ワークパンツからファッションへ。’50年代に登場したジッパーフライモデル。

前年に続き、次のシーズンもアメリカ製1946年モデルのジーンズをリリースして話題のシュガーケーン。しかし、ジーンズファンにとっての朗報はこれだけではない。なんと約15年ぶりにジッパーフライのジーンズを発売するのだ。ここでは、そんな久しぶりのジッパーモデルに注目する。

「シュガーケーン」企画統括・福富雄一さん

1970年、金沢市生まれ。服飾の専門学校ではテーラー中心のメンズ科を専攻したが、’80年代後半からアメリカンヴィンテージに傾倒。

ワークパンツとして誕生したジーンズ。

右がもとにした1950年代半ばのリーバイス501ZXX。経年変化しているが紛れもないデッドストックだ。左が今回リリースするジッパーフライの1955モデル。黄色のフラッシャーが目印

ご存じの方も多いと思うが、ジーンズはもともとワークパンツとして生まれた。19世紀半ばにカリフォルニア州で巻き起こったゴールドラッシュにおいて、丈夫で破れない服が求められたことから、リベットで補強したダックパンツが生まれ、それがデニムに置き換えられて現在のジーンズの原型が誕生した。いうまでもなく、それがリーバイスの「501」のルーツである。

当然、他のブランドもそれに追従。カリフォルニアは、デニム生地を使ったワークウエアの聖地と化した。そんな中でリーバイスは、最高位モデルに使う丈夫なデニムをエクストラヘビーデニムと呼び、それをXX(ダブルエックス)デニムと名付け、その堅牢さを売りにして他ブランドとの差別化を図った。ロットナンバーの“501XX”という表記からも、そのプライドが感じられる。

デニム生地を織る際はその都度使用する綿から選定。このようにムラ糸を多数作って試行錯誤するそう

501XXは、20世紀になると様々な職種の人たちに愛用されるようになった。当時のリーバイスは、ファーマー、メカニック、カウボーイ、レイルローダーなどあらゆる労働者に向けて販売促進を行っていたからだ。

そんな501XXは、第二次世界大戦後に転機を迎えた。戦中はアメリカ国内でも物資の無駄を省くために様々な施策が講じられ、衣類などのいわゆるドライグッズにも多くの制限が設けられた。糸や真鍮などの部材の制限である。それゆえ、ブランドのアイコンといえるバックポケットの飾りステッチや一部リベット留めの廃止、バックルバックの廃止などを余儀なくされ
た。その結果、501XXの持つワークパンツ然としたディテールが、強制的になくなったのである。

余談だが、この措置はアメリカ国内のすべてのものに適用されたため、他ブランドのジーンズも同様である。 戦後、ポケットの飾りステッチやコインポケットなど必要不可欠なリベット留めは復活したが、バックルバックや股リベットなど不要の長物となったディテールは、廃されたままとなり、それによって見た目はかなり洗練されたものになったのはいうまでもない。

労働服からファッションアイテムへ。

今回の発売にあたり、トップボタンも作り直した。左がシュガーケーンの大定番である1947年モデルのもの。中央と右が今回のジッパーフライモデル用で、仕上げを変え試作し、結果的に右のものを採用

当時はジーンズ=労働服という認識の強かった時代。大人がファッションで穿くものではなかったが、若者の中でファッションとして流行り始め、その後はエルヴィス・プレスリーやマーロンブランドなどの著名人もスクリーンの中で着用。’50年代初めにはファッションとしての立場を確立しつつあった。

それを決定付けたのが、1950年代半ばに誕生した、ジッパーフライモデル、501ZXXである。まだ生機のデニム(洗うと縮むデニム)を使用しているものの、小股のボタンフライをジッパーフライへと変更し、ファッションに敏感な東海岸の人達にも訴求したのである。結果的に西海岸ほどの人気を博すことはできなかったわけだが、後に502や防縮加工デニムを使った551ZXX(その後は505)への伏線となったこの501ZXXは、リーバイスの歴史においても重要なモデルといえる。

