業界人が愛する、タフで頼りになるワークウエア。

  • 2023.04.25  2023.02.21

服とは本来道具である。衣服の起源を辿れば諸説あるが、体温調節や身体保護などの理由から始まって、いつも道具としての必要性に迫られたからこそ、服は発展を遂げてきた。最低限のベーシックなデザインに、それぞれの用途に適した機能が詰め込まれたそれらの道具服は、シンプルがゆえ現代のファッションにも取り入れやすく、流行に左右されない一生モノでもある。もちろんそれらのアイテムすべてに、愛用者それぞれのストーリーもたくさん詰まっている。今回はファッション巧者が育てたワークウエアを見ていこう。

1LEVI’S®(リーバイス)のLot.506XX|「ボンクラ」森島久さん

革パッチは無くなってしまっているが、表記サイズはなんと50。46以上のサイズに付くTバックのディテールも確認できる、正真正銘のスペシャル品だ

ヴィンテージ古着に造詣が深いことでも知られるボンクラのオーナー森島さんが、中学生の頃に手に入れた通称ファーストと呼ばれるリーバイスのデニムジャケット。いまとは異なってヴィンテージという言葉すらも存在しなかった時代に購入しているというから驚きだ。

「当時のジージャンといえば、いわゆるサードタイプのデザインが主流。とにかく他人と違うデザインのものが着たかったのと、身体が大きかったので大きいサイズを探していた時に見つけたのがこのジャケットでした。購入当初はデッドストックに近い状態でしたが、普通に着て洗っていたので色落ちも進んでいます。

本来はワークウエアとしてヘビーユーズするものなので汚れも気にしないで着てますが、襟付きで片ポケと、どこかシャツのようなエレガントさを感じるデザインというのも色気を感じ、魅力に思います」

愛用歴:42
購入場所:大阪・アメリカ村の古着店
購入時の価格:2万円くらい

2Lee(リー)の11Zペインターパンツ|「ソウボウ」ディレクター・藤田貴久さん

ロングLのトップボタンの付いた1950年代の11Z。当時、ミントコンディションでウエストは36程度。現在はこの価格では手に入らないだろう

九州地方の伝統的な技術を駆使したコンフォータブルクロージングを展開するソウボウのディレクターを務める藤田さん。ヴィンテージショップでキャリアを積んだこともあり、古着への造詣も深い。そんな藤田さんが選んだのは、アメリカを代表するジーンズブランドであるリーの名作ペインターパンツだ。

20歳くらいの頃に、ミントコンディションで見つけた50年代の『11Z』です。当時、バックヨークのないペインターパンツを探しており、ブランドに関係なくシルエットを重視して選びました。オーバーサイズのものを絞って穿くことで、オーバーオールをカットオフしたような個性的な出で立ちを演出してくれます。

これまでヴィンテージクロージングを買っては売ってを繰り返してきましたが、これだけは不思議と手元に残しておきたいと思った大事な1本。今回の特集テーマである『道具服』の原点は、僕にとってはこれ。アンファッションなものをファッションとして着る楽しさを教えてくれた存在ですね」

愛用歴:18
購入場所:サファリ
購入時の価格:3万円くらい

3Pherrow’s(フェローズ)のカバーオール|「スマートクロージングストア」マネージャー・姫野賢次さん

発売開始から14年間、ほとんどアップデートされることなく継続されており、 ファンの多いロングセラーモデル。3万8500円(スマートクロージングストア 原宿店 TEL 03-3406-0012)

192030年代のウォバッシュ生地をオリジナルで再現し、当時のディテールワークを随所に落とし込んだカバーオール。まさに道具服の急先鋒と言える1着だが、現在ではワークウエアではなくファッションピースが主流と姫野さんは言う。

「今となっては鉄道員はおろかエンジニアやワーカーでさえ無縁の街着として定着しているアイテムですが、かつての作業員たちに向けたいわば意味のあるディテールの数々が街着として汎用性を秘めていたというところにロマンを感じますね。普段使いにちょっと便利なポイントがたくさんあり何かと重宝しています」

愛用歴:14
購入場所:スマートクロージングストア
購入時の価格:3万円くらい

4Maison Martin Margiela(メゾン・マルタン・マルジェラ)のスウェードカバーオールジャケット|「ジャーナル スタンダード」ディレクター・松尾忠尚さん

2004SSのものと思われるメゾン・マルタン・マル ジェラの1着。アメリカのワークウエアLAPCOのスウェードカバーオールをサンプリングしている

謎多き人物マルタン・マルジェラ氏がまだ メゾン・マルタン・マルジェラのデザイナーを勤めていた2000年初頭の1着。松尾さんは深い衝撃とともにパリの直営店で購入したという。

「決してメジャーじゃないUSAのワークウエア“LAPCO”のスエードカバーオールをサンプリングした1着をパリのマルジェラ直営店で見つけたときは本当に衝撃的でした。というのも当時、オリジナルをJSでも取り扱いしていて親しみがあり、それゆえあり得ないところであり得ない物を見つけた感じでした。当時のマルジェラのアイテムはほとんど手放してしまった中、これだけは今後も絶対手放さないですね」と熱がこもる。オリジナルは 元々は溶接工の作業着であり、その辺りもしっかり踏襲されているという。

