時を経た名品はまさに「身に纏うアート」。ヴィンテージアロハシャツの市場価値は?

  • 2023.10.28

Lightning読者には馴染みの深いアロハシャツ(ハワイアンシャツ)。レアアイテムの減少や定期的なブームもあってか刻々と変化を遂げるヴィンテージアロハシャツの最新事情はどうなっているのか。本物にこだわりたいファンは必見だ!

その誕生には日本人の 移民が深く関わっていた。

「54broke」owner・成田亘さん|40年以上に渡り集められた貴重なコレクションを販売する東京都・目黒区にある「54broke(ゴーフォーブローク」オーナー。アロハに限らず、フライトJKT、ジーンズ、レザーなどファンも唸るスペシャルアイテムが並ぶ。最新情報はインスタグラムのアカウント (@54_ broke)をチェック

夏のスタンダードアイテムアロハシャツ。まずは改めて歴史をざっくりとおさらいしておこう。

その起源は諸説あるが、19世紀から20世紀にかけてハワイに移住した日系移民が深く関わっていることは間違いなさそうだ。ちなみに「ハワイアンシャツ」という言葉は1927年に中国系移民のエラリー・チャンがマーケティングのために作った造語で、’36年「アロハシャツ」として登録商標したという経緯を持つ。

最初期にあたる’30年代には日本から輸入した和柄の生地が多かったようだが、第二次世界大戦により一時中断。戦後になると再び日本の生地が使われるようになったほか、ハワイ州内、さらに本土のカリフォルニアやフロリダのスポーツウエアメーカーもこぞってアロハシャツを作るようになる。そして、その特徴はなんといっても絵画的なデザインにある。

「ヴィンテージでも名品として人気なモノは『着るアート』と言えます。特に時を経て味の出たヴィンテージは、着るだけでなく額に入れて飾るのもいいですよ。そしてまた、ハワイアンアイランドを着る感覚で楽しんでほしいです」

とは、ヴィンテージファンの間では知られる「ゴーフォーブローク」の成田亘さん。

昨今は価格の高騰が激しく 素人には参入しづらいかも。

メンズウエアの中でも一際異彩を放つポジションに位置するアロハシャツ。ヴィンテージの名作の多くが復刻されていることもあり、復刻されていない名品を探すのは至難のワザとなった。さらに、価格の高騰もあって素人にはとても参入できないジャンルになったがそれでも「本物」にこだわるファンが多く市場は活況だそう。写真左は1950年代のハワイアンミュージカルという柄(11万8800円)で、右は1950年代のシュガーケーン×マウンテン柄(16万2800円)

アロハを語る上でぜひ知っておきたいのがデザインパターンだ。最初期の’30年代から見られる「オールーバー(総柄)」、’40年代後期から見られる「ボーダー」、’50年代から登場する「ホリゾンタル」、ほかにも「バックパネル」、「ピクチャープリント」、「和柄」などに分類できる。

生地も特徴的で、~’40年代まではシルクやコットン、’50年代はレーヨンやコットン、’60年代はポリエステル・コットン・コンポリ素材が主流となってくる。

自身も40年以上のコレクター歴を持つ成田さん曰わく、アロハシャツの黄金期は「’40年代後期~’50年代」だそう。ただ、黄金期はもちろん、それ以降のモノですら最近は球数の減少から価格の高騰が激しく手が出しづらい状況。

「年々高騰しているような状況ですね。10年前と比べて倍以上になっているかもしれません」

現在は「サンサーフ」をはじめ、国内外の多数のブランドが名作と呼ばれるアロハシャツの復刻を手がけているので、復刻されていないレアな作品を見つけるのはさらに至難のワザだ。よほどのファンでなければ復刻品を購入するのが得策だろう。

「でも、やはり本物が持つ雰囲気は別物。本当に価値のわかる人に所有してもらえたら嬉しいです」

アロハシャツに見られる代表的なデザインパターン。

ボーダー

一定の幅に描かれた柄を組み合わせたボーダーパターンは1940年代後期から見られるもの。基本的にアロハシャツに見られるボーダーは縦が一般的で横は割とレア。

1950年代。ウクレレとハイビスカスなどの植物をあしらったボーダーパターンの長袖シャツ。袖が特徴的で前面はシンプルに無地で、腕の背面には前面より大きなウクレレが描かれている。色合いや柄のバランスなどオシャレ。21万7800円

バックパネル

’50年代以降本土のメーカーによって誕生。前面はシンプルで背面にアーティスティックな絵画をあしらうのが特徴。他にも写真を使った「ピクチャープリント」もある。

正面は無地だが背面にはハンドペイント風?のタッチで描かれる美しい女性や漁をする男性、鳥、花といった旧きよきハワイの風景が描かれたアーティスティックな1枚。1950年代製。若干裾がカットされカスタムされた跡がある。14万800円

オールーオーバー

いわゆる総柄。全面に柄をプリントしたものでアロハシャツ最初期となる1930年代はこのオールオーバーパターンが主流だった。絵柄の配置やデザインも様々ある。

チリメンレーヨン素材で作られたオールオーバーパターン。1950年代製。夜の海と松明を焚いて魚を誘きよせる昔ながらの漁を描いた1枚で、美しい色合いが特徴的。左胸にはポケットがあしらわれているが、柄合わせになっているなど完成度も高い。5万4780円

ホリゾンタル

1950年代から見られるパターンで、裾部分を水平線に見立て、シャツ自体が1枚の絵になるように描かれたデザイン。色使いも派手でインパクトのあるモノが多い。

フロリダにあるロイヤルパームスポーツウエアによるヤシの木のホリゾンタルパターン。レーヨン製で1950年代初頭と思われる。ハワイのブランドが手がけたモノとは一味違う淡い色合いと絶妙な柄の配置が美しい。ASK

市場価格を知る!

