産地か、製法か。究極の選択を迫られた老舗眼鏡ブランド「サヴィル ロウ」の決断。

ここ数カ月のあいだに、「伝説」と称されていたアイウエアブランドが相次いで復活。3年の沈黙を破り生産を再開した「サヴィルロウ」は創業90年以上の老舗名門。生産拠点を英国からイタリアに移したものの、お家芸であるロールドゴールド製法は健在どころか質が格段に上がったという。

英国から離れたことで洗練された匠の眼鏡。

サヴィルロウが3年の沈黙を破り生産を再開。しかし、なんと生産拠点を英国からイタリアへ移行したという。そもそもブランド名であるサヴィルロウとはロンドン中心部のメイフェアにある通りの名前を由来とし、ブランドを手がける老舗工房アルガ ワークスも英国内に所在するなど、英国をアイデンティティとするブランドのように思える。

だがこの移転はまったくもってネガティブなものではない。なぜならば、そうすることでサヴィルロウのお家芸であるロールドゴールド製法(以下、RG)の質が格段に上がるからだ。

RGは英国が隆盛を極めた絢爛豪華なビクトリア王朝時代に流行した技法。その後やってくる世界恐慌の最中、民衆は安価でも煌びやかなものを求め、時計やペンなどあらゆるものに金を巻くRGが定着した。そしてこの製法はイタリアのゴールドフィールド製法(以下、GF)の下位互換であった。

GFRGに比べ、金の使用量が多く均等さも保つという特徴がある。つまり生産拠点をイタリアに移すことはすなわち、RGのクオリティをGFのそれにまで高めることが目的なのだ。

サヴィルロウのアイデンティティは英国製に在らず。ロールドゴールド製法こそがサヴィルロウの象徴であり、創業90年以上の老舗はその伝統を守り、そして洗練させるべく、大きな決断を下したのだ。

【ポイント90年以上続くロールドゴールド製法。

ヴィクトリア王朝時代の置き土産といえるロールドゴールド製法が、サヴィルロウを作る老舗工房アルガ ワークスの伝統的技法。金を圧着する金張に近いが厳密には少々異なる。

まず合金などのベースメタル(母材)の周りに金を溶着。そうすることで母材と金が真空化され剥離を防ぐ。また今回のブランド再始動に伴い、ゴールドフィールド製法が主流だったイタリアへ生産拠点を移行。ロールドゴールド製法を刷新することで更なる品質の向上を図る。

【ポイント】アップデートを遂げた素材で、より高いクオリティを獲得。

ロールドゴールド製法とゴールドフィールド製法の違いは、重量に占める純金属の割合が5%未満なら前者、以上なら後者ということ。今回の刷新でロールドゴールド製法は、母材と溶着する下地を14金から18金に変更し、外側に溶着する24金の量を0.5ミクロンから2ミクロンへと増量。

よりゴールドフィールド製法に近づき、これによってゴールドの均等性が保たれることで、耐久性が格段に高まった。

【ポイント】カスタムオーダーで作る自分仕様の造形美。

サヴィルロウの特徴のひとつである多彩なカスタムオーダーは健在。ゴールドかシルバー、フレームの色を決めたら形を選ぶ。往年の丸型「ラウンド」を筆頭に、ジョン レノンも愛用したことで知られるボストンフレーム「パント」。そしてウエリントンシェイプである「クアドラ」の3種からだ。

またセル巻きやインナーリム、ライディングテンプルといった装飾や仕様の変更も好みのままにオーダー可能となっている。

ベースモデル(フレームの形)

ROUND
PANTO
QUADRA

オプション(装飾や仕様の変更)

CELL WINDING
INNER RIM
RIDING BOW TEMPLE

【ポイント】イギリスからイタリアへ生産拠点を移行。

今回の再始動に際して大きな変化が生産拠点の移行。英国製からイタリア製となるのだ。新しいイタリア工 場の名前は「Kudos(キュードス)」。かつてゴールドフィールドを製造していた有名工場の跡地であるためオペレーションが組みやすいなどの利点があり、そこを買い取ることで新工場に。またアルガ ワークスにあった工場の設備もすべてキュードスに移設された。

【問い合わせ】
ブリンク 外苑前
TEL03-5775-7525

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 20234月号 Vol.193」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

【Willis & Geiger×2nd別注】ミリタリーとサファリが香るアーバンアウトドアウエア

  • 2025.09.17

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 90年代のアーカイブをデザインソースに、上品さを加えてアップデート。ウールメルトンジャケット[メトロ ウォーカー] ...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

Pick Up おすすめ記事

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

【Willis & Geiger×2nd別注】ミリタリーとサファリが香るアーバンアウトドアウエア

  • 2025.09.17

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 90年代のアーカイブをデザインソースに、上品さを加えてアップデート。ウールメルトンジャケット[メトロ ウォーカー] ...

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

【BIG SMITH×2nd別注】米軍の名作バッグをデニムで再構築! 経年変化が楽しめるデニムのエプロンバッグ。

  • 2025.09.22

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! BIG SMITH × 2nd ワーカーズエプロンバッグ 1940年代のアメリカン・レッドクロス(米国赤十字社)が製...