A.G.スポルディング&ブロスに業界人が惚れ込む理由。

いまとなっては人々の生活に欠かせないファッションアイテムであるスウェット。1920~’50年代ごろまでは、伸縮性や吸水性に優れたスポーツ用のアスレチックウエアとして重宝されていた。なかでも、最初期からスウェットを手がけていたブランドとして知られるのが、アメリカ生まれのA.G.スポルディング&ブロスである。「旧き良きオーセンティックなアイテム」として、ラブコールを送る業界人も多数。

2018年に待望の復活を遂げた、老舗アスレチックブランド。

世界で初めて野球やアメフトなどのボールを作ったことでも知られる、1876年アメリカ創業のアスレチックブランド、A.G.スポルディング&ブロス。スウェットが生まれた最初期に製造を手掛けていたブランドとしても知られ、1924年にはカタログに初掲載、1932年のロサンジェルス五輪ではアメリカ代表選手が着用するなど、輝かしい業績がありながらも一時期生産をストップしていた。しかし、2018年にMADE in JAPANで待望の復活を果たす。

当時のデザインやガセットなどのディテールを踏襲。ガセットとは、まだ高度な技術がなかった時代に、伸縮性を持たせて着用しやすくするために三角形のリブニットを継ぎ充てた仕様のこと。さらに新生A.G.スポルディング&ブロスは、和歌山の吊り編み機でゆっくりと時間をかけて緩く編まれているため、並々ならぬ伸縮性を発揮する。

左/両Vトレーニングシャツ2万2000円、中/サイドラインパーカ(シングル)2万7500円、右/フットボールスウェット2万2000円

ブランドを代表するモデルは、[サイドラインパーカ]、[フットボールスウェット]、[両Vトレーニングシャツ]の3型。

[サイドラインパーカ]は、その名の通りサイドライン際で待機する選手たちを寒さから守るためのベンチウォーマー的アイテム。当時は保温性の高いダブルフェイスのみの展開で、ハンドウォーマーポケットはアイコニックなボクシンググローブ型だ。現行のモデルでは、デザインはそのままにシングル仕立てに仕様を変更したモデルも展開。

[両Vトレーニングシャツ]は、1950年代以前に主流だった両Vスウェット。スウェットがウールからコットンに切り替わった1920年代に発売されたデザインが原型となっている。V字型の切り込みが入った変形袖リブもクラシカルなディテールだ。

[フットボールスウェット]は、ショルダーのフライスや、首回りと脇下のガセットが特徴的。当時はウール素材だったが、着やすいコットン素材にアップデートして展開している。どれもスポルディングオリジナルのディティールが盛り込まれた、差別化された一品。

上記定番3モデルは、こちらの記事でもより詳細に解説されているため、参照してほしい。

1世紀前のディテールがメイド・イン・ジャパンで復活!A . G . スポルディング&ブロスのスウェットに注目!

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2022年02月21日

復活して新たに加わった新モデルにも注目。

左/スウェットパンツ2万4200円、右/タートルネックトレーニングシャツ2万2000円

こちらは定番の3型に加えてリリースされたばかりの新作、[スウェットパンツ]と[タートルネックトレーニングシャツ]だ。

[タートルネックトレーニングシャツ]は、前述した定番[トレーニングシャツ]の特徴的なデザインをそのままに、首元をタートルネック仕様に変更したもの。1920年代に存在した、コットンウール素材のタートルネックシャツが原型である。

そのまま一枚で着るのはもちろん、[タートルネックトレーニングシャツ]の上に大きめサイズのシャツを羽織るなど、幅広い着こなしができる。トップグレーとオートミールの2色展開でベーシックなカラーなのも嬉しいポイントだ。

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[スウェットパンツ]は、吊り編みによる程よくゆったりとしたシルエットで、どんなアウターにも合わせやすく、しっかりとした生地感なのでスウェットパンツにありがちな、使い込むほどに膝が出てしまう、というリスクも軽減される。

色展開はオートミールの1色のみだが、スポーティな印象になりすぎず、どんなスタイリングにもハマる万能カラーである。定番ラインナップと合わせて、こちらも要チェックだ。

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“スポルディング推し”の業界人も多数。

セプティズ/オーナー 玉木朗さん

ちょうど取り扱いをスタートしたばかりという[フットボールスウェット]を着用。リーバイスのヴィンテージデニムに、トリッカーズの[マットガード]と、シンプルかつオーセンティックな往年のアメカジスタイルだ。

