フルサイズジープ(ワゴニア、チェロキー、グランドワゴニア)というSUVの源流。その系譜を追ってみる。

ジープといえば車高が高く、ショートボディのスパルタンなクルマを想像する人がほとんどだけど、ジープの歴史にはその走破性の高さはそのままに、居住性を高めてタウンユースを前提とした大きなワゴンボディのジープが存在する。それがジープ・ワゴニアに代表されるモデルたち。

今、それらはフルサイズジープと呼ばれ、クラシックモデルは高値安定。さらには次世代フルサイズジープも登場し、その歴史が再び注目されている。

ワゴニアの復活でクラシックなフルサイズジープも注目株に。

そもそもジープは高い車高とショートホイールベースの4輪駆動によって高い悪路走破性を持っている高機動車両としてウィリス社から生まれたモデル。軍での需要や、山林などのパトロール車両、それにオフロードレースなど、使用環境に特化したクルマとして名高いけれど、高い走破性を持ったタウンユースとして開発されたフルサイズ(大きなボディ)モデルも存在する。

かつてのスパルタンなジープが現在のラングラーのご先祖様だとすれば、タウンユースとして開発されたジープは、チェロキーやグランドチェロキーのご先祖様。それらは愛好家の間でフルサイズジープとか、SJプラットフォームで生産されていたことからSJジープなどと呼ばれ、濃いファンの間で変わらず人気を誇っているクラシックジープのひとつとなっている。

まさに今でいうSUVの元祖ともいえるのがフルサイズジープなのだ。

おもしろいのは、当時のフルサイズジープは製造権(親会社)が次々と変わっていった歴史があるなかで、基本構造を変えずに1990年代まで生き延びたこと。

2022年にフルサイズジープの代表的モデルだったワゴニア&グランドワゴニアがラグジュアリーなジープとして復活したことで、クラシック・フルサイズジープが再注目されることになった。

今ではフルサイズジープのクラシックモデルは高値安定で、アメリカだけでなく、ヨーロッパや中東、それに日本など、世界中で見直されているのがおもしろい。そんなフルサイズジープの歴史を振り返ってみる。

その始まりは高い走破性を持ったステーションワゴン。

photo by Stellantis

趣味やライフスタイルの多様化にともなって、ジープ本来の高い走破性を持った人も荷物も運べるワゴンボディとして生まれたのがフルサイズジープ。その始まりは1963年に登場したカイザー・ジープ・ワゴニア。

当時はウィリス社から製造権を引き継いだカイザー社から登場した。英国でレンジローバーが生まれたのが1969年だったことを考えると、当時としてはかなり先進的なモデル。まだまだアメリカ車が世界の自動車業界をリードしていた時代だ。

ジープはウィリス、カイザー、AMC、クライスラー、ステランティスとマニュファクチャーが変わりながらも変わらず生産されている希有な車種でもある。

ボディデザインはブルックス・スティーブンス。初代は丸目2灯(グリルの左右にあるのはライトではなく飾り)で幅の狭いフロントグリルだった。1966年にはAMCのV8エンジンを搭載し、エアコンなどを標準装備、さらにはセパレートシートのフロアシフト(通常はベンチシートでコラムシフトだった)を採用したスーパーワゴニアが誕生する。このモデルはラグジュアリーSUVの先駆けだった。

写真は1963年式カイザー・ジープ・ワゴニア。

ピックアップモデルも存在した。

photo by Stellantis

同じプラットフォームを採用してピックアップモデルのJシリーズも生産された。これは1963年式カイザー・ジープ・J-200グラディエイター。

4WD(2WDもチョイスできた)のピックアップトラックは当時としては珍しい存在だった。さらにワゴンボディでサイドが窓ではなく、鉄板のパネルになったジープ・パネルデリバリーもラインナップされた。

高級車としての地位を確立し、スーツで乗れるジープへと成長。

photo by Stellantis

サイドにウッドパネルを配して高級感を強調したスタイルは、荒々しいモデルがスタンダードなジープのなかにあって、カントリー・ジェントルマンの雰囲気が漂っている。

まさにスーツでも乗ることができるジープ。ボディパネルなどの基本構造に変更は無いが、この年代は縦スリットの入ったグリルへとマイナーチェンジしている。

写真は1969年式カイザー・ジープ・ワゴニア。カイザーでの製造は1970年までだった。

ワゴニアのスポーツモデルとして生まれたチェロキー。

photo by Stellantis

1970年からジープの製造権はAMC(アメリカン・モーターズ・カンパニー)に移行。1974年にはそれまでのワゴニアを2ドア化し、メッキパーツなどを少なくしたスポーツモデルとしてチェロキーが誕生(1977年式から4ドアモデルも追加された)して、ワゴニアと併売される。

