Apple Intelligence、どうすれば使える?
OpenAI(ChatGPT)や、グーグル(Gemini)、Meta(Meta AI)に遅れを取りつつも、アップルが2024年6月のWWDCで発表した生成AIのApple Intelligenceは、デバイスの持つ個人情報を、安全性を保ったまま利用して、ユーザーのアシスタントとして動作する……というもの。
全世界同時ローンチではなく、USから……というのは、最近よくある展開方法だが、使用言語を英語(米国)に切り替えると日本でも利用出来る。
また、機能は、徐々にアンロックされていくようで、現時点では利用出来る機能は限られている。
利用出来るデバイスは、Mシリーズチップ、もしくはA17 Pro/A18/A18 Proを搭載したMac、iPad、iPhoneで、OSは、iOS 18.1、iPadOS 18.1、macOS Sequoia 15.1にアップデートする必要がある。
厳密な表現をすると上記のようになるが、簡単にいえば『最新のアップルデバイスの多くで、最新OSにアップデートして、言語を英語(米国)にしたら使える』ということだ。
現時点では、どんな機能が使えるの?
これから、数多くの機能が使えるようになるが、「機能がどんどん追加される」「12月に追加される」「日本語での提供開始は2025年」とか、非常に分かりにくい。
とりあえず、現時点で我々が言語を英語(米国)にしたら、使えるのは以下の機能。
●作文ツール(英語ではWriting Tools)——テキストを書くあらゆるツールで使える
●より自然なSiri(英語ではMore Natural and Conversational Siri)
・テキストでの入力も可能
●賢くなった写真アプリ(英語ではMore Intelligent Photos App)
・自然言語での検索
・クリーンアップツール
・自然言語でのムービーの生成
●メールの管理
・優先度の高いメールの選別
・長いスレッドの要約
・スマートリプライ
●通知の要約
●電話の録音と、文字起こし、要約
というわけで、画像の生成や、作文ツールの高機能化、ビジュアルインテリジェンス(カメラを向けたものを判別する機能)などは(英語(米国)では)12月の追加となっている。
正直なところ、現時点では英語版でもさほどの機能は利用出来ないといえるだろう。これまで生成AIを使ってきた人からすると物足りない成熟度合だと思う。しかし、一足飛びに進めるものではないし、筆者のようにあらゆる情報をアップルデバイスに集約している人なら、遠からず利便性が高まっていくとは思う。iPhoneやMacというハードウェアを作るメーカーだけに、慎重な態度は良いと思う(たとえば、同じハルシネーションでも、リテラシーの高い人が使うChatGPTと違って、「iPhoneがウソをついた」ということになる危険がある。
『Writing Tools』は、日本語版が出たら便利に使えそう
いくつかの機能を使ってみよう。まず文章の要約。これは普通に役に立ちそうだ。
今回のApple Intelligence発表のニュースリリースを要約してもらうとご覧の通り。なるほど納得の内容ではある。
筆者などは、英語が不得手なので、長くて読むのが面倒な文章に関しては、要約してもらえるとたしかに助かる。
Proofreadは校正。Rewriteは書き直し。Friendly、Professionalはそれぞれよりフレンドリーもしくは、プロっぽく書き直す機能。Conciseは簡潔に。下段のSummaryは要約、Key Pointsは重要箇所の箇条書き、Listはリスト化、Tableは表組みにする機能。
いずれも、日常の仕事で役に立ちそうだ。
もちろん、既存の生成AIでも、ぜんぜんできることなのだが、OSとして容易に呼び出せるのは便利。虹色にギラリと光るエフェクトもちょっと素敵(笑)
Siriがアプリを操作できるようになるのが便利
Siriもかなり賢くなっている模様。
筆者の英語力ではさほど、使いこなせないが、「Show me any emails I’ve received from ○○ last month.(今月○○さんから来たメールを見せて)」「Show me my schedule for today(今日の私のスケジュールを見せて)」という使い方はできる。
特定のメールや、スケジュールなどを探すのには向いていそう。
「Please add the sender of this email to my contacts app.(メールをくれた人を連絡先アプリに追加して)」といったようなアプリをまたいでの操作は、今のところできない模様。これができればかなり便利だと思うのだが。
長い間、ライバル不在状態だったからかも知れないが、iPhoneやMacの連絡先アプリや、カレンダーアプリは相当使いにくい。
