リアルバイカーが生み出す至高のモーターサイクル・ジャケット。
モーターサイクルジャケットの最高峰としてバイカーには名高いラングリッツ・レザーズ。17歳の時にバイク事故で右足を失いながらも、数々のレースで優勝、後にハーレーショップでメカニックを務めるなど根っからのバイク好きだったロス・ラングリッツによって1947年に創業した。
革新的なデザインと、小さなカスタム・メイド・ショップゆえの融通の効いた細かい仕事ぶりが話題を呼び、徐々に人気が高まり、’80年代中期以降は国際的なオーダーも急増、’90年代以降は“キング・オブ・レザー”とも評され世界的に高い評価を得ている。
長い歴史を持つラングリッツ・レザーズだけにさぞかしヴィンテージ 市場も活況かと思いきや、「一時期よりは減りましたね」と、話すのはラングリッツ・ジャパン代表の岡本隆則さん。
「ラングリッツに関して僕らがヴィンテージと呼ぶのはホースハイドで造られていた1956年以前の物。それ以降でもヴィンテージと呼ぶこともありますが、基本的には’56 年以前の物をそう呼びます。そうなると本当に数が少ないです。もともと生産数も少ないし、コンディションやサイズなどの条件を考慮するとなおさらです。いい物はコレクターの元に渡っていてここ10年程は市場にはなかなか出てこないという状況ですね」
歴史的秘蔵品の中から5着を特別に紹介!
世界的ブランドとなった現在でも1日6着しか造らないというラングリッツ。それだけに良質なユーズドやヴィンテージは年々品薄の傾向にある。安さ重視でネット経由の購入だと当たり外れもあるだけに質重視なら専門店が吉?
名古屋市にある「ラングリッツ名古屋」ではラングリッツの新作の全ラインナップに加えて、ヴィンテージの販売も行っている。さらに、今回は岡本さんの好意でラングリッツ本社にもない歴史的秘蔵品も蔵出ししてくれた。こうした歴史的なジャケットは手放すことはないが、長年かけて集められたコンディション抜群の’40年代〜’70年代のヴィンテージ 、ユーズドは購入も可能だ。
「当店で購入される場合、オークションなどに比べれば多少割高な部分はありますが、これはヴィンテージカーを買うのと同じだと思います。ヴィンテージポルシェ専門店で1台選ぶのか、普通の中古車店でたまたま安いポルシェが出てきたのを買うのか。価格だけ見ればオークションの方がチャンスはあるかもしれないですが、やっぱり試着したいし年代やサイズ、コンディションも知りたいですよね。その点、僕らは年代やコンディション、オリジナル度も理解しています。勿論その上でリペアも対応します。ただ、基本は自分に合わせて造れる新品です。それを踏まえた上で、バイクの年代に合わせるならヴィンテージという楽しみ方もありますよという感じでオススメしています」
1.コロンビア プロトタイプ|1945~1946年
1945〜1946年に造られたコロンビアのプロトタイプ。世界で最初に造られたコロンビア。ロスの娘・ニッキーが1945年に生まれたのを記念して子供用が造られていて、同じ裏地を使ったレディスモデル(恐らく妻・ピンキー用)、このジャケット(ロス本人用)が存在することから恐らく1945年製と思われる。世界で1着しかないヒストリカルなモデルだ。非売品。
2.デスズ・ヘッド・キャスケード|1945年
ロスが1947年にビジネスをスタートする前の1945年に、友人のために5着だけ造ったモデル。現存するのは恐らく2着というまさに博物館級のヒストリカルモデル。この頃はまだタグも布にスタンプを押していた。フルオリジナルという極上コンディション。これをベースに近年、デスズヘッドキャスケードを復刻した。非売品。
3.コロンビア|1947年
ビジネスをスタートした初年度に制作されたイーストサイドモーターサイクルの別注コロンビア。岡本さんの知る限り現存するのは3枚で、タグやベルト、キーホルダー、ファーなどがフルコンプリートとなるオリジナルはこの1枚のみ。ゴールドのライニングもいい状態で残っている。非売品。
4.パデッド・キャスケード|1948年
創業2年目に造られたパッド付きのキャスケードは岡本さんが知る限り現存するのは世界で2枚。しかももう1枚も岡本さんが所有しているそう。ちなみに同年に造られたパッドなしのキャスケードはラングリッツ本社が所有しているんだそう。非売品。
5.フライトJKT|1949年