チェロキーはそれまで存在したジープ・コマンドーの代わりに投入された。今ではコンパクトな車格のチェロキーも、デビューは堂々としたフルサイズだったことは意外と知られていない。フルサイズチェロキーが生まれた当時は、フォード・ブロンコ、シボレー・ブレイザー、インターナショナル・スカウトなど、ライバルブランドにも2ドアの4駆を積極的に展開。レジャーにも使い勝手が良い4WDが若者たちを中心に人気だったこともその背景にある。

写真は1975年式AMCジープ・チェロキー・チーフ。

マイナーチェンジを繰り返し生産され続ける。

photo by Stellantis

同年代のチェロキーが縦スリットのグリルだったのに対し、ワゴニアは1974年式からターンシグナル(ウインカー)を格子状のグリル内に配置したフロントマスクへとマイナーチェンジ。

このスタイルは1978年まで継続された。写真は1975年式AMCジープ・カスタム・ワゴニア(カスタム・ワゴニアはボディサイドのウッドパネルが幅の広い仕様になっている)。

時代の流れで角目マスクにマイナーチェンジ。

photo by Stellantis

1979年からノーズ部分が張り出した直線ラインのフロントグリルに角目ヘッドライト仕様へとマイナーチェンジ。ボディのウッドパネルも標準で幅の広いデザインになった。

新たなグレードとして高級感を持たせたワゴニア・リミテッドが登場したが、基本的なスタイルは初代から変わっていない。写真は1979年式AMCジープ・ワゴニア・リミテッド。

チェロキーも同様に角目へとマイナーチェンジ。

photo by Stellantis

ワゴニアと同時期にチェロキーのフロントマスクもマイナーチェンジ。縦スリットのデザインは引き続き踏襲されたが、ワゴニア同様、角目ヘッドライトになった。写真は1981年式AMCジープ・チェロキー・チーフ。グリルやエンブレム、メッキパーツの有無でワゴニアと見た目の差別化が計られている。

XJジープの登場でグランドワゴニアが誕生。

photo by Stellantis

日本人にも馴染みのあるコンパクトな車格のXJチェロキーが1984年に登場することで、ジープのモデルラインナップが大幅に整理されることに。

ワゴニアはXJチェロキーの高級バージョンとしてコンパクトになり、それまでのフルサイズボディのチェロキーは無くなり、フルサイズボディのワゴニアはグランドワゴニアという車名に変更されて高級SUVとしてのポジションは引き継がれた。写真は1984年式AMCジープ・グランドワゴニア。

製造権がクライスラーへと移行。

photo by Stellantis

1987年にクライスラーがAMCを吸収することで、1987年式からジープの製造権がクライスラーに。グランドワゴニアは1991年まで引き続き生産され、1991年式にファイナルエディションを販売してフルサイズジープの歴史は幕を降ろす。

コンパクトなボディで販売されていたXJワゴニアも1991年に無くなり、チェロキーだけになった。基本的なコンポーネントを変えることなく約30年に渡って生産され続けたモデルはアメリカ車のなかでも珍しい存在になった。

写真は1989年式クライスラー・ジープ・グランドワゴニア。ちなみにこのデザインは1986年式から最終モデルまで継続した。1990年代までメッキのバンパーを採用しているクルマは珍しかった。

永い眠りから覚めて復活したワゴニア。

photo by Stellantis

クライスラーがフィアット傘下になってから水面下で開発が進められていた次世代フルサイズジープ。ジープブランドがオランダのステランティスグループになり、2022年式として2021年に新型のフルサイズジープとしてワゴニアとグランドワゴニアが約30年ぶりに復活した(ホイールベースを延長したワゴニアL、グランドワゴニアLもラインナップ)。

ファンの間ではかつてのSJと区別してWSワゴニアと呼ばれている。現在も当時と同じくジープブランドの最高級モデルとして君臨し、フルサイズジープの新しい歴史を歩み始めた。残念ながら日本への正規輸入はいまのところない。ショートホイールベースでも全長5453mm、全高1920mm、全幅2123mmと堂々たる車格。

写真は2023年式ジープ・グランドワゴニア。

この記事を書いた人
ラーメン小池
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ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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