HHKBミートアップVol.08開催! ステージ上からの展望

  • 2024.11.15

去る11月7日に、『HHKBユーザーミートアップVol.8』が開催された。PFUが主催するHHKB(Happy Hacking Keyboard)のユーザーイベントでおよそ100人が集まる。HHKBは1996年に発売された打鍵感にとことんこだわったキーボード。歴史あるHHKB Professionalと、新世代のHHKB Studioの2種類のラインが現在展開されている。筆者も、例年参加・取材しているのだが、今年は登壇することになってしまい、十分な取材ができなかったので、登壇者側の視点からレポートをお伝えしよう。

HHKBユーザーミートアップVol.8
https://happyhackingkb.com/jp/event/meetup/vol8/

まずは、大波乱から幕を開けた今年の話

PFUの常務執行役員・清水康也さん。

イベントは常務執行役員・清水康也さんの開会挨拶後、おなじみ販売推進統括部長の山口篤さんの今年のHHKBの振り返りと、今後の展望のお話。

相変わらず盛り上げる販売推進統括部長の山口篤さん。

今年は昨年発売されたHHKB Studioにとって2年目で、キートップの3Dデータが公開されたり、10月には新色の『雪』が発売されたことがトピックになるはずだったが、石川県に本社があるPFUにとっては、元日に発生した能登半島地震もまた忘れることのできない出来事だった。

この地震で被災した大徹八井漆器工房(昔、HHKB Professional HG Japanのキートップを制作した漆塗り工房)を支援するため、クラウドファンディングが行われたりもした。

PFUが能登半島地震の復興支援として、高級輪島塗りHHKBをクラファンした……のだが

PFUが能登半島地震の復興支援として、高級輪島塗りHHKBをクラファンした……のだが

2024年06月27日

などと書いているが、私はこの時、控室にいて話を聞いていない(すみません)。

当初は、このあたりは取材して、登壇する時間だけ登壇すればいい……と思っていたのだが、さすがに今回はモデレーターの大役だったので、控室で打ち合わせをしたり、準備をしたり、お互いの気分を繋いだりするための雑談に、全精力を費やしていたのだ。

そういえば、今回は3人でVision Proを被って登壇したのだったけれども、その写真を撮ってなかったので、控室の様子。

いしたにさんのポストを借用して貼っておきます。

超クレバーな、おふたりをモデレートするという重責

というのも、今回筆者はモデレーターということで、呼んでいただいたのだが、お話をするお相手、おふたりがすごい。

暦本純一さんは、東京大学情報学環教授。『暦本研』という自らの名前を冠した研究室をお持ちで、ヒューマンコンピュータインタラクションの専門家。また、ソニーコンピュータサイエンス研究所京都リサーチの所長でもある。’90年代にARシステムを作ったり、今やスマホやタブレットで誰もが使い、欠かせないものになっているマルチタッチの基礎研究を行っていたという人。キーボードはこれからどうなるのか? ついて話を聞くのに相応しい人だ。

清水亮さんは、筆者は2013年のenchantMOON発売の時から取材させてもらっているが、米マイクロソフト、ドワンゴなどで活躍した後、ユビキタスエンターテイメント、ギリアなど数々の会社を創業した人でもある。昔から、いろいろお話を聞いているのに、略歴を書こうとすると苦労する。それだけ成功も失敗も毀誉褒貶も重ねている人だ。ネットを検索しても、なかなか筋道の通った略歴が出てこない。会話していても頭はとても良いことがわかるが、良すぎて筆者のような凡人は、たいていの場合話を理解し切れない。理解し切れないままに話はどんどん進んでいく。最近は、ギリアはAIをビジネスにしていく会社だったが、なぜか清水さんはギリアも離れている。このへんも凡人にはわからない。

ともあれ、こんなおふたりの話を『モデレートする』なんていうのは、凡人たる私には不可能なことのように思える。

この話をPFUさんから受けた時には、『なるほど、私のような凡人が、おふたりの話のかじ取りをして、一般参加者の方にわかりやすくすればいいのね!』と思ったが、イベントが近づいてくるとそんなことは不可能なことのように思えてきた。

そういえば、去年のこのイベントでは、ほろよい加減の清水亮さんが「ディップスイッチが裏に付いてるなんて、意味がわかんない」とか叫んだり、落合陽一さんが乱入したりと大変なことになったことが記憶に新しい。モデレートなんて不可能だ。

『キーボードというインターフェイス』についての、超深い話

というわけで、取材は諦めて、少しでも控室で暦本さんや清水さんとお話しして、上手くモデレートしようと努力したのだ(だからイベント全体の記事は書けない)。

そもそも、おふたりとも、コンピュータの専門家だからキーボードには親しんでいる。そのふたりがHHKBを選んでいるということには重要な意味があるのだ(ちなみに、筆者を含めて3人ともHHKBエバンジェリストである)。

暦本さんはUS配列、清水さんは日本語配列のかな入力(!)、筆者は日本語配列のローマ字入力と、若干使ってる仕様こそ違うが、普段から何台ものHHKBを使っている。暦本さんは東京の研究室にもソニーCSL京都にもHHKBが置いてあるらしいし、清水さんも各地の拠点にHHKBを置いてあるし、出張の時にも持ち歩いているそうだ。

そこで、おふたりの初体験キーボードと、HHKBとのなれ初めを聞くところから話を始めてみた。インターフェイスの専門家である暦本さんに、コンピュータはこの50年ほどの間に着々と進歩しているのに、この60〜110個ぐらいのスイッチを、10本の指で連続的にタッチすることで扱う『キーボード』というインターフェイスは、なぜ変わらないのかを聞いてみた。

また、AR/VR、そしてAIが普及していくこれからの未来でも、我々はこのキーボードというデバイスを使っていくのかも気になるところだ。

AR/VR空間では案外文字入力がしにくいし、Meta QuestのコントローラやVision Proの視線入力や指というデバイス(?)も、ポインティングデバイスとしては扱いにくい側面もあるので、HHKB Studioのような『キーボード+ポインター』というデバイスは非常に存在意義がある。

清水さんによるとVision Proの視線入力時に、微妙な位置の決定が上手くいかない時に、HHKB Studioのポインティングスティックが非常に役に立つのだそうだ。

AIが進化していくと、文章作成もかなりサポートしてくれるだろう。しかし、思考の道具(テキストを書きながら考える)としてのキーボードの立ち位置は変わらないに違いない。

『人類が使わなくなってもオレは』(清水)、『生活の根源的豊かさ』(暦本)

話は、予想どおり思い掛けない方向に広がりまくったのだが、筆者の頼りないモデレートに手加減して下さったのか、暦本さんも清水さんも比較的テーマに沿って話して下さって大変助かった。さらに最後の締めはさすが! お二人とも話慣れていらっしゃる。

「この会の打ち合わせの時『キーボードはなくなる』とか言ったんだけど、やっぱHHKB Studioを作ってくれたこと、マジ感謝している。人類がキーボードを使わなくなったとしても、オレは使う」と清水さん。

「ちゃんとしたキーボード使うっていうマインドは、生活の根源的豊かさ。どうでもいいキーボードで字を打っていいのか? 一番触れているものに投資しなくてどうするんだ」と暦本さん。

いいお話を聞けました。

ぜひ、全編をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。

イベントの色々について、こちらにいしたにさんがXのポストをまとめてくれているので、こちらもぜひご覧下さい。

HHKBミートアップ2024まとめ #HHKBミートアップ
https://togetter.com/li/2462140

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