インク人気に連動して熱く盛り上がり続けるガラスペンブームに、エポックメイキングな製品が加わる。2022年12月初旬に受注が始まる「MAROW(マロウ)江戸切子ガラスペン」は、繊細で優雅な文様をガラスに刻む伝統工芸「江戸切子」をまとった特別なガラスペンだ。
伝統工芸と特殊硝子技術を組み合わせる
「江戸切子ガラスペン」の旗振り役は、東京・江東区大島にある1949(昭和24)年創業の安中特殊硝子製作所。業界の垣根を越えて、自社が持つ特殊硝子技術を組み合わせるプロジェクト「MAROW(まろう)」シリーズを企画し、その第一弾としてこのガラスペンを作り上げた。「MAROW」という名は、研ぎ磨くことを意味する日本語の「磨礱(まろう)」に由来し、「日本の研ぎ澄まされた技術を生かす製品を世に送り出し、これからも研鑽し続けていきたい」という熱い思いが込められている。
製造には東京都江東区と墨田区に拠点を持つ3社の力を結集。軸のガラスを成型し、切子加工ができるよう研磨する工程を安中特殊硝子製作所が行い、江戸切子の工程を根本硝子工芸、ペン軸のひねりとペン先の成型溶着を竹内製作所が担っている。
江戸切子界の雄・根本硝子工芸の一流技をまとう
江戸切子は江戸時代後期に始まり、日本独自の美意識のもとで100年以上にわたって発展してきた高級カットガラスだ。人の手作業でひとつひとつ文様を刻んだガラス製品は世界に誇る名品であり、東京都および経済産業大臣指定の伝統的工芸品に認定されている。現在50以上の事業所・100人以上の江戸切子職人がいる中で、東京・亀戸にある根本硝子工芸の代表を務める根本達也さんが「江戸切子ガラスペン」に切子を施している。
「江戸切子といえば、根本さん。江戸切子界では知らない人のいない、圧倒的な技術で作品を生み出す一流の方です。人柄もすばらしい。昔からお付き合いをいただいている憧れの根本達也さんにガラスペンへの切子を依頼したところ、気持ちよく快諾してくださいました。本当に光栄です」と安中特殊硝子製作所の代表取締役社長、志田和海さんは目を潤ませて語る。根本硝子工芸は通常このような依頼を引き受けることはほぼないが、これぞ下町の人情、人と人とのつながりが夢のコラボレーションを実現させた。
根本達也さんの父である故・根本幸雄さんは、「東京マイスター」や「現代の名工」、さらには江戸切子界で初めて「黄綬褒章」を受章した名人。2代目である現社長の達也さんも、先代の信念と技術を受け継ぎながらさらにオリジナリティを追求し、繊細さとダイナミックさを併せ持つ優れた作品を生み出している。達也さんの息子であり3代目の根本幸昇さんは、伝統を受け継ぎつつ新たな挑戦を続ける江戸切子界の求道者だ。親子ともに一流の腕を認められ、世界中の著名人を顧客に持ってアートとしての江戸切子を追求している。
研ぎ澄まされた技と経験による精緻で表情のある「菊繋ぎ文」
ガラスペンの軸の一面には「菊繋ぎ文」という文様が施されている。10種類以上ある江戸切子の代表的な伝統文様のひとつで、細かなカットの交差が「不老長寿」を意味する菊の花の連なりに見える吉祥文様だ。幾重にも直線を重ねることでガラスの屈折率が上がり、光を受けるとキラキラと輝く様は息を呑むほどに美しい。
「菊繋ぎ文」は伝統文様の中でも作り手のセンスや技量が顕著に表れるという。8本の直線を中心に同じ深さで均等に交差させないと正確な交点が出ず、「菊の花が美しく咲かない」。それをペン軸という細い面の中央に花が連なるように連続させるのは、非常に集中力を要する作業だ。透明無垢なガラスを使うため、色付きガラスより丁寧に、繊細にカットを施さねばならない。
さらに今回のガラスペンは、切子を施した後で軸をひねるために熱を加える工程がある。そこで表面が溶けても適度なエッジが残るよう、かなり深く彫ることができるダイヤモンドホイールを使っている。オールドファッショングラスなどに比べてガラスの厚みがあるため、ある程度の深いカットには耐えるが、カットが深すぎるとひねる際にヒビが入り、折れてしまう恐れがあるという。ここにも技術と配慮を必要とする。
軸とペン先の仕上げを担う竹内製作所の卓越した職人技
根本硝子工芸で切子を施した軸は、東京・両国にある竹内製作所に移され、艶と光沢を出すための「ファイヤーポリッシュ」を施した上で、デザインに合わせて軸にひねりを加える。この工程も非常に難易度が高く、多様な加工技術を知る竹内製作所の竹内信夫さんでなければ実現しなかった。竹内さんは国内外のメーカーから依頼を受け、アイデアを含めたさまざまな要望に応え続けて50年の実績を持つガラス制作のスペシャリスト。他業界向けの製品作りにも応じながら、2022年1月からはガラスペンやアクセサリーの自社ブランド「clarto(クラルト)」もスタートさせている。
「ファイヤーポリッシュ」で艶と輝きを増した軸は、切子のきらめきを堪能することができる。ねじりを加えた角軸は心地良く手になじみグリップしやすい。
さらに注目したいのが、竹内製作所で作られ軸に溶着するペン先の精度だ。先端に平らな面を作らず、なだらかな山型が全インク溝にシームレスになるよう研磨されており、先端でも、かなり寝かせて書いても、非常になめらかな筆感を味わうことができる。インクフローも驚くほど均一で途切れない。書き味の良いガラスペンしかもう使いたくないというガラスペン上級者も、満足すること間違いなしの優れたペン先を備えている。
素材のガラスには作り手にしか感じ取ることのできない微妙な表情の違いがあり、各々の状態を見極めてカットを施したり、ねじりを加えたりする必要がある。昔ながらの分業で何人もの職人が関わり、それぞれの手作業ならではの微妙なゆらぎを積み重ねて完成するガラスペンは、量産品にはない微妙なゆらぎと柔らかさをも宿している。
組み合わせを選べる6モデルを用意
ガラスペンのサイズは全長約152mmの「ショート」と全長約178mmの「ロング」がある。デザインも2種類で、全体をゆるくひねって菊繋ぎ文をなめらかな曲線で愛でる「HINERI-Type F-」と、グリップ部をしっかりねじり、軸の後半はストレートラインで菊繋ぎ文を味わう「HINERI-Type H-」がある。ロングサイズは「HINERI-Type F-」のみ。ペン先はインク溝をまっすぐ仕上げた「ストレート」とねじった「ツイスト」の2種類。字幅も中細字と太字がある。
【商品情報】
LINE UP 「MAROW 江戸切子ガラスペン」
ロング HINERI-Type F-
ペン先ストレート/ツイスト:税込110,000円
(全長約178mm・重量約46g)
ショート HINERI-Type F-
ペン先ストレート/ツイスト:税込77,000円
(全長約152mm・重量約38g)
ショート HINERI-Type H-
ペン先ストレート/ツイスト:税込77,000円
(全長約152mm・重量約38g)
販売形態は当面の間、MAROWのECショップ( https://marow.buyshop.jp/ )からの受注生産のみとなり、2022年12月初旬から受付を開始。受付から約1か月後に順次発送を予定している。
【問い合わせ】
公式ウェブサイト https://marow.tokyo/
support@marow.tokyo
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