日本古来の天然染色に着目した、「ビームス フェニカ」発のオリジナルウエア。

2003年にスタートしたビームスで展開するレーベル「フェニカ」が、20周年の節目にキャリア初となるオリジナルウエアをローンチ。南方奄美で育まれたプリミティブな染色技法を纏った謹製ウエアをはじめ、新作コレクションにフォーカスする。

奄美伝統の「泥染め」による奥行きのある黒褐色。

ワークジャケット3万9600円/フェニカ、 ベスト1万7600円/チャムラ×フェニカ、 ノーカラーシャツ1 万9800 円/ツタエ、 パンツ3万5200円/ランデヴー オー グロ ーブ(すべてビームス ジャパンTEL03- 5368-7300)

絶妙なショート丈のバランスが特徴である往年のフレンチワークジャケットをベースに、まるでモールスキンのような、泥染め特有の“墨黒” 色でヴィンテージの風合いを表現。生地はハリとコシのある高密度ヘリンボーンツイルで春の装いに軽快感をプラスする。

民族衣装をモダンに変えるテーチ木染めの風合い。

チャイナシャツ3 万4650 円/フェニカ、シャツ2 万2000 円/セット、スカート4万9500 円/エタブルオブメニーオーダーズ×フェニカ、ストローベレー9900円/ケーブルアミ、ブレスレット2 万5300 円/マリアルドマン(すべてビームス ジャパンTEL03-5368-7300)

麻袋のような、あえて粗めに織ったリネンと独自のムラ感が印象的な奄美古来のテーチ木染めで程よいリラックス感を持たせたチャイナジャケット。ベースは中国南部の山間部にて伝統工芸を生業とするミャオ族由来という、同レーベルならではのモダンエキゾチック。

フレンチとも相性のいい日本の天然染色。

【MAN】バスクシャツ1 万6500 円/フェニカ、パンツ3 万6300 円/ユニバーサルワークス、ストローハット1 万7600 円/ケーブルアミ×フェニカ(すべてビームスジャパン TEL03-5368-7300) 【WOMAN】ワークジャケット3万9600円/フェニカ、ワンピース4 万8400 円/エタブルオブメニーオーダーズ×フェニカ、ネックレス5 万2800 円/マリアルドマン(すべてビームス ジャパン TEL03-5368-7300)

コレクションのメインアイテムに位置するのが、フランス発祥のデイリーウエアたち。アメリカとはひと味違うヨーロッパならではの品を感じるワークジャケットやバスクシャツだからこそ、一点一点手染めで仕上げる天然染色の温もりや経年の妙味がより一層映える。

定番のベースボールキャップも。

キャップ1 万1000 円/フェニカ、バスクシャツ1 万6500 円/フェニカ、ネックレス5 万2800 円/マリアルドマン、スカート4 万9500 円/エタブルオブメニーオーダーズ×フェニカ(すべてビームス ジャパンTEL03-5368-7300)
キャップ1万1000円/フェニカ、BDシャツ2万8600円/ギットマン ヴィンテージ、マグカップ3630円/出西窯(すべてビームス ジャパンTEL03-5368-7300)

泥染め仕様のブラック、手染めインディゴの2色展開。1970〜80年代にかけてUSネイビーにて採用されていたユーティリティキャップをイメージソースに、オーバーダイしたヴィンテージピースを思わせるこなれた風合いを見事に表現している。

シンプルなアメカジスタイルにも、程よく主張を加えるチャイナジャケット。

チャイナシャツ3万4650円/フェニカ、Tシャツ6600円/ツタエ、ベルト2万4200円/モニタリー、パンツ3 万5200 円/トキホ、ブレスレット6 万1600 円/マリアルドマン、シューズ3 万8500 円/テップ×フェニカ( すべてビームス ジャパンTEL03-5368-7300)

洗いざらしのTシャツにコットンチノパンツといった定番スタイルにも、テーチ木染めの風合いを活かしたチャイナジャケットを主役にすることで雰囲気十分な夏の装いに。程よいエキゾチックムードと手染めならではのクラフト感をオーバーサイズで取り入れた。

「ほっこり」しすぎず、「かしこまらず」。これがフェニカのスタイルです。

【MAN】バスクシャツ1 万6500 円/フェニカ、パンツ3 万6300 円/ユニバーサルワークス、スト ローハット1 万7600 円/ケーブ ルアミ×フェニカ、レザーバッグ 1 万1000 円/ネイティバース、 シューズ3万3000円/レンド(す べてビームス ジャパン TEL03- 5368-7300) 【WOMAN】ワー クジャケット3 万9600 円/フェ ニカ、ワンピース4 万8400 円/ エタブルオブメニーオーダーズ× フェニカ、ネックレス5 万2800 円/マリアルドマン、カゴバッグ 2 万7500 円/月桃あんつく、サ ンダル1 万5400 円/ビルケンシ ュトック(すべてビームス ジャ パンTEL03-5368-7300)

設立から20 周年を迎えたフェニカの最たる魅力は、伝統工芸やハンドクラフトを取り入れながらも常にモダンであり続けていること。未来に継ぐべきもの、ことを時代のニーズに沿ったかたちでさりげなく表現し続ける、それがフェニカのスタイルと心得よ。

