寺門ジモン
お笑いトリオ「ダチョウ倶楽部」のメンバー。芸能界きっての食通で、『ジモンの肉本』『これを食わずに死ねるか!!』(小社刊)など著書多数。2012年からは松阪市ブランド大使としても活動中。
松島親方
月刊ライトニング編集長。編集部、いや弊社一食べることが大好き。「カロリーを気にして美味いハンバーガーが食えるか!」が口癖。体型を気にするも、好きなものを好きなだけ食べるのが親方流。
「肉のジモン」っていう肩書きが映画への扉だった。
親方:ジモンさん、映画を撮ったらしいじゃないですか!
ジモン:そうなの! 松竹さんで映画を撮らせていただきまして、『フード・ラック!食運』という焼肉映画なんですけど。撮っちゃったんですよ。
親方:(映画のチラシを見て)ロードショーって書いてある。ホントにやるんですねー。ジモンさん、いや監督!
ジモン:ギャハハハ! 何言ってるんですか。せっかく松島さんと映画の話ができるから、映画にも出てくる「肉焼屋D‐29 表参道店」で肉を食べながら話そうかなって。(店員さんに)すみませーん!
──店員さんがいくつもの大きな塊肉を載せたトレイを持ってくる(写真)。
親方:ちょちょちょちょっ! 何コレ? これ普通の人は食べられないヤツじゃないですか?
ジモン:誰でもこの肉食べてますよ、この店では。これが当たり前なんですよ。サーロインにタンに……。でも今日は特別メニューです。(店員さんに)今日はせっかくだから、ヒレをチギリ食いにして、タンは厚切りと薄切りで。薄切りはネギタンでお願いします。
親方:切り方までオーダーするわけですね。
ジモン:ボクはね(笑)。それより映画ですよ、映画。実はボク、芸能人になるきっかけになったのが映画なんですよ。
親方:えー、またぁー。
ジモン:ホント、ホント。映画が好きで、映画の世界への入口がわからなかったから劇団とか入って。俳優になれば映画とか関われるかなと思ったんだけど、売れないから俳優にもなれず。そのとき上島くん(ダチョウ倶楽部)とかに出会ってお笑い芸人になったんだけど、映画の夢は捨てられなかった。映画をやりたいという扉を開けようと思っても簡単には開かない。だから、お笑いとか食とか全然関係ない扉を開け続けていたら、急に映画の扉が開いたの。ライトニングで食の連載をやったり、本を何冊も出したり。「肉のジモン」の名を付けてくれた松島さんのおかげでもあるんだよね。
親方:いやいや、信念を貫き通した結果でしょ。でも、映画にお肉をくっつけちゃうところがジモンさんらしいよね。
ジモン:ちなみに今回、監督だけじゃなくて、原作もやっちゃったの。松竹の方がボクの本を買ってくれたんですよ。その本に掲載されていたお店に食べに行ってくれていたみたいでね。「ジモンさんがずっと通い続けているから、お店の方との信頼関係ができている。本当に美味しいと思ったお店だけを出しているんですね。そんなに食べ物に詳しいのであれば、松竹で仕事しませんか」って言ってくれたんですよ。
親方:それでいきなり映画を撮るって話にはならないですよね?
ジモン:うん。最初、「肉のドキュメンタリーを撮りませんか」って言われて。世界中の肉を食べまわるみたいなヤツ。でも、そのとき若輩者なのに断ったんですよ。
親方:おお! なんで!?
ジモン:だってボク、すでにアメリカとかヨーロッパに行って現地の牛を調べたり食べたりしてるから。松竹さんだったらもっとストーリーのある方が、映画を撮ったことになるんだけどなって。
親方:ええ! ストーリーのある映画って(苦笑)
ジモン:そしたら真顔で「話を書いてみますか?」って。どういうこと? って聞いたら、「原作が書けたらストーリーものやりましょう」って。そこからなんと6年!
親方:大作じゃないですか。しかも出演されている方々も蒼々たる顔ぶれですよ。
ジモン:EXILE NAOTOくんや土屋太鳳ちゃんのダブル主演だしね。今回竜雷太さんにも出演してもらっているんだけど、実は子どもの頃に観たテレビで竜雷太さんがカレーを食べるシーンがあって、生卵をパンパンって割って食べているのがすごくウマそうで。美味しいものを食べ歩くきっかけを作ってくれた人だったの。それでオファーしたんです。
親方:へぇー、でも他の出演者を見ても、これだけの人たちを集めるのって大変だったんじゃないですか?
ジモン:予算ないし、初監督っていう壁があるから、通常だったらこれだけの人たちには出てもらえないですよ。じゃあ、どうしようって思ったときに、食べ物で攻めようって。“美味しいモノ”ってキーワードになると、みんなたがが外れるですよ。NAOTOくんは、食べログのアワードで会ったことがあったんです。で、食べること好きなの? ボク映画撮るんだけど出てくれる? って聞いたら「当たり前ですよ」って。
親方:NAOTOさんは食べることが好きなんだ?
ジモン:そう。太鳳ちゃんもお肉とか大好きで、ボクが映画撮るときは出てくれる? って聞いたら、「もちろんです」って。
親方:みんな、まさか本当に映画を撮るなんて信じてなかったんでしょ?(笑)
ジモン:あははは! そうだよね。でも実際撮ることになっちゃったから、もう断れないよね。大泉くん(大泉洋さん)だって、「ジモンさんと一緒に美味しいモノが食べたいなぁ」って言って出てくれたんですよ。じゃなきゃ、出てくれないよぉ。
──店員さんがカットした肉を持って登場。
ジモン:あー、来た来た! ボクがいつも食べてるヒレのチギリ食い。これは松島さんに食べてもらいたいんだよね。
親方:(トングを持って)一応確認ですが、オレこれ必要ですか?
