【吉祥寺・ハーモニカ横丁】kokoro・伊勢真さんが横丁に向かう理由。

横丁。感度の高い業界人やクリエイターから密かに注目を集める場所だ。SNS全盛のなか小綺麗で洒落たカフェではなく、なぜ彼らは猥雑な横丁へと足を運ぶのか。ヴィンテージショップ「kokoro」代表の伊勢真さんは店のある吉祥寺のハーモニカ横丁を馴染みにしている。昭和の面影を色濃く残す都内有数のしかも比較的密集率の高い横丁へ誘われよう。

「kokoro」代表・伊勢真さん|東京・吉祥寺でヴィンテージショップ「kokoro」を営む。長年、アメリカを中心にヴィンテージウエアのバイイングを行い、買い付けは、年に最低6回以上。日本国内のショップへの卸しも行なう

仕事終わりにフラリと寄れば馴染みの店主たちが心地よく飲ませてくれる。

5本の路地で構成されたハーモニカ横丁。昔ながらに残された飲食店もあれば現代的にモダナイズされたショットバーやカフェなども並ぶ

横丁文化の多くは戦後の闇市の名残りである。のちに作られた横丁も存在することは確かだが吉祥寺のハーモニカ横丁(ハモニカ横丁)のルーツは、焼け野原となり、荒れ野と化した吉祥寺駅前の闇市が始まり。で間違いないと歴史や地理に詳しい先生たちは口を揃えて語る。

入り組んだ細い路地にこじんまりとした個人商店がおよそ100軒並ぶ吉祥寺の北口エリア。このご時世では珍しく、昭和の面影を色濃く残す都内有数のしかも比較的密集率の高い横丁だろう。ハーモニカ横丁、通称ハモニカ横丁とは、間口の小さな店が軒を連ねるサマをハーモニカの吹き口に例えて呼んだことが由来とされている。

ここ数年、東京で住みたい街ランキングの上位に毎年名乗りを挙げるほど人気の街として知られているこの街。都会へのアクセスもしやすく、徒歩圏内に、ほどよく自然が残された井の頭公園。またファッションや飲食店に困らない住み良く便利な街であることが大きな要因として挙げられる。

そんな人気のエリアである吉祥寺でヴィンテージショップ「kokoro」を営む伊勢さん。都内の大学を卒業後、古着業界へと飛び込み早24年弱。いまでも現役のバイヤーとしてアメリカへと渡る。

「もともと卸をメインで買い付けに行っていて、自分のショップを持つ決心をしたのが12年前。吉祥寺にもちょこちょこと古着店はありましたが、高円寺や原宿ほど古着の強いイメージがなく。自分が買い付けてくるヴィンテージウエアのイメージがちょうど合っていたのが吉祥寺だったんです。自宅からも比較的アクセスしやすい場所だったということも大いに関係していますけどね。

ハモニカ横丁に通うようになったのは、吉祥寺の老舗漬物店として有名な清水屋の当代がボクの店に来てくれるようになり、そこから話が弾んでBAR 4328に行くようになったんです。ハモニカ横丁は明朗会計なスタイルが気に入っています」

ハーモニカ横丁に限らず、吉祥寺には馴染みの店がいくつかあると話す伊勢さん。仕事終わりにひとりでフラリと立ち寄ることも少なくない

伊勢さんへの取材をお願いしたのはアメリカへのバイイングから帰国した翌日。夜通しクルマを運転し、多い時で1kmを超える距離を走り、ウエア類を買い付けるという過酷な仕事。疲れ切った身体を癒してくれるのは、大好物のビール。

「でもね、ここ最近、自宅でビールを飲むのを辞めたんですよ。なんとなく。気休め程度のノンアルコールビールは飲んでますけど。メリハリ? 健康的に?()。その分、外で飲むときは、わりととことん飲んじゃってますね。買い付けの時もだいたい2週間ほどアメリカを走り回っているんですけど、その間、夕飯を食べずに代わりにビールのみ。家でもビールを飲んでいたら本当に毎日飲み続けていることになってしまう。だったら日本にいる時だけでも辞めてみようかなと。でも取材ならいつでも飲みますよ()

帰国後の時差ボケの残った身体 でも酒を楽しむことで自然と笑顔がこぼれ落ちる横丁での風景。酒場でのコミュニケーションは伊勢さんの常なのだろう。すべては男女問わず人から愛される彼の人徳に他ならない