デニムから全て再考し、15年ぶりに誕生したジッパーフライモデル。

織り上げたデニム生地のサンプル。左が1947モデルで、右が1955モデル。インディゴ染色だけでなく、ヨコ糸の色合いも違うことがわかる

日本ではヴィンテージジーンズ=501XXというイメージが強く、昔からボタンフライ愛好家が大多数を占めるが、通なジーンズファンやファッションに精通した人の間では、人気を集める存在だ。また、年を重ねてくると、ジッパーフライの便利さがすごくありがたいと思う瞬間が増えてくる。現に我々ライトニング編集部(全員アラフォー以上)でも、以前よりジッパーフライ愛用者が増えた。というか、全員がジッパーフライを所有するほどだ(以前はボタンフライしか持っていなかった)。

そんな状況は、シュガーケーンを展開する東洋エンタープライズ社でも同じかどうか定かでないが、2021年秋にジッパーフライモデルがリリースされることになった。実は約15年前に販売したことがあるのだが、今回は同社がアーカイブする最初期のリーバイス501ZXXのデッドストックをもとに、再度デニム生地から解析し直し、全く新しい仕様での発売となる’50年代の501ZXXは、XXデニムの荒々しい生地の風合いとともに、洗練された当時のシルエットも踏襲しているということなので、年季の入ったアラフォー以上のジーンズファンにとってはかなり魅力的な1本に仕上がっているといえるだろう。

試行錯誤し選定したタテ糸は、次にインディゴ染色し色落ちのテストを繰り返す。色落ちした風合いはもちろん、1ウォッシュ状態の色合いにもこだわる

カジュアルスタイルからジャケットスタイルまで、スニーカーから革靴まで、様々なファッションに応用できるジーンズでありながら、男心をくすぐる迫力のある色落ちも楽しめるとあって、弊誌でも非常に楽しみにしている。ジッパーフライ未体験の方にもオススメしたい!

1947モデルと1955モデルを徹底比較!

SC41947 14.25oz. DENIM 1947 MODEL

いわゆる大戦モデルを経て、必要なディテールが復活した戦後のモデル、通称1947モデルを再現したもの。ファンの間でジーンズの完成形と称されるほど、全てにおいて完成度の高い1本。こちらもヴィンテージをもとに紡績、染色、織り、縫製の全工程にこだわっている。1万8480円

SC42955 14oz. DENIM 1955Z MODEL (ZIPPER FLY)

まだボタンフライモデルと同じ生機のデニムを使いながら、ジッパーフライを採用して東海岸への販売を意識したモデルを再現。シルエットは1947モデルに似たレギュラーストレートで、デニム生地はヴィンテージをもとに新たに織り上げ、また異なる風合いに仕上がった。1万9800円

【問い合わせ】
シュガーケーン(東洋エンタープライズ)
TEL03-3632-2321
https://www.sugarcane.jp

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「Ligthning2021年11月号 Vol.331」)

この記事を書いた人
ランボルギーニ三浦
この記事を書いた人

ランボルギーニ三浦

ヴィンテージ古着の目利き

全国的に名を轟かせていた札幌の老舗ヴィンテージショップに就職。29歳で上京。Lightning編集部、兄弟誌・2nd編集部で編集長を務めた後、現在は、Lightning副編集長に。ヴィンテージ、古着の知識はその道のプロに匹敵。最近はヴィンテージのロレックスが最大の関心事で、市場調査も日課のひとつ。ランボルギーニ三浦の由来は、もちろんあの名車。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

「バンソン」のタフネスを、春夏へ。伝説の映画『EASY RIDER』とのコラボアイテムにも注目だ

  • 2026.04.02

バイカーブランドの代名詞、VANSON。今春は軽やかな布帛アイテムでイージーな装いを提案。そして伝説の映画『EASY RIDER』とのコラボレーションも登場。自由なスピリットを、そのまま服に落とし込んだラインナップを紹介する。週末のライドにも、街の散歩にも、着ることで体感できるフリーダムさを、VAN...

