AirPodsは4世代目、AirPods Proは(変わらず)2世代目
初代AirPodsが発表されたのは2016年で、iPhone 7と一緒にサンフランシスコのマッケナリーコンベンションセンターでお披露目された。初めてUSのアップルの発表会に行った時なので、よく覚えている。
まだ、iPhoneには有線ヘッドフォンが付属していた時代で、一般的なワイヤレスヘッドフォンは使用するたびにペアリングするのが面倒で、充電方法や、装着方法にもいろいろ課題を抱えていて、ひとことで言えば面倒な存在だった。
ケースにバッテリーを内蔵し、ケースに入れるだけで充電可能にし、ケースを開いた途端にiPhoneに接続される……というパッケージングは非常に衝撃的で、のちに多くのワイヤレスイヤフォンが模倣するようになった。
それ以前のワイヤレスイヤフォンは耳栓のように耳に差し込む形状が多かったが、外にカウンターウェイトに相当する部分をたらすことで、耳に引っかける形状として、耳に負担なく安定して装着できるようになった(とはいえ、耳のカタチは十人十色なので適合しない人もいる)。初代の価格は1万6800円で、「高すぎる」と言われたが、信じられないほど売れて、世界中の人が利用するようになった。
次に衝撃的だったのは、初代AirPods Proで、2019年発売。この小さなボディに、オンにすると急激に世界が静かになるANCを搭載したのが驚きだった。
AirPods 4と、AirPods Pro 2を比べると
AirPods 4では、ついにスタンダードモデルにANCが搭載された。
AirPods 4と、AirPods 4(ANC搭載)と、AirPods Pro 2、それぞれ、どれを選べばいいのだろうか?
結論から言えば、金銭的に余裕があれば、筆者はAirPods Pro 2を買うと思う。
ただ、このAirPods Pro 2、「苦手だ」という人が一定数いる。
理屈上、カナル型とは違って、普通のAirPodsと同じように、カウンターウェイトで耳に引っかける仕組みなのだが、イヤーピースで密閉する構造なので、密着する感じがイヤという人もいる。また、ANCが強烈に効くおかげで、怖いほど静かになる。その密閉感がイヤという人もいる。
筆者は、AirPods Pro 2を使うのは、音声通話と、電車の中などで音楽やPodcastを聞くようなケースが多いので、外の雑音はできるだけない方がいい。当然音楽も会話も聞き取りやすい。ANCがしっかり効くのも怖いタイプではないので、AirPods Pro 2がいいというわけだ。
AirPods 4は、AirPods Pro 2に搭載しているH2チップが搭載されているので、おそらくANC能力には差がないはず。ただ、イヤーピースで密閉されているかどうかで、やはり差が出るのだろう。
余談だが、AirPods Pro(第1世代)は2019年10月発表。(第2世代)は2022年9月発表で、その後MagSafeケース、USB-Cケース、適応型オーディオ会話感知、ヒアリング補助など、さまざまな機能がアップデートとして追加されている。3年サイクルだとすれば、2025年の秋に、新しいH3チップを搭載したAirPods Pro 3が登場することになるのではないだろうか? AirPods Pro 2狙いの人は、それも頭に入れておいた方がいいかも。
AirPods 4ならではの、クリアで解放感のあるサウンド
AirPods 4は、オープンイヤータイプ(いわゆるShokzのように何も耳の穴に入っていない……というのとは違うのだが、アップルはAirPods Pro 2に対して、標準型のAirPods 4のようなのをそう呼ぶことにしたようだ)だから、外の音が多少入る。
それが、よくも悪くもAirPods 4の特徴なのだ。
フィット感も良好。新たに数千人から、5000万ポイントの耳の形状のデータを取得してデザインしたとのことだ。
ただ、耳のカタチというのは実に千差万別なもので、どんな形状にしても耳に入れる限りは絶対に「私には合わない」と文句を言う人がいるから、「AirPodsが合わない」と思っている人は、購入前に一度試した方がいいだろう。「今度は合う!」と思う人がいれば良いが、依然「合わない」と思う方もいらっしゃるだろう。傾向としてはAirPods(第3世代)と同じ方向性。だが、改善されている、という感じだ。
