ネジ一本取ってもオリジナルのままという、資料のような貴重な一台。
バーンファインド。納屋などに眠っている埃まみれのクラシックカーのことを指す。日本では「納屋物」と呼んだりすることも。いずれにせよフルノーマルで、納屋の中で何十年も眠っていたようなクルマに価値がある。
迷える旧車オーナーの駆け込み寺として知られる埼玉県の水上自動車工業が所有する’72年製の240ZGは正真正銘の納屋物。ワンオーナー・フルノーマルで、最近永い眠りから目覚めたところだ。
気になるのはこのクルマの今後。高いレストア技術をもつ水上自動車だから、新車以上にビシッと仕上げる予定なのだろうか。
「このクルマはこのまま。ひどい腐りは直しますが、それ以外はこの状態です」
と水上自動車工業の若手メカニックの河原塚さん。それだともったいない気もするのだが。
「もったいないのは改造しちゃうこと。このクルマの何がすごいかって、ネジ一本取ってもオリジナルのままなんです。クルマ自体が資料のようなものなんです。ホイールもトピーの鉄チンでホイールキャップ付。当時はクルマが納車されたら真っ先に変える部分だったので、そのままの状態で残っているのはとても貴重なんですよ」
改造はいつでもできるが、それを元に戻すのは非常に難しくなる。こういった当時の状態が残るクルマを残すのは、日本の旧車文化のためには必要なことなのだ。
やれた外装から感じる本物の姿。時代を超え、今も当時のままで。
240ZG仕様は数あれど、正真正銘本物のフルノーマル状態のZGは大変貴重。まさに走る資料とでもいうべき存在の個体だ。
エンジンは前オーナーが調子維持のため、消耗品などを交換した痕跡があるが、それは許容範囲内。クルマ走ることが何より大事だから。
オーディオを付けたり、ステアリングを変えたり、三連メーターを変更したり、とかく改造されやすい室内もフルノーマルの状態を維持している。
シフトノブも当時物。シフトブーツも痛みや劣化もなく、そのままの状態で残っているのはまさに奇跡。これも資料的価値のある部分だ。
レアアイテムと化している当時物のホイールキャップ。タイヤはゴムが劣化し、走るには危険な状態だったため、ヨコハマタイヤのG.T.SPECIAL CLASSIC に変更。このクルマによく似合う。
フェンダーミラーは経年で塗装部分が剥げてきており、風合いを感じる雰囲気に。こういった自然なエイジングは、長い年月の積み重ねによるものだ。
【DATA】
水上自動車工業
埼玉県北足立郡伊奈町小針新宿717-1
営業/9:00〜18:00
TEL048-729-1330
http://www.mizukami-auto.com/
(出典/「Lightning2023年5月号 Vol.349」)
Text/M.Sasaki 佐々木雅啓 Photo/D.Katsumura 勝村大輔
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