G-1スタイルのフライトJKT。基本的にモーターサイクルJKTを手掛けているが創業当初はロス・ラングリッツが一人でほぼテーラーメイドのようにその人に合わせて造っていたので、こうしたモデルもわずかながら存在することを教えてくれる歴史的な1枚。非売品。
実際に購入できる! コンディション良好のおすすめラングリッツ10選。
ヴィンテージモーターサイクルジャケットのなかでもラングリッツは一般的に知られるブランドよりも生産数が少ないうえに、実際に着られるサイズやクオリティとなると、近年は目ぼしい品は市場にほぼ出回らないのが現状。実際に着用可能なヴィンテージとなるとラングリッツ・ジャパン一強という状況。だが、新品と比べて価格が高いかというとそうでもないので意外と狙い目ともいえそう。
1.コロンビア|1948年
ロス・ラングリッツが本格的にビジネスを始めて2年目となる1948年に造られた(当時は「スピードウェイ・トッグス」というブランド名)コロンビア。フロントジッパーは交換済みだが、極上のコンディション。サイズは38だが少し小さめ。ホースハイド製。新品でホースハイドのコロンビアを造ると48万9500円だから、歴史的価値を考えると63万8000円という価格も決して高くない。
2.コロンビア|1953~1954年
「グリーンタグ」といわれるコロンビア。細かなディテールから’53~’54年製ということがわかる。こちらはジッパーまでフルオリジナル。袖のダブルステッチやバックヨークなど珍しいディテールが愛好家向け。41万8000円
3.キャスケード|1950~1953年
コロンビアに続いて歴史あるキャスケード。こちらも「グリーンタグ」。現行品と比べてポケットの角度などが異なるが、シンプルな造り、コサック・カラーなど、約70年前とは思えない完成されたデザインはさすが。41万8000円
4.キャスケード|1955~1956年
「グリーンタグ」のキャスケード。このジャケットは1956年製と思われる。フルオリジナルのミントコンディション。使用する革の質に若干差があるのか、シボの入り方が異なるがこれもまた味のうち。41万8000円
5.キャスケード|1956年
「グリーンタグ」の最終年となる1956年製のキャスケード。フロントジッパーがスプリングジッパーからスプリングでないクラウンジッパーに変わる。ライニングまでオリジナル状態を保つ美品。27万5000円
6.ワンオフ|1950年代後半
ワンオフで造れたミリタリーとモーターサイクルJKTの中間のようなデザイン。1957年からタグが白に変更されたことと、裏地にネイビーカラーが用いられたのは’57年が多いことから恐らく’57年製と推測される。30万8000円
7.ワンオフ|1950年代後半
1956年以降ホースハイドではなくカウハイドが主流になった。こちらはそのカウハウイドを使ったワンオフモデル。ファーは取り外し可能。特に大きなダメージもリペアもない美品。シンプルでクラシカルなデザイン。24万2000円
8.コロンビア|1960年代
カウハイド製のコロンビア。’60年代には西海岸界隈では有名ブランドとしての地位を築いたラングリッツだが、生産数はわずか1日6着程度。その数を考えると、ダメージも少なく美品で残っているだけでもレアだ。19万8000円
9.キャスケード|1960年代
1960年代に造られたカウハイド製のキャスケード。最初から裏地が付けられてないのはレア。裏地がない分薄手なので、シャツジャケットのように夏でも軽く着られるし冬はインナージャケットのようにも使える。20万6800円
10.ワンオフ|1970年代
1970年代はバイクレースの黄金期、この頃は派手な色使いのレーシングスーツのオーダー品も多数存在する。いい具合の経年変化がありながらダメージも少ない美品。価格も手頃だからセカンドJKTとしていかが? 21万7800円
【DATA】
ラングリッツ名古屋
名古屋市千種区3-35-8
TEL 053-734-6912
営業/11:00〜20:00
休み/水曜(祝日を除く)
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「Ligthning 2021年8月号Vol.328」)
Text/M.Terano 寺野正樹 Photo/M.Kato 加藤政憲 取材協力/ ラングリッツ・ジャパン TEL052-734-6918 http://langlitzjapan.com/
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