「素材に焚き火用グローブなどに使われるラフな床革が使われていて、それだけで道具感が半端ないです。だけど着た時のシルエットが紛れもなくマルジェラ。誰も気がつかない匿名感が自己満足を満たしてくれますね」

愛用歴:18
購入場所:Martin Margiela Paris Richelieu
購入時の価格:10万円くらい

5RESOLUTE(リゾルト)のデニム|「メイカーズ」デザイナー・手嶋慎さん

リゾルトのほぼ全ての品番を穿いたという手嶋さん。なかでもお気に入りが、リーバイス66をベースとするこの「710」モデル。日常用も別途所有する

タフな実用性とトラッドな美観を放つ本格シューズのブランド、メイカーズ。手嶋 慎さんは、そんな実直ブランドのオーナーだ。プロダクトにこだわる職人気質の手嶋さんが相棒として、日々使い倒しているアイテムがリゾルトのジーンズ。

「ヴィンテージも穿きましたが、結局身体に合いませ んでした。そこで5年ほど前に出会ったのがリゾルトです。作り手の林さんとも対談してその作り込みに共感し、以来ジーンズはリゾルトばかり。ポイントは我々アジア人体型にフィットする腰回りと、細かいレングスの種類。本当の意味でジャストで穿けるから、動きやすいし見た目も良いんです。だから仕事時も今はリゾルト()

デニム地がしなるので屈んだ姿勢でもストレスないし、無駄なくフィットしているので動きやすい。そして当然ながらタフ。作業上どうしても接着剤が付着するのですが、そんな佇まいもジーンズだから許されます()。仕事時の一本は、少々緩めのワンサイズアップを着用するのが自分流」

愛用歴:5
購入場所:リゾルトのショップ
購入時の価格:22000

6LEVI’S®︎(リーバイス)のデニム|フリーPR・柳雅幸さん

8割くらい色が残ったグッドコンディションで購入したリーバイスの505。バックポケット裏がシングルステッチとなっているので66前期だと判別

フリーのPRとして様々なブランドとタッグを組む柳さん。その仕事の幅広さから、様々なシーンでスタイルを切り替える必要がある。そんな目線で見ると、リーバイスがファッションジーンズとして打ち出した505を挙げたのも納得だ。

「定番の501も良いのですが、ファッションを生業としている立場から見ると、505の方が仕事道具として使いやすいんです。かしこまった場でトラッドなジャケットを着る時にも使えますし、股上が深いのでタックインしても様になって、今っぽいカジュアルスタイルにもハマってくれます。またテーパードシル エットなので、裾幅がほどよく狭く、革靴でもスニーカーでも合わせられるので、その汎用性はピカイチです。

これは70年代初頭の66前期に当たる505ですが、その時代の501は股上が浅くて、ストレートレッグなので、505の方が汎用性という面でアドバンテージがあると思いますね。ただ最近は高くなっているので、ガシガシと穿きづらいのが玉に瑕です()

愛用歴:10
購入場所:高円寺の古着店
購入時の価格:2万円くらい

7Vintage(ヴィンテージ)のアトリエコート|「バーヴェルク」成田玄太さん

1940年代のフランスのアトリエコートは、ほぼデッドストックのような状態で購入。バーの先輩が仕事着として着ていたので、憧れの逸品だったそう

知る人ぞ知る原宿のバーであるバーヴェルクの店長を務める成田さんのユニフォームのひとつでもあるのが、このフレンチのアトリエコート。アメリカでいうショップコートのような立ち位置であり、フレンチヴィンテージの花形のひとつだ。6年ほど前に購入し、仕事でも着ているが、グッドコンディション。そこには成田さんの美学がある。

「コックジャケットと同じで、仕事で使っていても、常にクリーンな状態で着 ることが美学だと個人的に思っています。もちろん味の出たワークウエアもよいのですが、接客業でもあるので、常にきれいな状態をキープするように意識していますね。

アトリエコートは、よくパターンが考えられていて、ロング丈でも身幅があって動きやすく、リネン素材だから速乾性もあって作業着としても優秀。それでいてフランスらしい上品な雰囲気があり、タイドアップ してもバランスがよく、これ以上に便利なワークウエアがないかも。これからも愛用し続けたいワードローブです」

愛用歴:6
購入場所:祐天寺の古着店
購入時の価格:48000円くらい

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 20232月号 Vol.191」)

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

CLUTCH Magazine, Lightning, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

モヒカン小川

Lightning, CLUTCH Magazine

革ジャンの伝道師

モヒカン小川

ランボルギーニ三浦

Lightning, CLUTCH Magazine

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

ラーメン小池

Lightning

アメリカンカルチャー仕事人

ラーメン小池

上田カズキ

2nd(セカンド)

アメリカントラッド命

上田カズキ

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

金丸公貴

昭和50年男

スタンダードな昭和49年男

金丸公貴

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

おすぎ村

2nd(セカンド), Lightning, CLUTCH Magazine

ブランドディレクター

おすぎ村

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

趣味の文具箱 編集部

趣味の文具箱

文房具の魅力を伝える季刊誌

趣味の文具箱 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

CLUB HARLEY 編集部

Dig-it, CLUB HARLEY

ハーレー好きのためのマガジン

CLUB HARLEY 編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部

昭和45年女 編集部

昭和45年女

“昭和カルチャー”偏愛雑誌女子版

昭和45年女 編集部

昭和50年男 編集部

昭和50年男

昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50年男 編集部