三軒茶屋にある老舗セレクトショップ「セプティズ」。オーナーの玉木さんにとって、A.G.スポルディング&ブロスは昔から思い出深いアイテムだったそう。

――玉木さんのA.G.スポルディング&ブロスに対する思い入れを教えてください。

玉木 日本で取り扱いが始まったのは1969年、あのヴァンヂャケットがライセンス契約をしてからです。「ケントショップ」や「テイジンメンズショップ」などのハイエンドなお店で取り扱われていて、若かった僕にとってはなかなか手の届かないブランドでした。逆にその特別感とアメリカ製という思い込みから、強い憧れを抱いていましたね。ヴァンヂャケットが日本で展開するモデルは、すべて日本製だということにしばらく後になって気づきましたが(笑)。1970年に入ってようやく何着か買えるようになりましたが、周りで持っている人はほとんどいなかったですし、芸能人も着用しているようなハイグレードなアイテムでしたからとにかく自慢の大好きなブランドだったことを覚えています。

玉木さんが、1970年に「テイジンメンズショップ」で購入したという希少なスタジャン。そのほか、スウェットやウインドブレーカー、レタードカーディガンなどを所有していたそう。

――2018年に待望の復活を遂げましたが、ここ「セプティズ」での取り扱いもスタートしたそうですね?

玉木 はい。単に「新しいブランドの取り扱いをスタートする」という感覚とは、明らかに違う特別な愛着がありますね。ここで取り扱うのはひとまず[フットボールスウェット]1型のみです。なによりもこのクラシックなガセットの仕様が気に入っていて、「取り扱うならこのモデルだ」と最初から決めていました。“両V”と呼ばれる前後ろともにガセットの入った仕様が旧い仕様であることは、1980年代のヴィンテージを掘っていた時期から気付いていましたが、肩部分もリブになっている“サドルガセット”と呼ばれるディテールがさらに旧いものであることに気付いたのは1987年ごろのことです。NYでとあるスポーツブランドのエージェントに勤めていた時期に、オーナーが連れて行ってくれた工場のマネージャーが、この“サドルガセット”がついたボロボロのウールセーターを着ていたんです。そこで初めて「こんな仕様があるんだ!」と知って。復活したA.G.スポルディング&ブロスの現行ラインナップを見てみて、やっぱりA.G.スポルディング&ブロスにもこんな仕様があったのだと改めて再確認することができました。

首元と肩にリブニットが充てられ、伸縮性の向上を図った“サドルガセット”仕様。「技術がなかった時代の、本当に素晴らしい発明だと思います」

そんな個人的な思い入れもあって、この[フットボールスウェット]を取り扱っています。国産で、かつ和歌山の旧い吊り編み機でかなり時間をかけて作っている点は、新しいスポルディングならではの魅力ですよね。今後は当店別注の展開なんかも検討しています。

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アークスタンダード/店長 臼井雄祐さん

帽子はダイワ ピア39、ダウンベストはアークテリクス、パンツはシオタ×アークスタンダード、シューズはリプロダクション オブ ファウンドのジャーマントレーナー。色数を少なく、ブラックを多く取り入れることで今っぽいアーバンなコーディネイトに。

栃木県宇都宮市に拠点を構える、アークネッツ。多数の店舗を構えるうちのひとつ、「アークスタンダード」はアウトドアアイテムを取り入れたアメカジスタイルを提案する。ここでは[サイドラインパーカ]を取り扱っているとのことで、店長の臼井さんに話を聞いた。

――取り扱いを始めたきっかけを教えてください。

臼井 A.G.スポルディング&ブロスの復活にあたり当店バイヤーが展示会に伺いまして、そこで即決しました。僕自身もダンスをやっていた学生のころに歳の離れた先輩が着て踊っているのを見て、「大人はかっこいいスウェットを着てるなー」と感動したことを覚えています(笑)。今でも、“大人のスウェットパーカ”というイメージは揺るぎません。

――こちらで取り扱われているのは[サイドラインパーカ]なんですね。

臼井 弊社スタッフにはパーカ好きが多いもので(笑)。やっぱり好きなものの方がお客さんにも伝えやすいですしね。昔の吊り編み機で織っていて質がいいからこそ、洗っても質感が変わらないんですよね。今の吊り編み機で作ったスウェットは、どうしても風合いが損なわれやすくて。そんなところもお客さんにセールスさせていただいています。

[サイドラインパーカ]のアイコニックなディテールが、このボクシンググローブ型のハンドウォーマーポケット。内側はしっかり起毛しているので暖かい。

――アークネッツさんらしいトレンドを反映したスタイリングですね。

臼井 そうですね。ブランド背景に合わせて直球アメカジスタイルで着ることももちろんあるんですが、ブラックカラーを多く取り入れてアーバンなスタイルで着るのが今の気分です。安っぽいブランドでは決してないので、こういったコーディネイトにもしっかりハマってくれますね。

