本社工場で見た、バブアーの神髄。あのワックスジャケットが作られる現場へ潜入!

100年以上変わらないワックスジャケットは、創業の地である英国サウスシールズで現在も作られている。驚くことに、その工程のほとんどはいまでも手仕事によるもの。バブアーの歴史や伝統はこうして守られ、継承されるのだ。2019年に次ぎ、幸運にも2度目の表敬訪問を許された2nd取材班。バブアーのいまを、お伝えする。

英国サウスシールズは最盛期を迎えていた。

ロンドンから列車でおよそ3時間を要する、イングランド北東部の小さな港町サウスシールズ。遡ること、1894年に創業者ジョン・バブアーによって、この地に「J Barbour & Sons」が設立された。以来、一世紀以上の歴史のなかでも変わることなく、バブアーはサウスシールズに本社と工場を構えている。

我々、取材班が訪れた10月のサウスシールズはすでに朝晩の冷え込みが厳しく、1日のなかで天候が目まぐるしく変わり、激しい雨や風にさらされることもしばしば。かつて、全長118キロメートルの巨大なタイン川や北海で働く港湾作業員のために開発されたバブアーのワックスジャケットは、まさにこの地で生まれるべくして生まれたのだと強く感じさせられるのだった。

そういったバブアーの原点やアイデンティティは、ものづくりからも伺い知ることができる。生地の裁断からはじまるジャケットの製作は縫製や各パーツの取り付け、ワックス仕上げに至るまで、そのほとんどがいまだに人の手によるもの。工場内を見渡しても大掛かりな機械は皆無に等しく、無数のミシンが奏でるリズミカルな音だけが響き渡る。

およそ160の工程を36人のスタッフで分担し、6090分が費やされるという、ひとつのワックスジャケット。これは効率を優先する現代的な生産体制と比較するとかなりアナログであり、職人ひとりひとりの熟練の技がなければ成立しない。

工場内ではバブアーのクラフツマンシップを体現する熟練の技が随所に見てとれる。20年以上のキャリアを持つ職人も少なくない

工場のスタッフには20年を超えるキャリアを持つベテランも少なくない。また親子2代に渡って携わっているというケースもあるとか。さらに特筆すべきは、すべてのスタッフが英国人。ひいてはサウスシールズ近郊で生まれ育った地元の人々が大半を占めるということ。

これはつまり、作り手のひとりひとりが自国の歴史や伝統を守り、継承していく担い手としての意識のあらわれ。そして、その環境を維持するブランドのホスピタリティがあってこそ。ただ単に、英国で作られているのとは訳が違う、正真正銘の「メイド・イン・イングランド」は、栄誉あるロイヤルワラントを掲げるバブアーの誇りだ。

そうして今またサウスシールズは最盛期を迎えている。アウトドアフィールドのみならずファッションアイテムとして確固たる地位を確立したバブアーのワックスジャケットは、ヨーロッパをはじめ、アメリカや北米地域、日本、韓国などのアジア圏など、世界中に届けられている。本企画では、華麗な職人技のリレーをじっくりと堪能し、改めてバブアーを着る喜びを感じていただきたい。

サウスシールズ内で現在の場所には 1980年代に移転。企画から生産、販売を行うリテイルストアもすぐ近くにある

人から人へ繋がるものづくりのリレー。すべて職人は歴史と伝統の担い手だ。

冬を目前に最盛期を迎えたファクトリー。工場では180名の職人を要して、1日に650着ほどのワックスジャケットが作られる。作り手の大半がサウスシールズ近郊で生まれ育った地元の人々。これぞ正真正銘の「メイド・イン・イングランド」だ。

ワックスコットンは英国老舗生地メーカーからロールの状態で供給される。裁断には未だ手描きのパターンシートを用いるなど、その作業は予想以上にアナログだ。

ジャケット製作の大部分を占める縫製の工程は各パーツごとに分担して行われる。バブアージャケット特有の立体的なポケットを縫い付ける作業は特に熟練の技が求められるが、その速度と正確性は天下一品。

各部に施されているスタッズも型紙を乗せて手作業でポイントを示し、打ち込まれる。自社のオリジナルパーツを使用するなど、細部にこそバブアーのクラフツマンシップの精神が込められている。

本社に新設されたワークショップスペース。

2021年に新設され たリプルーフのワークショップ。オープニングにはチャールズ国王も本社に表敬訪問した。その記念プレートとともに映るのは、メンズディレクターのイアン氏だ。

使い込まれたジャケットを回収、リメイクして唯一無二のプロダクトを展開する RE-LOVED」、採寸による「MADE TO MEASURE」や、各パーツを好みにカスタムできる「MY BARBOUR」など、近年の新企画も行われている(日本での展開は未定)

