天神ワークスの「レザー製ミリタリー」はいかが?

  • 2022.10.10

良質な革に定評のある日本屈指のタンナー、栃木レザーをマテリアルに、ミリタリー、スポーツなど、革服と紐付かないヴィンテージアーカイブから、まるで布帛を扱うような作品を手掛け、レザーウエアの可能性を新たに見出してきたTENJIN WORKS。気になる最新コレクションを紹介。

「TENJIN WORKS」CEO・髙木英登さん

ウォレットを筆頭に革小物の製作、レザーウエアの企画、デザインまで幅広くこなす。ヴィンテージウエアへの知識も深く、常に革との融合を模索中。

ヴィンテージ好きもレザー好きも満足する、レザー製の軍モノ。

革で、革以外のモノを再現する。これがどれほど難しい行為か。

そもそも、レザーという素材は布帛と違って粘りがあり、手強い。張りがあるためにドレープもしない。レザーとは、「経年変化が楽しめる」「一生モノ」などともてはやされてはいるが、実はとんでもなく扱いにくい素材なのだ。

この〝扱いにくい〞素材に、勇猛果敢に挑み続けるブランドがある。天神ワークス。名タンナー「栃木レザー」とタッグを組み、革の可能性を絶えず探求し続ける、日本を代表するレザーブランドだ。

そんな天神ワークスが今回新たに取り組むジャンルが「ミリタリー」だという。「え? 天神ワークスがA-2を作るの?」と思った方も多いかもしれない。それはそれで興味深いが、そうではない。天神ワークスが挑戦するミリタリー、それは昨今ストリートで人気のM-65パーカ、そして防寒性の高いA-2デッキ。このコットン製の2種の名モデルを、今回天神ワークスはレザーで再現したのだ。

モチーフとなったヴィンテージのミリタリージャケット2種。どちらも定番アウターで、左はU.S.ARMYのフィッシュテールジャケット。右はU.S.NAVYのデッキジャケット

そもそもこの挑戦が実現した背景には、天神ワークスが栃木レザーと開発した「オイルドキップ」の存在がある。おさらいではあるが、キップレザーとは、生後6カ月〜2年以内の仔牛の革。そのため柔らかくてキメが細かく、肌触りもいい。そのキップレザーに油脂分を多く含ませたオリジナルレザーが「オイルドキップ」だ。しっとりとした触感、しなやかな質感……ホースハイドやステアハイドに慣れたレザーラバーは、その感覚にびっくりするかもしれない。そのオイルドキップを0.7㎜厚に漉いて、今回のミリタリーアイテムに使用したのだ。

「ヴィンテージのA-2デッキ、M-65パーカの魅力とは、その〝クタリ感〞にあります。この雰囲気をレザーで再現するには、薄く漉いたオイルドキップが最適なんです。もちろん、ディテールはすべて踏襲しています。ヴィンテージ好きの方も、レザー好きの方も、必ず満足してもらえると思いますよ」

そう自信をうかがわせる天神ワークス代表・髙木氏。革の可能性を探求し続ける天神ワークスが作り上げる、レザー製の軍モノ。これはもう、楽しみでしかない。

新作を手掛けるにあたり、サンプルとなるヴィンテージの現物を調達するのはもちろん、ウエア製作のパターンとなるラフは、すべて髙木氏が手描きによるもの
革の厚みに合わせたキャンバス生地を使用したサンプル。ポケットの配置指示や縫製箇所など、本番のレザーを縫製する前に念入りにディテールをチェックする
ミルスペックに合格したミリタリーウエアは、髙木氏にとってウエアのディテールを研究するのに充分な参考資料。ミリタリーに限らず、ワーク、スポーツなど、ジャンルを問わず手に取るという
紹介するレザージャケット2種はどちらも独自に仕上げたオイルドキップレザーを採用。別途費用は必要だがカラーオーダーも可能

C’man fishtail coat FJ02 ¥253,000_

デザインソースとなったのは、ミリタリーコートの定番として愛されているU.S.ARMYのフィッシュテールコート。1970年代前後の個体をベースにしており、シェルはオイルドキップレザー。防寒性に優れた独自のドレープ感を楽しめる1着に仕上がっている。

フロントに装備されたフラップポケット。裏地にはライニング同様コットンサテンを採用しており、滑らかな肌触りと擦れへの強度も計算されている。表裏共に天然素材ならではの風合いを楽しめる
強度の限界まで薄く漉いたシェルの厚みはなんと0.6㎜。レザ ーウエアとは思えない厚みだからこそ、布帛のようなカフス部分の表情を作り出すことができた。サイズ調節のためのフラップも付けられる
フィッシュテールの語源となった裾。ドローコードもレザー製
コートの中央同周り内側にはシルエットに変化を持たせるためのドローコードが仕込まれている。サイズ調節やオーバーコートならではのドレープ感を楽しむためにニュアンスをつけてコーディネイトをするのも良いだろう

C’man crew jacket FJ01 ¥187,000

1960年代のU.S.NAVYのデッキジャケットをモチーフにきめ細かくソフトな風合いのキップレザーを使用したジャケット。ライニングに装着するアクリルボアとの相性も熟慮し、シェルの厚みは、わずか0.8㎜。防風性に長けた密度の高い革に保温性をプラス。

フロント胸部分にはフラップポケットを配し、両脇のポケットと合わせて3つ。デイリーウエアとして機能的で使いやすいデザインに仕上がっている。またフロントボタンもミリタリーベースのデザインを意識したボタンを採用
両袖内部には内リブを装備。2段の編み地でフィット感と防寒性に優れたディテールとなっている
襟を立ててもほどよいサイズで小降りのチンストラップもアクセ ントとなっている。また襟裏にはジグザグステッチが仕込まれており、細かなディテールも抜け目がなくデザイン性にも妥協はない
ライニングに装備されたアクリルボアは強度を保たせるため、擦れに強いレーヨン混を採用。保温性が高いだけでなく、耐久性も考慮した作りとなっている

【DATA】
TENJIN WORKS
Tel.03-3870-8658
http://www.tenjinworks.com

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「CLUTCH2022年10月号 Vol.87」)

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