ジーンズや革ジャンなどと同じく、アロハシャツも状態のいい品が少なくなってきたこともありヴィンテージ市場での価格も高騰する一方。10年前に1万円切っていたモノが今では数万円、復刻されておらず、アメリカの資料本などに掲載される「オンブック」と呼ばれるレアアイテムは数十万円の値が付くこともザラ。また、最近ではタグまで実名復刻された復刻品がヴィンテージとしてネットで高値で売られていたこともあるので、ネットで購入する場合は真贋を見極める知識と目利きも必要。

【1950年代】メーカー不詳

ボーダーとホリゾンタルをミックスしたようなパターンだが、注目すべきは胸のラインがアーチ型になっていること。数多くのレアアイテムを目にしてきた成田さんをしても「このあり得ない柄の配列に度肝を抜かれました! この柄のシャツは数枚所有していましたが、 こんな配列は見たことないです」ASK

【1940年代】POLYNESIAN Sportswear

海外では人気の高い和柄シリーズ。こちらは満月の月明かりに照らされる金閣寺を描いたもの。素材は和柄に多く見られるチリメンレーヨン。繊細なタッチが美しいレアアイテム。32万7800円

【1950年代】Surfriders Sportswear

ユナイテッドエアライン(UA)のノベルティグッズとして作れた1枚。他にもいくつかのデザインパターンが存在しているようだが、どれも現存するものは少ない。アロハファンだけでなくUAファンからも人気が高い。21万7800円

【1950年代】guymont

さまざまな写真をコラージュしたピクチャーパターン。花を摘む美しい女性やハワイと思われる風景に混じって、なぜか沖縄と思われる風景も入っていて、日系移民の人が関わっていたのかなど、作られた背景へにも想いを馳せる楽しみも味わえる。8万5800円

【1940年代】KAHULUI DRY GOODS

着物の生地の影響を色濃く残す’40年代のチリメンレーヨン生地を使った和柄デザイン。広島県の厳島神社とツルが描かれている。マーブル柄の尿素ボタンを使用するなどディテールにもこだわりが感じられる1枚。21万7800円

【1950年代】DUKE KAHANAMOKU

アロハシャツのメジャーブランド、デューク・カハナモクの最高傑作ともいわれる「ココナツパームス&ダイヤモンドヘッド」。ヤシの木とそこから覗くダイヤモンドヘッドを描いたホリゾンタルパターン。復刻もされている人気の柄のオリジナル。しかも、同じ柄のショートパンツも付きというコレクターズアイテム。ASK

【1950年代】ALOHA KANAKA

カリフォルニアのアートヴォーグ社のサーフウエアブランド「アロハカナカ」の1950年代の1品。アート製の高い作品を数多く手がけていてファンからも人気のブランドで、こちらは背面に火の前で踊る「マダム・ペレ」を描いた作品。まさに着るアートと呼ぶにふさわしい仕上がり。ASK

【1950年代】California sportswear

アロハシャツでボーダーといえば縦ボーダーが一般的だが、こちらはレアな横ボーダーパターン。モノトーンで描かれたハワイの昔の風景と、パステルカラーで表現した波柄? の組み合わせ。ショート丈のサイズ感やデザイン的にもロカビリーシャツのように着られていた可能性も? 9万6800円

【1950年代】Lauhala

珍しいキッズサイズ。ハワイ諸島をはじめ、キング・カメハメハの功績などハワイの歴史をポップなタッチで描いたオールオーバーパターン。コンディションも抜群。お子さんやお孫さんへのプレゼントにも。5万4780円

【1950年代】HAWAIIANA

キッズサイズで長袖というレアな1枚。トロピカルな植物やかつての生活様式と思われる姿をしたロコの姿が鮮やかな色合いで描かれたオールオーバーパターン。額装してインテリアにもオススメ。6万3800円

国内外メーカーによって多数の名品が復刻されて買いやすくなったというメリットがある一方で、復刻されていない名品を求めるファンもいることで、価格は年々上昇するばかり。そこまでファンでなければ復刻品が無難かも?

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2023年9月号 Vol.353」)

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

CLUTCH Magazine, Lightning, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

モヒカン小川

Lightning, CLUTCH Magazine

革ジャンの伝道師

モヒカン小川

ランボルギーニ三浦

Lightning, CLUTCH Magazine

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

ラーメン小池

Lightning

アメリカンカルチャー仕事人

ラーメン小池

上田カズキ

2nd(セカンド)

アメリカントラッド命

上田カズキ

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

金丸公貴

昭和50年男

スタンダードな昭和49年男

金丸公貴

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

おすぎ村

2nd(セカンド), Lightning, CLUTCH Magazine

ブランドディレクター

おすぎ村

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

趣味の文具箱 編集部

趣味の文具箱

文房具の魅力を伝える季刊誌

趣味の文具箱 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

CLUB HARLEY 編集部

Dig-it, CLUB HARLEY

ハーレー好きのためのマガジン

CLUB HARLEY 編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部

昭和45年女 編集部

昭和45年女

“昭和カルチャー”偏愛雑誌女子版

昭和45年女 編集部

昭和50年男 編集部

昭和50年男

昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50年男 編集部