以前より本社内ではこのようなリペア部門を常設。年代や状態など、一着として同じものがないジャケットをなるべく同じ部材で修復するため、すべて人の目で確認しながらの作業が進められる。

年間14000着以上のジャケットがリペアを求めて本社に届くという。その使い込まれた1着はどれもアジが出ていて、いい表情だ。

自らの手でリプルーフすることで撥水性を高めるだけでなく半永久的に着用できるサステナビリティという効果も備えている。

チャールズ国王訪問時に直接指南したというリプルーフマスターのニール・トラヴィスさん。このスペースでは愛用者に正しいリプルーフをレクチャーする催しも開催予定。日本でもこのようなイベントを計画中だ。

(出典/「2nd 20231月号 Vol.190」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

「ファーストアローズ」創業30周年記念! 「JELADO」「RE-BUILT」とのコラボによる銀で彩った、贅沢なデニム。

  • 2026.06.29

日本屈指のシルバーアクセサリーブランド「ファーストアローズ」が創業30周年を記念して、これまでの集大成かつファンへの感謝の気持ちを込めて、「JELADO」と「RE-BUILT」とコラボしたスペシャルなデニムを制作。限定100本。節目の年に相応しいこだわりに満ちたデニムの詳細を大解剖! First A...

時とエイジングを刻む。VAGUE WATCH&Co. × CONSIGLIERE THE 1ST SPECIAL WATCH

  • 2026.07.02

時計は時間を刻むもの。本来の目的はそれで十分だが、「エイジングするものに囲まれて暮らしたい」という自称革ジャンの伝道師・モヒカン小川はベルトにもこだわる。そんな彼が愛用するヴァーグウォッチとシルバージュエリーブランド「コンシリエーレ」のコラボウォッチには毎日身につけた分のエイジングが刻まれている。 ...

革とデニムの境界線を越える! デニムのように見えるけど実はコレ、革なんです。

  • 2026.07.02

前号でもお伝えしたが、天神ワークスの開発していた新しい革「リジットレザー」が完成し、この度、遂にレザージャケットとなって登場した。まずはこの写真を見てほしい。これは、天神ワークス代表の髙木さんが1カ月着込んだもの。このエイジング、まさにデニムじゃね? でも、レザーらしいエイジングも見え隠れする、唯一...

夏の余白に、存在感を。大人メンズの夏スタイルに個性と奥行きを添えてくれるアイテムを紹介!

  • 2026.06.30

シンプルな装いだからこそ、アクセサリーや小物が着こなしの印象を大きく左右する夏。そんな季節にチャコールグリーンが提案するのは、物語とクラフトマンシップを宿した逸品たち。夏のスタイルに個性と奥行きを添えてくれるアイテムを紹介する。 手仕事が生む、本物の存在感 2002年に誕生したアティースは、「REL...

Pick Up おすすめ記事

初夏は、泥と大戦で。「STUDIO D’ARTISAN」2026SSの新作を紹介!

  • 2026.07.03

選ぶのは「泥染の開襟シャツ」か、「大戦モデル」か──。この初夏、気になるのは対照的な表情を持つ二つの新作だ。そのどちらにもステュディオ・ダ・ルチザンならではの、丁寧な作りと遊び心が息づいている。 奄美大島の伝統技法が生む、泥染ならではの深い表情に注目 奄美大島に古くから伝わる泥染は、テーチ木(シャリ...

王道のデニムセットアップはボトムスで差をつけろ!

  • 2026.06.30

昨今のアメカジブームのなかで、注目度が高まっている“デニムオンデニム”のセットアップスタイル。王道ももちろん良いが、一歩先を行きたいアメカジラバーはボトムスで差を付けてみるのはいかがだろうか。気鋭のブランド「アンバースレッズ」が展開するデニムセットアップはそんな望みを叶えてくれるに違いない。 Amb...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

夏の余白に、存在感を。大人メンズの夏スタイルに個性と奥行きを添えてくれるアイテムを紹介!

  • 2026.06.30

シンプルな装いだからこそ、アクセサリーや小物が着こなしの印象を大きく左右する夏。そんな季節にチャコールグリーンが提案するのは、物語とクラフトマンシップを宿した逸品たち。夏のスタイルに個性と奥行きを添えてくれるアイテムを紹介する。 手仕事が生む、本物の存在感 2002年に誕生したアティースは、「REL...

上品に纏うちょうどいい季節。大人の夏にちょうどいい「ORGUEIL」のシャツ

  • 2026.06.30

気温の上昇とともに、装いは軽く簡素になる。だからこそ求めたいのは、肩肘張らない大人の品格だ。クラシックをモダンに再構築したORGUEILのシャツが、大人の夏にちょうどいい存在感を放ってくれるはずだ。 Shawl Collar Denim Work Shirt 1930 年代に現存したアメリカンワーク...