本社工場で見た、バブアーの神髄。あのワックスジャケットが作られる現場へ潜入!

  • 2023.03.16  2023.03.10

100年以上変わらないワックスジャケットは、創業の地である英国サウスシールズで現在も作られている。驚くことに、その工程のほとんどはいまでも手仕事によるもの。バブアーの歴史や伝統はこうして守られ、継承されるのだ。2019年に次ぎ、幸運にも2度目の表敬訪問を許された2nd取材班。バブアーのいまを、お伝えする。

英国サウスシールズは最盛期を迎えていた。

ロンドンから列車でおよそ3時間を要する、イングランド北東部の小さな港町サウスシールズ。遡ること、1894年に創業者ジョン・バブアーによって、この地に「J Barbour & Sons」が設立された。以来、一世紀以上の歴史のなかでも変わることなく、バブアーはサウスシールズに本社と工場を構えている。

我々、取材班が訪れた10月のサウスシールズはすでに朝晩の冷え込みが厳しく、1日のなかで天候が目まぐるしく変わり、激しい雨や風にさらされることもしばしば。かつて、全長118キロメートルの巨大なタイン川や北海で働く港湾作業員のために開発されたバブアーのワックスジャケットは、まさにこの地で生まれるべくして生まれたのだと強く感じさせられるのだった。

そういったバブアーの原点やアイデンティティは、ものづくりからも伺い知ることができる。生地の裁断からはじまるジャケットの製作は縫製や各パーツの取り付け、ワックス仕上げに至るまで、そのほとんどがいまだに人の手によるもの。工場内を見渡しても大掛かりな機械は皆無に等しく、無数のミシンが奏でるリズミカルな音だけが響き渡る。

およそ160の工程を36人のスタッフで分担し、6090分が費やされるという、ひとつのワックスジャケット。これは効率を優先する現代的な生産体制と比較するとかなりアナログであり、職人ひとりひとりの熟練の技がなければ成立しない。

工場内ではバブアーのクラフツマンシップを体現する熟練の技が随所に見てとれる。20年以上のキャリアを持つ職人も少なくない

工場のスタッフには20年を超えるキャリアを持つベテランも少なくない。また親子2代に渡って携わっているというケースもあるとか。さらに特筆すべきは、すべてのスタッフが英国人。ひいてはサウスシールズ近郊で生まれ育った地元の人々が大半を占めるということ。

これはつまり、作り手のひとりひとりが自国の歴史や伝統を守り、継承していく担い手としての意識のあらわれ。そして、その環境を維持するブランドのホスピタリティがあってこそ。ただ単に、英国で作られているのとは訳が違う、正真正銘の「メイド・イン・イングランド」は、栄誉あるロイヤルワラントを掲げるバブアーの誇りだ。

そうして今またサウスシールズは最盛期を迎えている。アウトドアフィールドのみならずファッションアイテムとして確固たる地位を確立したバブアーのワックスジャケットは、ヨーロッパをはじめ、アメリカや北米地域、日本、韓国などのアジア圏など、世界中に届けられている。本企画では、華麗な職人技のリレーをじっくりと堪能し、改めてバブアーを着る喜びを感じていただきたい。

サウスシールズ内で現在の場所には 1980年代に移転。企画から生産、販売を行うリテイルストアもすぐ近くにある

人から人へ繋がるものづくりのリレー。すべて職人は歴史と伝統の担い手だ。

冬を目前に最盛期を迎えたファクトリー。工場では180名の職人を要して、1日に650着ほどのワックスジャケットが作られる。作り手の大半がサウスシールズ近郊で生まれ育った地元の人々。これぞ正真正銘の「メイド・イン・イングランド」だ。

ワックスコットンは英国老舗生地メーカーからロールの状態で供給される。裁断には未だ手描きのパターンシートを用いるなど、その作業は予想以上にアナログだ。

ジャケット製作の大部分を占める縫製の工程は各パーツごとに分担して行われる。バブアージャケット特有の立体的なポケットを縫い付ける作業は特に熟練の技が求められるが、その速度と正確性は天下一品。

各部に施されているスタッズも型紙を乗せて手作業でポイントを示し、打ち込まれる。自社のオリジナルパーツを使用するなど、細部にこそバブアーのクラフツマンシップの精神が込められている。

本社に新設されたワークショップスペース。

2021年に新設され たリプルーフのワークショップ。オープニングにはチャールズ国王も本社に表敬訪問した。その記念プレートとともに映るのは、メンズディレクターのイアン氏だ。

使い込まれたジャケットを回収、リメイクして唯一無二のプロダクトを展開する RE-LOVED」、採寸による「MADE TO MEASURE」や、各パーツを好みにカスタムできる「MY BARBOUR」など、近年の新企画も行われている(日本での展開は未定)

以前より本社内ではこのようなリペア部門を常設。年代や状態など、一着として同じものがないジャケットをなるべく同じ部材で修復するため、すべて人の目で確認しながらの作業が進められる。

年間14000着以上のジャケットがリペアを求めて本社に届くという。その使い込まれた1着はどれもアジが出ていて、いい表情だ。

自らの手でリプルーフすることで撥水性を高めるだけでなく半永久的に着用できるサステナビリティという効果も備えている。

チャールズ国王訪問時に直接指南したというリプルーフマスターのニール・トラヴィスさん。このスペースでは愛用者に正しいリプルーフをレクチャーする催しも開催予定。日本でもこのようなイベントを計画中だ。

(出典/「2nd 20231月号 Vol.190」)

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