「ビームス フェニカ」ディレクターに訊く、天然の色彩を活かす奄美大島の伝統染色「泥染め」の魅力。

「ビームス フェニカ」ディレクター・菊地優里さん|入社以降、フェニカひと筋にして昨年よりディレクターに就任。衣類から雑貨まで作り手と密なコミュニケーションを図る方法で多くのオリジナル商品を企画

奈良時代より受け継がれる奄美伝統の染色技法「泥染め」。その歴史や背景、日常着との親和性をディレクターに訊く。

世界三大織物にも名を連ねる大島紬由来の染色技法。

奄美の特定の地域に見られる泥は、粒子が極めて細かく鉄分が多いことでも知られ、テーチ木のタンニンと鉄分が結合することで褐色が次第に黒褐色へと変色していくという

鹿児島市と沖縄本島のほぼ中間に位置する奄美大島は、奈良時代より養蚕業で栄え、上質な絹織物とともに独自の染色技法が根付いたとされている。それらはやがて大島紬なる言わばブランド織物として幕府にも献上され、明治以降には海外へもその名を轟かせた。泥染めは、そんな大島紬に紐づく伝統技法のひとつであり、今なおこの島でしか再現することのできない希少性と他にはない特殊な魅力を持っているという。

「ディレクターに就任するにあたって、それまでおぼろげには知っていたものの、細かなところまで深堀りしていなかったものやことを再確認しなければと考えました。泥染めもそのひとつで、かねてからお付き合いのあった〈アマンユ〉というブランドに現地の染色工房を紹介していただき、今回の企画へとつなげることができたのです。一説によれば、泥染めは偶然の産物だったとも言われています。

当初は普段使いだった大島紬が、江戸時代に庶民の着用を禁じられ、それでもどうにか手元に残していきたいと考えた一部の島民が泥田の中に隠したことに由来していると。ただ一方では、およそ1300年前にはすでに泥染め技法が確立されていたという文献もあるようですし、詳細な起源は今もわかっていません。とはいえ、本格的な大島紬となると私たち世代にとってはハードルが高く、やすやすと手を出せる価格帯でもありません。でも、今回の企画を通して天然染色ならではの素朴な風合いや奄美の伝統文化に興味を持ってもらえればと考えています」

テーチ木の煮汁によって褐色に染め上げた生地や衣類を裏山の泥田へ運び、田底に沈殿した泥を手足で攪拌しながら生地をくぐらせる。この工程を幾度も繰り返すことで泥染め特有の光沢ある黒を生み出す

奄美に群生する車輪梅とも呼ばれる「テーチ木」をチップ状に加工し、大釜で煮出した褐色の天然染料こそが泥染めの起点となっている。そんなテーチ木の煎汁液に含まれるタンニンと、火山島ならではの地場の泥に含まれる高濃度な鉄分が化学反応を起こし、特殊な黒褐色が生み出される。つまり、一旦テーチ木染めで仕上げた生地をあえて泥でオーバーダイすることで、墨黒のようにスモーキーでありながら、程よい光沢を湛えた素朴で奥行きある黒色へと変化させている。そのあまりに非効率な工程は単なる染色の域をはるかに超えていたと菊地さんは続ける。

納得のいく黒褐色まで染め上げるには途方もなく染色工程を繰り返す必要があり、手染めによる大量生産はどうしても難しいという

「実際に工房を訪ね、すべての工程を見せていただいたのですが、私たちが思っていた以上にプリミティブで、どこか神秘的な印象さえ受けました。さらに驚いたのは、衣類が染め上がるまで、同じ染色工程を何度も繰り返していたことです。それもすべて手作業で納得のいく染め上がりを目指していました。それほどまでの重労働と私たちの着物離れもあって、数百年にわたって地場を支えた伝統技法も今では数件のみに引き継がれていると聞いています」

フェニカのレーベルフィロソフィーでもある「デザインとクラフトの橋渡し」は、今回の泥染め企画にも明確に表れていた。古く歴史あるものをそのままのかたちでピックするのではなく、あくまで時代に沿ったカジュアルウエアとして提案することで、構えることなく伝統や手仕事に触れることができる。そのようなきっかけになることを、フェニカは願っている。

泥染め(黒褐色)、テーチ木染め(褐色)、インディゴ染め、すべてを奄美大島の工房、肥後染色に依頼。今季展開する4型は昔ながらの手染めの魅力を最も引き出せる定番アイテムで揃えた。

(上から)ミリタリーキャップは泥染めとインディゴの2色展開。1 万1000 円、ヘリンボーンツイルのフレンチワークジャケットも同じく2 色展開。3 万9600 円、半袖チャイナジャケットはテーチ木染めのみ。3 万4650 円、バスクシャツはテーチ木染めとインディゴの2色展開。1万6500円

【問い合わせ】
ビームス ジャパン
TEL03-5368-7300
www.beams.co.jp/fennica/

(出典/「2nd 2023年6月号 Vol.195」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

Pick Up おすすめ記事

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...