天神ワークスの「レザー製ミリタリー」はいかが?

良質な革に定評のある日本屈指のタンナー、栃木レザーをマテリアルに、ミリタリー、スポーツなど、革服と紐付かないヴィンテージアーカイブから、まるで布帛を扱うような作品を手掛け、レザーウエアの可能性を新たに見出してきたTENJIN WORKS。気になる最新コレクションを紹介。

「TENJIN WORKS」CEO・髙木英登さん

ウォレットを筆頭に革小物の製作、レザーウエアの企画、デザインまで幅広くこなす。ヴィンテージウエアへの知識も深く、常に革との融合を模索中。

ヴィンテージ好きもレザー好きも満足する、レザー製の軍モノ。

革で、革以外のモノを再現する。これがどれほど難しい行為か。

そもそも、レザーという素材は布帛と違って粘りがあり、手強い。張りがあるためにドレープもしない。レザーとは、「経年変化が楽しめる」「一生モノ」などともてはやされてはいるが、実はとんでもなく扱いにくい素材なのだ。

この〝扱いにくい〞素材に、勇猛果敢に挑み続けるブランドがある。天神ワークス。名タンナー「栃木レザー」とタッグを組み、革の可能性を絶えず探求し続ける、日本を代表するレザーブランドだ。

そんな天神ワークスが今回新たに取り組むジャンルが「ミリタリー」だという。「え? 天神ワークスがA-2を作るの?」と思った方も多いかもしれない。それはそれで興味深いが、そうではない。天神ワークスが挑戦するミリタリー、それは昨今ストリートで人気のM-65パーカ、そして防寒性の高いA-2デッキ。このコットン製の2種の名モデルを、今回天神ワークスはレザーで再現したのだ。

モチーフとなったヴィンテージのミリタリージャケット2種。どちらも定番アウターで、左はU.S.ARMYのフィッシュテールジャケット。右はU.S.NAVYのデッキジャケット

そもそもこの挑戦が実現した背景には、天神ワークスが栃木レザーと開発した「オイルドキップ」の存在がある。おさらいではあるが、キップレザーとは、生後6カ月〜2年以内の仔牛の革。そのため柔らかくてキメが細かく、肌触りもいい。そのキップレザーに油脂分を多く含ませたオリジナルレザーが「オイルドキップ」だ。しっとりとした触感、しなやかな質感……ホースハイドやステアハイドに慣れたレザーラバーは、その感覚にびっくりするかもしれない。そのオイルドキップを0.7㎜厚に漉いて、今回のミリタリーアイテムに使用したのだ。

「ヴィンテージのA-2デッキ、M-65パーカの魅力とは、その〝クタリ感〞にあります。この雰囲気をレザーで再現するには、薄く漉いたオイルドキップが最適なんです。もちろん、ディテールはすべて踏襲しています。ヴィンテージ好きの方も、レザー好きの方も、必ず満足してもらえると思いますよ」

そう自信をうかがわせる天神ワークス代表・髙木氏。革の可能性を探求し続ける天神ワークスが作り上げる、レザー製の軍モノ。これはもう、楽しみでしかない。

新作を手掛けるにあたり、サンプルとなるヴィンテージの現物を調達するのはもちろん、ウエア製作のパターンとなるラフは、すべて髙木氏が手描きによるもの
革の厚みに合わせたキャンバス生地を使用したサンプル。ポケットの配置指示や縫製箇所など、本番のレザーを縫製する前に念入りにディテールをチェックする
ミルスペックに合格したミリタリーウエアは、髙木氏にとってウエアのディテールを研究するのに充分な参考資料。ミリタリーに限らず、ワーク、スポーツなど、ジャンルを問わず手に取るという
紹介するレザージャケット2種はどちらも独自に仕上げたオイルドキップレザーを採用。別途費用は必要だがカラーオーダーも可能

C’man fishtail coat FJ02 ¥253,000_

デザインソースとなったのは、ミリタリーコートの定番として愛されているU.S.ARMYのフィッシュテールコート。1970年代前後の個体をベースにしており、シェルはオイルドキップレザー。防寒性に優れた独自のドレープ感を楽しめる1着に仕上がっている。

フロントに装備されたフラップポケット。裏地にはライニング同様コットンサテンを採用しており、滑らかな肌触りと擦れへの強度も計算されている。表裏共に天然素材ならではの風合いを楽しめる
強度の限界まで薄く漉いたシェルの厚みはなんと0.6㎜。レザ ーウエアとは思えない厚みだからこそ、布帛のようなカフス部分の表情を作り出すことができた。サイズ調節のためのフラップも付けられる
フィッシュテールの語源となった裾。ドローコードもレザー製
コートの中央同周り内側にはシルエットに変化を持たせるためのドローコードが仕込まれている。サイズ調節やオーバーコートならではのドレープ感を楽しむためにニュアンスをつけてコーディネイトをするのも良いだろう

C’man crew jacket FJ01 ¥187,000

1960年代のU.S.NAVYのデッキジャケットをモチーフにきめ細かくソフトな風合いのキップレザーを使用したジャケット。ライニングに装着するアクリルボアとの相性も熟慮し、シェルの厚みは、わずか0.8㎜。防風性に長けた密度の高い革に保温性をプラス。

フロント胸部分にはフラップポケットを配し、両脇のポケットと合わせて3つ。デイリーウエアとして機能的で使いやすいデザインに仕上がっている。またフロントボタンもミリタリーベースのデザインを意識したボタンを採用
両袖内部には内リブを装備。2段の編み地でフィット感と防寒性に優れたディテールとなっている
襟を立ててもほどよいサイズで小降りのチンストラップもアクセ ントとなっている。また襟裏にはジグザグステッチが仕込まれており、細かなディテールも抜け目がなくデザイン性にも妥協はない
ライニングに装備されたアクリルボアは強度を保たせるため、擦れに強いレーヨン混を採用。保温性が高いだけでなく、耐久性も考慮した作りとなっている

【DATA】
TENJIN WORKS
Tel.03-3870-8658
http://www.tenjinworks.com

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「CLUTCH2022年10月号 Vol.87」)

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
この記事を書いた人

CLUTCH Magazine 編集部

世界基準のカルチャーマガジン

日本と世界の架け橋として、国外での販路ももつスタイルカルチャーマガジン。本当に価値のあるモノ、海外記事を世界中から集めた、世界基準の魅力的コンテンツをお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

Pick Up おすすめ記事

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...