こだわる人のバイカースタイル。「タイムズアーチェンジン」代表・春原 勉さん

Tシャツにジーンズといったシンプルなスタイルでもバイクに乗っていると不思議とかっこよく見える。モーターサイクルにはそんな魅力があり、それがヴィンテージのアメリカンバイクとなるとことさら。今回は群馬の名店「タイムズアーチェンジン」のオーナーである春原勉さんのスタイルから、その謎を紐解いていこう。

ショップと共に歩んできた大事な相棒なんです。

「タイムズアーチェンジン」代表・春原 勉さん|1970年生まれ。群馬県出身。21歳の時に初めてアメリカに渡り、ヴィンテージのバイイングを経験。1996年にタイムズアーチェンジンをオープンした

群馬を代表するセレクトショップであるタイムズアーチェンジンは春原さんが自らアメリカで買い付けてきたヴィンテージやグッドレギュラーに、国内外の実力派ブランドが織り交ぜられ、なんとも魅力的なラインナップになっている。そんな春原さんのルーツのひとつとなっているのが、アメリカのモーターサイクルだ。

「パンヘッドに乗りたかったから独立したんです(笑)。だから相当な思い入れがあって、創業時から25年以上乗っていますね。当時は今のように情報もなければ、カスタムのスタイルも確立されていなかったので、VHSでヘルズエンジェルスの映像をビルダーと夜な夜な観て、手探りでカスタムしました。

一方のインディアンは、自分の中で創業20周年の節目を迎えたこともあって、2017年頃に購入しました。これは街乗りがメインで、キビキビと動いてくれます。

バイクは用途だけでなく、乗る時のスタイルも自分の中では分けていて、洋服も楽しんでいます。

チョッパーだと遊び心のあるスタイル、ボバーだと無骨なミリタリーやワークがよく似合う。その車両やカスタムの背景を考えながら、洋服を選ぶのも、バイク乗りの一興ですね」

春原さんの自宅に併設するガレージは、ヴィンテージのモーターサイクル関連のアイテムからサーフボード、マウンテンバイク、パウダーサーフィン、フィッシング道具まで趣味の遊び道具がパンパンに詰まっている。ヘルメットはレアモデルばかりだが、安価で手に入れた

春原氏が心を寄せる、時代を超えた逸品たち。

ヴィンテージで探すとなかなかないインディアンのオフィシャルTシャツ。こちらは’90年代のメイドインUSAボディで、タグにもインディアンのネームが入っている。9980円

ハーレーの純正アクセサリーではないが、’70年代のデニムを用いた珍しい素材使いのモーターサイクルパンツ。この手のものはレザーが多いので、カジュアルに穿けるデニムは希少だと言えるだろう。2万7280円

アメリカを代表するプラグメーカーであるチャンピオンのアドバタイジング。ドルマンスリーブのようなユニークなデザインは化繊を使っており、ショルダー部分にはチェッカーフラッグ。おそらく’80sだ。7980円

1950〜’60年代にかけて作られていたハーレーの純正ヘルメットは、名門であるマックホールが生産を担当していたため、コレクターズアイテムになっている。内装もすべてオリジナルでスペシャルだ。17万3800円

ヴィンテージ市場でも人気の高い’50年代のエンジニアブーツは、コンディション、サイズともに良好。シャフト部分のエイジングが美しく、ヴィンテージらしいシャープなフォルムだ。6万4900円

オフィシャルでリリースされていたヴィンテージのハーレーステッカーもデッドストックで発掘。豊富なバリエーションがあり、中にはパッチも混ざっている。値段も手頃なのが嬉しい。1200〜1980円

ハーレーTシャツではめったに出てこないブラウンカラーのボディがおもしろい。背面にはクラシックなイラストやハーレーとともに、カンザス州ダッジ・シティのディーラーがプリントされている。’90年代のオリジナル。8980円

1984年にラジオ局が主催したポーカーランというイベントのTシャツ。両袖にハーレーのロゴマークが入っているので、オフィシャルで協賛したバイクイベントだったのだろう。トランプのプリントが◎。8980円

1938 INDIAN MOTORCYCLE SPORT SCOUT|オールド感溢れるインディアンの名車をボバーに!!

世界恐慌によりインディアンの経営が傾いていた際に、起死回生の策として、1934年にリリースされたスポーツスカウト。現車はアメリカにてストック状態で見つかった1938年式の個体で、春原さんがパーツをストリップしてボバースタイルに。ペイントは’50〜’60年代に再塗装されたようでいい雰囲気に。パフォーマンスモデルなので、クイックに走る。

インディアンの代名詞であるサイドバルブエンジンは、名車スカウトをベースにハイパフォーマンス仕様にカスタムされている。エアクリーナーのカバーも含めて、純正パーツで構成されている。

スピードメーターは、インディアンの純正品で1939年のものが使われている。オリジナルの6V仕様のまま走っているが、これといって不便はないそうだ。

スポーツスカウト用の純正リンカートキャブレターM641など、オリジナリティが高いのも魅力。スポーツスカウトは現存数が少なく、本家アメリカでも今や珍しい存在。

ボバーに乗る時は、車両の雰囲気に合わせて、よりラフで無骨なスタイルに。Tシャツは敬愛するグレイトフル・デッドで、パンツはウエアハウスを着用。

1962 HARLEY-DAVIDSON PANHEAD|見様見真似で仕上げた思い入れのあるチョッパー!!

春原さんが1996年に独立した際に、思い切って購入したというハーレーのチョッパー。映画『イージー・ライダー』に感化されたため、どうしてもチョッパーに乗りたく、夜な夜なアメリカのカスタムバイクをVHSで学習し、ビルダーと二人三脚で仕上げたそう。数年ごとに外装の一部は替えているが、基本的なフォルムは変えていないそうだ。

1948年にナックルヘッドの後継としてデビューしたパンヘッドは、シリンダーヘッドがアルミに変更され、オーバーヒートに対する信頼性が飛躍的にアップした。1965年まで生産され、人気が高い。

ほとんど純正パーツを使っていないが、オイルタンクはオリジナルを使用している。そこに春原さんらしいステッカーカスタムを施しており、アメリカの西海岸らしいセレクト。

ハンドシフトのノブには、フォルクスワーゲンなどでよく使われているカスタムパーツであるハーストを使っている。実際に握りやすく、見た目も良いので一石二鳥。

タンクは’60〜’70年代頃のスポーツスターのものをチョイスしている。ペイントは西海岸らしいチョッパーのカラーリングをイメージしたそう。スレやサビが出ていて、いい雰囲気に。

パンヘッドに乗る時は、遊び心を利かせたスポーティなコーディネイトに。トップスはなかなか見つからないビッグサイズのヴィンテージフットボールTで、ボトムはカーハートのダブルニーパンツだ。

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning 2024年7月号 Vol.363」)

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

Pick Up おすすめ記事

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...