伊勢さんのショップから横丁まで徒歩5分ほど。老舗漬物店の清水屋の繋がりから、ちょくちょくハーモニカ横丁で飲むようになった伊勢さん。人との繋がりを大切にする彼の粋な性格は、飲みっぷりの良さを見ているとこっちまで心地よくなってしまう。

イヤらしさもなくナチュラルに行動できる彼のスタイルと笑顔に人としての魅力を感じ、引き寄せられる人が多いのも頷ける。現にハーモニカ横丁で初見の人が気軽に話しかけてこられるのは人の良さの表れ。彼の生まれ持つ才能だろう。もちろん買い付けのために幾度となく通っている海外生活における豊富な経験も大きく左右しているのかもしれない。

単独で飲み歩いても、そのときの店主たちが温かく迎えてくれる横丁。幾度となく通い顔馴染みとなった立ち飲み居酒屋に挨拶がてら酒を飲む
この記事を書いた人
モヒカン小川
この記事を書いた人

モヒカン小川

革ジャンの伝道師

幼少期の革ジャンとの出会いをきっかけにアメカジファッションにハマる。特にレザー、ミリタリーの知識は編集部随一を誇り、革ジャンについては業界でも知られた存在である。トレードマークのモヒカンは、やめ時を見失っているらしい。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

記念すべき第1弾の革をモヒカン小川がプロデュース! AJLP活動報告。

  • 2026.09.01

ALL JAPAN LEATHER PRODUCT。略して「AJLP」なるビッグプロジェクトの活動報告。国産の原皮=地生(じなま)にこだわり、鞣しから縫製まですべてを日本で行う“オールジャパン”に価値を見出し、そのクオリティや魅力を伝えるべく動き出した革のプロたちのリアルドキュメンタリーである。同プ...

上海発・気鋭のアメカジブランド「REAL SIMONS」を知っているか?

  • 2026.08.30

近年アメカジが流行し、大きな発展を遂げている中国。同国で1984年に創業したレザーウエア工場の生産背景を元に2017年に始動したのが「リアル シモンズ」だ。ヴィンテージピースを現代的に再構築した高品質なプロダクトを手がける気鋭のブランドである。 元々は皆さんと同じ『Lightning』の読者だったん...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

「VINTAGE PEANUTS」が約10年ぶりに復刻! 「ウエアハウス」の新作Tシャツ一挙見せ!

  • 2026.09.08

ミクロレベルまで研究し、古着と見間違うほどのプロダクツを現代に蘇らせるウエアハウス。当時の生産技術や時代背景までも丁寧に掘り下げられて完成した服は、限りなくヴィンテージに近い存在だ。そんな彼らが生み出す服こそ、オーセンティックと呼ぶにふさわしい。 装いのアクセントにユニークなTシャツを! ウエアハウ...

Pick Up おすすめ記事

70を超えるレザーブランドが集う! 「Leathers Day TOKYO 2026」が五反田TOCビルで9月26・27日開催!

  • 2026.08.30

雑誌『Lightning』と兄弟誌『2nd』『CLUTCH Magazine』の3誌による、レザー好きのための大規模イベント。4度目を迎える今年は、初の東京会場での開催が決定! 普段なかなか手に取って実物を見ることができないブランドや、このイベントでしか手に入らないアイテムが揃う特別な2日間。さらに...

「VINTAGE PEANUTS」が約10年ぶりに復刻! 「ウエアハウス」の新作Tシャツ一挙見せ!

  • 2026.09.08

ミクロレベルまで研究し、古着と見間違うほどのプロダクツを現代に蘇らせるウエアハウス。当時の生産技術や時代背景までも丁寧に掘り下げられて完成した服は、限りなくヴィンテージに近い存在だ。そんな彼らが生み出す服こそ、オーセンティックと呼ぶにふさわしい。 装いのアクセントにユニークなTシャツを! ウエアハウ...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

上海発・気鋭のアメカジブランド「REAL SIMONS」を知っているか?

  • 2026.08.30

近年アメカジが流行し、大きな発展を遂げている中国。同国で1984年に創業したレザーウエア工場の生産背景を元に2017年に始動したのが「リアル シモンズ」だ。ヴィンテージピースを現代的に再構築した高品質なプロダクトを手がける気鋭のブランドである。 元々は皆さんと同じ『Lightning』の読者だったん...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。