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タイムズ アー チェインジン/バイヤー 舘野典和さん

ついアメカジスタイルで合わせたくなるのがA.G.スポルディング&ブロス好きの性。パンツはヴィンテージのリーバイス505、シューズはレッドウィングの[ベックマン]。「ぜひスポルディングを見にお店にいらしてください!高崎にある美味しいラーメン店もご紹介できますよ(笑)」

群馬は高崎にあるセレクトショップ、「TAC」こと「タイムズ アー チェインジン」。新品から古着、さらにはキャンプ用品など、良質なアイテムを幅広く取り扱っているよろずや的な老舗店。それだけたくさんのプロダクトを独自の目線で見てきたバイヤーの舘野さんも、A.G.スポルディング&ブロスの[サイドラインパーカ]を絶賛する。

――A.G.スポルディング&ブロスを知ったきっかけは?

館野 2020年の冬、仲良くさせてもらっているライターの方が取材にいらっしゃった時に着ていて。ブランドのことはもともと知っていたんですが、復活していたことを知ったのはその時です。ヴィンテージは相場だと50万円ぐらいするコレクター的なアイテムですし、ずっと“憧れのパーカ”という認識ですね。

――現行を実際に見て、着てみてどうでしたか?

館野 こういうクラシカルなスウェットで、ほどよくゆったりしたシルエットってあまりないので、着た時の雰囲気は抜群だと思います。和歌山の吊り編み機で丁寧につくられているから着心地も最高。あとは、ロックミシンで作られたフードの立ち具合が気に入っていて、インナーとして着た時もボリューム感が絶妙なんですよね。オリジナルとの比較で言えば、オリジナルだとダブルフェイスしかないんですよ。それだと正直分厚すぎると感じる時がありますが、現行はより実用的なシングル仕様も同時展開しています。ヴィンテージらしい魅力と実用性を兼ね備えた、他にないブランドになっていますよね。

――今回は王道のアメカジコーデで合わせてくださいました。「TAC」に来るお客さんにはどのように提案していますか?

館野 「TAC」では古着やヴィンテージも扱っているので、A.G.スポルディング&ブロスと同じように歴史のあるアイテムと組み合わせたくて、リーバイスやレッドウィングを選びました。やはり背景にあるプロダクトとしての魅力やウンチクを理解してくださるヴィンテージ好きのお客さんにおすすめしたいですね。あとは、ヴィンテージデニムにヴィンテージスウェットを合わせるとガチガチすぎると思いますが、そのスウェットをあえてA.G.スポルディング&ブロスに変えてみるとか。ブランドの背景は活かしつつ、クラシックになりすぎないようハズしとして取り入れる。そんな使い方がおすすめですかね。

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※終了※二子新地のギャラリーでポップアップイベント開催!

店内には海や音楽をテーマにした多種多様なビールが並ぶ。時期によっては個展が開催されていたり、服や家具、レコードが販売されていたりとジャンル不詳の“小規模複合施設”。写真中央がオーナーの相馬太河さん。

クラフトビールの販売、イベントスペース、ギャラリー、ショップ……。そのすべての側面を持つ、通称“小規模複合施設”「リバーサイドベース」にて、2月4日から2月13日にわたりA.G.スポルディング&ブロスのポップアップイベントが開催される。現行のラインナップが展示・販売されるだけでなく貴重なヴィンテージを見ることもでき、スウェットというひとつの“カルチャー”の片鱗に触れることができる絶好のチャンスだ。

自身もA.G.スポルディング&ブロスの愛用者である、同店オーナーの相馬さんに話を聞いた。

「仕事の節目に自分へのご褒美として、悩んだ末に購入したスウェットが、A.G.スポルディング&ブロスのダブルフェイスのスウェットだったんです。公式オンラインストアで購入しましたが、僕を知ってくださっていたブランドの方から直接メッセージがきて。そこから今回のイベントに繋がりました。これまでもデニムブランドKUROによる「デニムノテンランカイ」と題したイベントや、詩人・黒川隆介さん、画家・黒沢進士さんの個展など、カルチャーにまつわるイベントをいくつか開催しています。A.G.スポルディング&ブロスはしっかりしたルーツと歴史のあるブランドなので、物販イベントというよりもあくまでギャラリー的な楽しみ方で見ていただきたい。もし気に入ったら購入もできる、くらいの感覚でお越しいただければと思います」

イベント詳細

スポルディング 100年前のスポーツウェア展 legend of sweatshirts since 1876
■開催期間:2022年2月4日~2月13日
■開催場所:「リバーサイドベース」神奈川県川崎市高津区二子1-5-31
■店舗営業時間:13:00~21:00 定休日なし
■店舗HP:https://rsb-shop.com

この記事を書いた人
パピー高野
この記事を書いた人

パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
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