ジモン:いらないです。あ、でも焼いてもいいですよ。
親方:じゃあ、後で1回だけ遊びで焼いてみます。
──ジュゥゥー(肉の焼ける音)
親方:あぁ、いい音。(この先、親方が発するのはほぼため息と叫びです。お察しください)
ジモン:ヒレは回し焼きしないとくっついちゃうんです。
親方:うわぁぁぁ……
ジモン:テンション上がる!
親方:うわうわうわ! あー、うまそー! 回し焼きって名付けたのって、もちろんジモンさんですよね?
ジモン:そう。編み目を付けないようにグルグル回しながら全体に火が通るように焼いてるんです。
親方:そういうことねー! ちょちょちょ、ウマそうぉ。
──ジモンさんが焼けた肉を小皿に載せて。
ジモン:すぐには食べずに、箸でこうやってちぎってブレンド塩を付けて食べる。大人の食べ方ですよ。焼いてても繊維がほどけるみたいなんだよね。(ひと口食べて)うわ〜、何コレ!
親方:んぅぅぅ……、あぁぁ……んあい(ウマい)。
ボクの食の思い出がこの映画に詰まっているんです。
ジモン:昔、北京っていう焼肉屋さんがあったんですよ。そこの女将さんがチャキチャキしていて、大将は強面でコワそうな人で。でもこの焼肉屋さん、なくなっちゃったんですよ。映画の中で川崎苑というお店出てくるんですけど、当時の雰囲気とか再現してるんです。これから出てくるミノも女将さんの料理のオマージュです。
親方:ジモンさんのリアルな体験とかが、詰まっているんですね。
ジモン:もうね、この映画に思い出がいっぱい詰まっている。ある料理屋さんの大将がね、ボクの食べ物の師匠でもあるんだけど、ご本人が、「映画を撮るんだったら協力してあげるよ」って言ってくれて。それでこの映画でもいろいろと協力してもらったんです。でも亡くなっちゃって。ボク的には本当に感謝してるんですよ。いま映画を見返してみても、感慨深いですよね。
親方:なるほど。ジモンさんのこれまでの食人生が随所に詰め込まれているんですね。
ジモン:実は、そうなんですよ。世間的にはコレ、肉バカ映画だと思われているけど、ホントは人情映画なんです。是非とも家族で観に行ってください。
親方:テレビの情報番組で観ましたけど、焼き方とかやかましいことを言っていたみたいですね。
ジモン:へへへっ! 普通監督だったら演技とかにカットっていうでしょ。ボクの場合は、肉の演技に対してですから(笑)。
──次は、タンのスペシャルメニューが登場。ジモンさんがひたすら肉を焼く。
親方:撮影のときもジモンさんが焼くお手本を見せるんですか?
ジモン:まぁ、そうね。役者さんとボクの焼き方が違いすぎるから、ばれちゃうんだよね。(焼けたタンを口に投入して)うーん、噛めば噛むほど旨みが出てくるぅ。
親方:いまね、オレね、涙腺が緩み始めてます。泣きそう……。
ジモン:えええ? なんで?
親方:なんか感慨深くて……。よかったなぁって。あぁ、肉がウマすぎるよ。うううぅ。
ジモン:そっち? てっきりボクとの長い関係性に感動してくれてるのかと思った。
親方:ううん、ウマい肉が食べられていることに感動。
ジモン:(苦笑しながら)これが“食運”ですよ。美味しいものを愛し続けていると、いい食材が自然と集まってくるわけです。
親方:ジモンさん、これからもついていきます!
──この後もネギタン、ミノ、ハラミ、レバー、リブマキ、シンシン……と次から次へとお肉を食べ続ける2人。肉対談はまだまだ終わらない。
史上初のイーターテインメント『フード・ラック!食運』
主人公・良人は母が作る手料理を食べることが何よりも至福のときだった。ある日、母が切り盛りしている人気焼肉店「根岸苑」が、人気グルメ評論家によって事実無根の記事を書かれ、客足は激減。店を閉めることに。あるときグルメサイトの立ち上げを任されることになった良人は、取材で訪れた先々で「根岸苑」の味と出会い、食と人との繋がりの中で良人の中で変化が起きていく──。画面からは漂うはずのない香ばしい肉の香りが漂い、口の中では極上肉の旨みが広がる。焼肉店を予約してからご鑑賞ください。
全国ロードショー
©2020 松竹 配給:松竹
原作・監督:寺門ジモン 原作協力:高橋れい子
脚本:本山久美子 出演:EXILE NAOTO 土屋太鳳
石黒賢 松尾諭 りょう
映画にも登場する「肉焼屋 D-29」で極上肉をいただこう!
全国の肉ファンに絶大な人気を誇る「東京食肉市場直送肉焼屋 D-29 表参道店」では、滋賀県・澤井牧場の近江姫和牛をはじめ、全国の黒毛和牛メス牛の29の部位を用意している焼肉店。初心者から上級者向けまでのコースが用意されており、霜降り、赤身ステーキや赤、白ホルモンなど、コースによってその日おすすめのお肉を提案。美味しい肉の焼き方も学べる一石二鳥のお店。おしゃれな内装で家族や友だち同士はもちろん、デートにもおすすめ!
【DATA】
東京食肉市場直送 肉焼屋 D-29 表参道店
東京都港区南青山5-8-5 Gビル南青山02 B1F
TEL050-5594-8837
営業/12:00〜22:00
休み/日曜
http://www.instagram.com/d_29official_omotesando/
(出典/「Lightning 2020年12月号 Vol.320」)
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