芯や木軸を削るのが面倒な理由で、鉛筆は敬遠されることが多い。また削っていくと短くなって長さが可変することも鉛筆の弱みだ。この鉛筆の弱点を解消する道具がある。それが「芯ホルダー」だ。
一般的な鉛筆とほぼ同じ直径2mmの芯を使うのが「2mm芯ホルダー」。極太の芯を使うホルダーがあるが、最も一般的なのが2mm芯だ。硬度やカラー(赤、青など)なども多彩に揃っている。元来は製図のプロ向けだったので、デザインに無駄がなく、シンプルな設計でとても堅牢だ。
2mm芯ホルダーの象徴的なモデルが、ステッドラーの「マルステクニコ芯ホルダー 780C」だ。ロングセラーだが、確かな資料がなく発売開始年は不明。2009年に編集部が問い合わせをした時のステッドラーからの回答は以下のようなものだった。
「残念なことに正確な年代をご案内できませんが、1969年のカタログに芯ホルダー780Cの最初の写真を見つけました。780Cではなく、780と呼ばれているように、当時はクリップがありませんでした(C=クリップを表す)」。
1969年の資料や日本のカタログなどを見てみると、当時の芯ホルダーは780だけでなく、多種多様に揃っていたことがわかる。軸の素材、芯削りの有無、硬度表示の有無などバリエーションがたくさんあった。
780Cの魅力は機能美に表れている。芯ホールドの構造は巧妙で確実に芯を固定する。ノックボタンを押すと無段階で芯の繰り出し量を調節できる。グリップは美しいローレット加工で確実に握ることができる。また低重心設計で長時間の筆記でも疲れない。芯を削るのも簡単で、小型の芯研器があればほんの数秒で先端を鋭角にできる。
780Cは半世紀を軽く超える古いモデルにはまったく見えない。その価値はデジタル全盛の今だからこそ、より高まっている。デジタル漬けな日々の中で、素朴で確実な鉛筆芯でゆったりと書く時間も大切にしたい。
※参考資料「STATIONERY magazin no.005(2009年発行/枻出版社)」
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