実際に、AirPods 4で音楽を再生してみると、実に心地のいい音がする。
繊細な音も表現してくれるし、音のツヤ感もあって魅力的だ。これは欲しいと思わせてくれる。ANCをオンにすると、周囲の音をスッと抑えてくれるし、外部音取り込みの時の音も実に自然。他社製品のように、デジタルで加工される感じや、ちょっとしたヒスノイズが聞えるようなことはまったくない。実に自然。これこそがAirPods 4の最大の特徴だろう。
自然なサウンドはAirPods 4の最大の魅力だ。これはANCをオフにしても変わらないし、ANCをオンにしてもデジタルでノイズキャンセリングをしている感じは少ないから、周りから隔絶されている感じも少ないし、常に周囲のことをわずかに感じながら音楽を聞くことができる。
会話感知機能もユニークだ。周囲の人と会話を始めて、自分が声を発すると、それを感知して音楽のボリュームが下がる。会話が終わると4秒(筆者の体感)ぐらいかけて、滑らかに音楽が元のボリュームに戻る。すべてが、アップルならではの「魔法」に包まれているといえる。来年、Apple Intelligenceがローンチされれば、iPhoneに指示するための音声デバイスとして、AirPods 4はさらに手放せないものになるだろう。
極端にノイジーな場所で聞くことが多くないならAirPods 4がお勧め
先行レビューの多くも、このAirPods 4の自然なサウンドと、ANCの効きに感銘を受けたものだったように思う。
では、AirPods Pro 2と比べるとどうなのか?
静かな場所で聞くなら、AirPods 4の方が自然な感じがして快適だと思う。繊細な音も聞こえて、デリケートな音楽も楽しめるように思う。
しかし、混雑した電車の中のような、雑音の多い場所で試してみると、AirPods Pro 2のノイズキャンセリング性能の高さが際立つ。やはり密閉されているというのは効果が大きいのだ。比較的普通の場所でAirPods 4を試すと、それなりにキャンセリング性能を感じるのだが、雑音の音量の大きい場所に行くと、すき間から入ってくる音を感じるので、必然的に音楽のボリュームを上げることになる。
もちろん、通常のイヤフォンや、ANCとオフにした状態のAirPods 4と比べれば、格段に性能は良いのだが、AirPods Pro 2の方がさらに数段上ということになる。
どちらを選ぶかは、利用環境と好みの問題
つまり、AirPods 4か、AirPods Pro 2を選ぶかは、聞く場所の問題ということにある。
電車の中のような極端にノイジーな環境で聞くことが多いなら、AirPods Pro 2の方がいい。イヤーピースのおかげでフィット感が強く、落下の危険が少ないという意味でもお勧めだ。また、雑踏で電話に出ることが多いような人も、こちらの方が良い。相手の声が聞こえやすいので、圧倒的に会話しやすい。ただし、3万9800円という価格は、落下しがち、紛失しがちなデバイスには少々高すぎると思うが。
そこまでノイジーな環境でないなら、AirPods 4の方がナチュラルな装着感で、自然なサウンドを楽しめると思う。単に、価格が安いということではなく、圧迫感なく音楽を楽しめるチョイスとして、AirPods 4は非常に優れていると思う。
ANCなしのモデルは、2万1800円という価格でAirPods 4のサウンドを楽しめるという意味では価値はある。しかし、非接触充電もなければ、『探す』機能もないので、8000円の差……と思えば、ANC付きを購入した方がトータルでの満足感は高いと思う。一度紛失したのを『探す』機能で発見できれば、元は取れるというものだ。
ちなみに、ANCなしのケースは、『探す』機能に非対応なので、底面の穴がないのが特徴だ。本体には外見上の違いはない。
(村上タクタ)
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