、心臓部は当時からマーキュリー製のフラットヘッドに換装済み。
イベントのキュレーターだったオールドクロウ・スピードショップのボビーはビュイックのエンジンに換装した’31年式フォード・ロードスターを持ち込む。
ホットロッドのベース車両としてはフォードが一般的だけど、少数派といえご覧のシボレーベースも存在。これは’33年式シボレーのクーペ。この時代のシボレーはV8ではなく直6エンジンが主流だった。
2トーンペイントで見た目も華やかに仕上げている’36年式フォード・クーペをベースにした1台。低い車体とむき出しのエンジンで戦闘的なスタイルに。ホイールキャップは’57年式キャデラックから流用している。
フォードの上位ブランドであるマーキュリーをベースにするホットロッドも存在。これは’40年式をベースに当たり前のようにチョトップされている。心臓部はマーキュリー製のフラットヘッドを積む。
1951年にトムとフェリックス親子がビルドしたフォルナチャーリ・アダムス・レイクスターはエルミラージュのスピードトライアルにも出場していた歴史あるベリータンク。こちらが現オーナーのエド。
(出典/「Lightning2022年11月号 Vol.343」)
Text/S.Koike 小池彰吾 Photo/Y.Akiyama 秋山豊(Seven Bros.)