裁断から縫製まで一貫生産を可能とするマッコイの中枢。
その昔、レザージャケットは人間の命を守るための防護服だった。その通りの意味で「第二の皮膚」だったのだ。オープンコクピットで風雨に晒されるパイロットたちは革に暖を求め、スピードに挑み続けるライダーは、転倒から我が身を護るために革を纏った。レザージャケットの品質低下は、そのまま着用者の死と直結した。
例えばBUCOは、当時から自社ファクトリーを持ち、「卸し業」ではなく、あくまでモーターサイクルアクセサリーの「製造業」にこだわっていた。ライダースジャケットとは、ライダーのいわば「命綱」。死と隣り合わせのライダーから、あらゆる要望を聞き、改善要求に応えるべく、実験や試作を重ねていくうちに、やがてその高い安全性能で、全米のライダーからの信頼を勝ち得ることとなる。
自社工場の強みは、まさにここにある。外注に委ねず、すべて自社で執り行うことで、クオリティを完璧にコントロールでき、ユーザーからの要求や指摘に即座に対応できるレスポンスの良さを実現できるのだ。
神戸にあるリアルマッコイズのレザー工場では、日々職人たちが革と格闘している。黙々と、真摯に革と向き合う職人たち。全国に直営店を持つリアルマッコイズでは、顧客のニーズを直営店経由で吸い上げ、自社ファクトリーへ持ち帰り、あらゆる手法で製品にフィードバックさせていく。徹底した品質管理を行い、クオリティと生産効率の向上のために、日々努力を続ける彼らの真摯な努力には、脱帽しかない。
この日、神戸のレザーファクトリーでは、A-2を中心に作業を行っていた。そもそもヴィンテージをベースにしたモノ作りというのは、口で言うほど簡単なものではない。同じサイズであってもバラしてみると微妙にズレがあり、個体による仕様違いは当たり前、各部の数値もばらばら。その帳尻を合わせながら、現代に甦らせていく、途方もない作業なのだ。
そんな「面倒くさい」仕事に真摯に向き合えるのは、自社工場だからに他ならない。請負の仕事なら、採算と生産スピードを重視するあまり、手間を掛けられず、クオリティは落ちていく一方になってしまう。リアルマッコイズが、世界で高い支持を得ているのは、そんなインスタントな世の中にあって、高い品質を維持するための努力を惜しまないからに他ならない。
J-100、J-24というライダースジャケットの金字塔を打ち立て、世界中のモーターサイクリストを熱狂させたBUCOを見てみるがいい。アメリカ陸軍航空隊の歴史の中で、5回ものA︲2の納入実績を持つラフウエアも、またしかり。もちろん、我々が生きる現代と時代は違えど、自社ファクトリーで真摯にモノ作りに向き合い、決して手を抜くことなく進化を遂げてきたという意味では、リアルマッコイズとBUCO、ラフウエアは、同じ哲学を有しているといっても過言ではないはずだ。
リアルマッコイズ。熱き職人たちが作り上げる熱きクロージング。そんな“本気の服”に袖を通せる我々は幸せだ。
(出典/「Lightning2022年9月号 Vol.341」)
Photo/H.Yoda 依田裕章
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