筆者の連絡先アプリは、クラリスワークスで作ったデータを、クラリスオーガナイザーに取り込み、Palm Desktop から、iCal……そして、現行の連絡先アプリに移行して来た関係で、妙な重複データや、ゴミのようなデータを含めて、6700件ものデータがある。いちいち、チェックするのも面倒なので、Apple Intelligenceが整理整頓してくれるといいなぁ……と思っているのだが。
写真.appにもいろいろな機能が
写真を検索するのも便利になるらしい。たとえば、「Takuta wearing a blue shirt」みたいな感じの自然言語で検索できるようになるはず。子供の小さい頃の写真とか、イメージは残っていても探し出すのが大変だったのだが、これからは気軽に探せるようになるかも。
ただ、現時点では、筆者のiPhoneでは「Photos is analyzing your library to provide accurate search results(写真.appは正確な検索結果を提供するためにライブラリを分析しています)」と出ているので、この機能が使えるようになるにはかなりの時間がかかるのかもしれない(筆者の写真ライブラリには30万枚以上の写真が入ってるので、たしかにこれを生成AIで運用できるようにするには相当な時間がかかるのかも。Apple Intelligenceを使えるようにしてから、数日経つのだが……)。
写真のクリーンアップツールは、使用言語を英語(米国)にしなくても、iOS 18.1にしたら、そのまま使える機能。みなさんのiPhoneでも使えるはず。意外と複雑なものでもキレイに消してくれたり、逆に単純なものなのに消えなかったり、ちょっと特性が分かりにくいが、便利なシーンも多い。ぜひ使ってみていただきたい。
ビジネスメールにはけっこう使えるかも
メールに関しては、筆者が普段メールアプリを使っていないので(Sparkを使っている)優先度の高いメールの選別についてはよく分からなかったが、要約や、スマートリプライは利用できた。
特に、筆者は発表会のご招待のメールを断るのが不得手なのだが(京都人なので、回りくどくやんわりと断りすぎて、断ってることが伝わらなかったりする(汗))、海外からのイベント招待のメールに対して、ワンタップで「行きます」「行けません」というメールを生成してくれるのはありがたいと感じた。しかも、フレンドリーな感じにしたり、フォーマルな感じにしたりもできる。
もちろん、自分できっちり書かなければいけないメールもあるが、ビジネスで定型の返事でいいなら、これは便利かもしれない。案外と我々は「お世話になっております〜云々」というような定型文にこそ時間を遣ってしまっているような気がする。そこをApple Intelligenceがよしなにやってくれるのは助かる。
録音はすぐ使える。文字起こしは便利そう
通知の要約については、言語を英語(米国)に切り替えたところで、筆者に来るメールやメッセージがほとんど日本語だからか、今のところ効果は感じていない。日本語だから動作していないのか?
通話の録音の文字起こしの要約も同様。
ところで、通話の録音機能は、日本語でもiOS 18.1で使えるので、こちらも、ぜひみなさん使ってみていただきたい。
日常的に便利だというのもあるが、詐欺電話や、強引なセールスを録音することで抑制することができると思う。高齢者の方にもぜひ使っていただきたい機能だ。
「スマートフォン」なのだから、録音なんてとっくに実現していてもおかしくない機能だったのだが、iPhone 登場当初は『通話が録音される』ということに抵抗のある人も多いという判断だったのだろう。あまり音声通話が使われなくなってから実現するというのも皮肉なものだ。
今のところ急に便利にはならないが……
というわけで、最後にまとめ。
まず、写真のクリーンアップツールと、電話の録音機能は、日本語版でもiOS 18.1にすれば使えるのでぜひ。
そして、機能によっては、過去の写真やメールをAIが解析し終わらないと使えないというものもあるので、機能が公開されても気長に待つことを覚悟しておいた方がいい。
英語(米国)にすれば現状使えるが、現時点では日常利用している言語依存の機能が多いので(日本語で来たメールは要約できない)、あまり便利に感じることはない。
英語(米国)であれば使える機能にしても、今のところ急激に便利になるような機能は少ないので、今後、おいおい追加されていく機能を待つしかなさそうだ。
とはいえ、一方で、連絡先やメール、カレンダー、写真など、毎日使う純正アプリと密接に連携して機能強化されていくと、現実的な利便性が向上していきそうだ。
「今のところ急に便利にはならない。でも、長い目で見たらシステムや純正アプリが大きく便利になっていくかも」というのが現時点でのApple Intelligenceだ。気長に待とう。
(村上タクタ)
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