ジェットコースターのような加速感。チューニングZのひとつの到達点だ。
アクセルを踏み込んだ瞬間、体を後ろもっていかれるような感覚に陥って、慌ててアクセルを戻す。これはターボ車ではない。NAの、しかも旧車だ。開けっ放しの窓から飛び込んでくるメカサウンドから、コイツがエンジンをスワップしたものではないことを思い出す。例えるなら、陳腐な言い回しになるがこの加速は最新のスーパースポーツ、それこそスーパーカーと呼ばれる類のそれ。公道を走るにはあまりにも戦闘的な、まさにストリートファイターだ。
「誰でも乗れるから」。このクルマの撮影時、スターロードの井上社長は言う。エンジンフードを開けるとメッキ加工されたエンジンに美しく整列した配管が並ぶ。こういった見せるための演出は実にアメリカ的。ショーカーに興味があるのかと聞くと「キレイなほうがいいじゃん」という答え。井上さんと話すといつもこう。大事なのは人の考えではない。自分がどう考え、どう思うか。
これはスターロード=井上正嗣の哲学なのかもしれない。クルマのオーナーがどう乗りたいかを聞き、オーナーが考えているクルマに仕上げる。この240ZGもそう。
エンジンはL型チューニングの定番であるL28改3リッター。キャブレターではなく6連スロットルインジェクションを採用している。これによってキャブレターのフィーリングを残しつつ、緻密な制御が可能となる。だから季節を問わずエンジンは一発始動。クラッチも軽く、走り出しは正直拍子抜けしてしまうほどの乗りやすさ。だがひとたび足先に力を込めれば、爆発的な加速を見せる。誤解しないでほしいのは、このクルマに危険を感じるような怖さはない。あるのはジェットコースターのような、クセになる衝動だ。
さすがインジェクションですね! と興奮気味に告げる。でも井上さんの答えはこう。
「キャブも同じにできるんだけどね。みんながやらないだけで。普通に乗れて、同じように加速する。でもインジェクションがいいならインジェクションで、キャブが好きならキャブにすればいい。好きな方を選べばいいんじゃない? 自分のクルマなんだからさ」
クセになる乗り心地を生み出すディテール。
クロームが映えるエンジンはL28改3リッターを6連スロットルインジェクションで制御。アルミラジエターで冷却系も強化する。
ダッシュ周りは基本的にストック風だが、電動パワステ化。さらに純正位置にマウントされる計器類もDefiのタコメーターに、STACKのスピードメーターで、センターに備わる油温、油圧、水温の3連メーターもDefi製で統一している。
ホイールはスターロードオリジナルのGLOW STAR15インチで、ADVAN HFタイヤを履く。大型4podキャリパーのブレーキシステムもスターロードオリジナル。
BRIDEのバケットシートを採用しているため、乗り降りしやすいようにステアリングはRAPFIX GTCでチルトアップする仕組み。
助手先足元にはクーラーを装着。こちらもR134aガスが使用可能なスターロードオリジナルのキット。ハコスカやZ専用のキットでリリースされる。
(出典/「Lightning2023年5月号 Vol.349」)
Text & Photo/D.Katsumura 勝村大輔 Text/M.Sasaki 佐々木雅啓(本文) 取材協力/スターロード TEL03-5668-5675
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