複雑ながらも長い歴史のあるクライスラー300がまたも生産終了

かつてはアメリカ3大メーカーのひとつに君臨していたクライスラーのフルサイズカーとして存在していたのがレターシリーズと言われるクライスラー300。クライスラーがステランティスのひとつのブランドになった現在も4ドアセダンとして継続していたけれど、2023年モデルで生産終了に。じつはこのモデルはちょっとややこしい歴史があるので、ファンにとってはまたも生産終了? という話。そんなクライスラー300にちょっと詳しくなってみようか。

パーソナル・ラグジュアリーカーとして生まれたフルサイズモデル。

現在のクライスラー300の歴史を紐解くと、1955年に誕生したクライスラー300がその元祖。これはクライスラーがパーソナル・ラグジュアリーカーとして開発したフルサイズモデルで、高級感だけでなくパフォーマンスでもライバル車を圧倒するスペックを持って生まれた。

このモデルは2世代目から300の後にアルファベットが付くカタチで進化し、1965年まで続いたが、その後300の名前はフルサイズカーからは消え、1999年にダイムラークライスラー時代に後継モデルである300Mが登場し、2005年から新生クライスラー300になり現在に至るというやや複雑な歴史を辿っている。

ただ、現在でも高級にしてハイパフォーマンスなクルマというイメージは受け継いでいる。

純粋にクライスラー300といえば、アメリカでは1955~1965年式、2005~2023年式と言われている。

1955~1965年。レターシリーズと呼ばれるフルサイズ・クライスラー。

1955年、戦後の好景気によってクルマが次々と高級、ハイパフォーマンスへと進化したアメリカ。当時高級ブランドとして存在していたクライスラーもキャデラックやリンカーンに対抗するパーソナル・ラグジュアリーカーを開発。それがクライスラー300の登場だった。車名の由来は300馬力を誇るV8エンジンを搭載していたことがその理由で、当時存在していたクライスラーのフルサイズカーだったニューヨーカーの上位モデルとして登場し、2ドアクーペのみのボディで生まれた。

その後、2世代目は300B、3世代目は300Cと、300の後ろにアルファベットが各世代で順番に付いていったことで(「AとI」は存在しない)、レターシリーズと呼ばれるようになった。

巨大なボディにハイパフォーマンスなエンジン、そして高級感のある内外装を持った富裕層に向けたモデルとして1965年まで生産された。

4世代目となる1958年式クライスラー300D。他のアメリカ車同様、巨大なテールフィンがリアにデザインされた。Photo by Stellantis
レターシリーズの最終モデルになった1965年クライスラー300Lコンバーチブル(10世代目)。角目のヘッドライトベゼルの中に丸目4灯が入ったマスクが特徴的。1960年代らしく直線基調のデザイン。Photo by Stellantis

1999~2004年。ダイムラークライスラーで復活した300のモデル名。

ダイムラークライスラーの下で新たに開発されたフルサイズ・ラグジュアリーカーに伝統的なモデル名を復活させることで登場したクライスラー300M。当時存在したダッジ・イントレピッドと共通のプラットホームで生産され、4ドアセダンのみのボディで登場した。

ただ、34年振りのレターシリーズの登場だったが、搭載するエンジンがV6のみだったことと、駆動方式がFFだったことで、歴史のある300とはまったく違う名ばかりの300だというイメージを払拭できなかった。

2005~2010年。V8エンジンもラインナップしたFRモデルとして生まれた新生300は300Cの名前で登場。

2005年にフルモデルチェンジした300はメルセデスベンツEクラスのコンポーネントを共有することでFRの4ドアセダンとして生まれ変わった。車名はかつてのレターシリーズの第3世代にちなんで300Cとなる。

注目すべきは歴史ある300に敬意を払ったのかは不明だが、Mまで行ったレターがCに戻るというこれまたややこしいことに。そのおかげか、ハイパフォーマンスなV8エンジン搭載モデルも登場。先代の300Mとはガラリと変わる性格に生まれ変わって、歴史的な300のDNAを感じる仕上がりになっている。

さらに北米市場以外(ヨーロッパやアジア)ではセダンだけでなく4ドアワゴンも生産された。これは北米市場には同じプラットフォームで生産される4ドアワゴンのダッジ・マグナムが存在していたため。

2011~2023年。現行モデルは新生300の2世代目。300ツーリング、300リミテッド、300Cと違うグレードに分かれた。

クライスラーがオランダのステランティス傘下の1ブランドとなったクライスラーから、ランチア・テーマと共通のコンポーネントになって300は生産された。

歴史的なハイパフォーマンスで高級なモデルというコンセプトは受け継ぎ、車名からレターも消えてクライスラー300となり、V8エンジン(5.7Lヘミエンジン)搭載グレードが300Cというレターの入った名前に。その他、300ツーリング、300リミテッドというグレードが登場。総じてクライスラー300というのが正式な車名になった。

2023年モデルでは300ツーリング、300ツーリングS、300S V6、300S V8となっていて、Cのレターも消えている。この世代ではクライスラー300史上、最強といえる485馬力を発生させる6.4L V8エンジン搭載モデルも登場した。

残念ながら2023年式が最終モデルとなり、2024年モデルは発表されていないけれど、この歴史を見るかぎり、またいつか復活してもおかしくないモデルである。

気になる人のための新車情報、サイズ感も。

残念ながら現行モデルはアメリカでも在庫のみ、日本で新車は正規販売されていない。ただ日本での正規輸入は2017年まで存在した。アメリカには存在しないワゴンモデルや、オーストラリアで生産された右ハンドルモデルが正規輸入で入っているので、中古車市場で好コンディションのモデルに出会えれば十分に今でも楽しめるモデルだ。

アメリカンフルサイズといっても、過去のメルセデスのEクラスや現在もランチア・テーマと共通プラットフォームのおかげで巨大な車格ではないので、日本車からの乗り換えもそれほどハードルは高くない。2023年モデルのカタログスペックで全長5044mm、全幅1908mm、全高1483mmと国産車の大型セダンと変わらない車格。これでV8エンジンを搭載していれば速いに決まっている。

もちろん往年の1965年までのクラシック300はかなり巨大なボディなのであしからず。

この記事を書いた人
ラーメン小池
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ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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