100本限定生産の「エイトG」大戦モデルは、春にぴったりの履き心地とメリハリのエイジング

  • 2026.04.02

無骨なまでに肉厚なデニムで知られるエイトG。その中でも比較的穿きやすく、この時期にぴったりの一本が、第二次世界大戦期のディテールを落とし込んだ大戦モデルだ。特濃インディゴで染め上げた糸ならではの、メリハリの効いたエイジングは、自分だけの一本になること間違いなしだ! ワイドシルエットが生む、クラシカル...

プロの現場から支持を得るモデルが今春アップデート! アシックスのワーキングシューズ「WINJOB CP314 BOA」の実力とは?

  • 2026.03.30

世界最古のモーターサイクルブランドとして知られるロイヤルエンフィールド。ミドルクラスで世界屈指のシェアを誇る同ブランドのメカニック、清水さんにアシックスのワーキングシューズ「WINJOB CP314 BOA」を体験してもらった。 [caption id="attachment_894934" ali...

開襟シャツに刺繍入りジャケット……老舗デニムブランドが提案する、春夏のアメカジスタイル。

  • 2026.04.01

老舗デニムブランドであるステュディオ・ダ・ルチザンが提案する、春夏のアメカジスタイル。定番ジーンズからHBTのワークセットアップ、開襟シャツや刺繍入りジャケットまで、軽やかな素材と遊び心あふれるディテールで、春夏の装いを彩る。 [5743]ボーリングシャツ 1950年代のヴィンテージ・ボーリングシャ...

【VAN×2nd別注】スポーティなレタードカーティガンでひと味違うアイビースタイルを。

  • 2026.02.03

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【VAN×2nd】トラックカーディガン[レタードワッペンセット] 日本にアイビーの礎を築いたブランド、「VAN(ヴァ...

Pick Up おすすめ記事

ワークブーツでありながら軽量で快適。“道具としてのブーツ”を極めた「SURE BOOTS」の機能美

  • 2026.03.31

言わずもがなブーツは我々にとっての必需品だ。だからこそ、多様なブランドとプロダクツが存在することは既知のことと思う。しかし、“ワークブーツ”という道具に、ここまで実直に向き合った1足が今までにあっただろうか。その気取らない美しさを見よ。 どこまでも素朴で武骨 それでいて軽量で快適 日本有数の革靴産地...

福島・郡山にある日本最大級のアメカジショップ「JOB314」はスケールが桁違い!

  • 2026.03.30

日本にアメカジショップは数あれど、ここまで大きなショップは見たことがない。それほどまでに大規模なショップがこちらのJOB314。大きな建物の中には、アメカジファンが泣いて喜ぶブランドがほとんど取り揃えてあり、一日中いても見切れないほど。近県のみならず、全国からファンが集まるアメカジの総本山なのだ。興...

革好き店主の本気、見せます! 「Fresno(フレズノ)」限定別注レザージャケットに注目だ

  • 2026.03.31

千葉・柏にお店を構える Fresnoは、アメカジ全般を網羅しながらも、革ジャン好きの心をくすぐる、特別なセレクトショップ。店主自らがこだわり抜いた“Fresno限定別注レザージャケット” は、このお店でしか手に入らない一着だ! 革ジャン好き、集まれ! アメカジの宝庫は柏にあり 千葉・柏に店を構えるセ...

100本限定生産の「エイトG」大戦モデルは、春にぴったりの履き心地とメリハリのエイジング

  • 2026.04.02

無骨なまでに肉厚なデニムで知られるエイトG。その中でも比較的穿きやすく、この時期にぴったりの一本が、第二次世界大戦期のディテールを落とし込んだ大戦モデルだ。特濃インディゴで染め上げた糸ならではの、メリハリの効いたエイジングは、自分だけの一本になること間違いなしだ! ワイドシルエットが生む、クラシカル...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。