旧車を見た目や雰囲気は旧いまま、 現代のパフォーマンスに仕上げる「ICON(アイコン)」の仕事。

旧車の醍醐味はなんといってもそのスタイル。手の込んだデザインやパーツひとつひとつに当時の開発者たちのコストと情熱が見て取れる。しかし機能やパワーとなると、現代車両に軍配が挙がる。日々のご機嫌で良くも悪くもなるのが旧車らしさ。それも楽しみという愛好家もいるけど、現代車両のパフォーマンスでオールドカーを所有できたらもっと楽しいのでは? という思いに応えてくれるのが「アイコン」の存在。

世界中がその技に魅了される「ICON(アイコン)」という存在。

ファクトリーには再生を待つ車両が何台も。フルレストアではなく、レストアしながら、さらに多くのパーツを新設計で組み付けるため、ゼロからクルマを作るよりも難しい作業だ。現代のパーツをさもオリジナルかのように旧車にインストールするには大きな加工や微調整が必要。ボルトオンでできることではないだけに、そこにはクラフトマンシップが存在する

ここの真骨頂は旧いクルマの外観や味わい、サビなんかもそのままに、中身をすべて新造するというカスタム。オールドカーに現代のパーツを組んだプロツーリングというカテゴリーをさらに越えた次元で作り込む姿勢は、今や既存の自動車メーカーもオファーするほど。クルマも今やリノベーションが可能な時代になっている。

その仕事をファクトリーで拝見させてもらった。

旧車と近代的なパフォーマンスを融合させるというコンセプトは、クルマのコレクターマーケットに通うことで生まれた発想だと語るジョナサン。それが今やスタイルになった

1949 ICON Derelict Hudson Coupe(ハドソン クーペ1949)

ノースカロライナの納屋で眠っていた(バーンファインドと呼ばれる)’49 年式ハドソン・クーペ。外観は塗装のツヤも飛び、少々疲れて見えるけど、中身はすべて新造。アートモリソンのフレーム、4輪独立懸架、ディスクブレーキにエアコン完備と抜かりなし。しかもエンジンは6.2リッターV8にスーパーチャージャー付きという猛獣に。

心臓部はGM 製の現行エンジンLS9(6.2 リッター)にスーパーチャージャーで過給することで638馬力を発生。さすがにこれではボディが持たないため、新造フレームで強化する。

デアレクトのネーミングは遺棄されたという意味。納屋に放置されていたクルマが経年でヤレた外観はそのままに、驚愕のパフォーマンスで走るというコンセプトを意味している。そのギャップに誰もが驚くのである。

後ろ姿もまったく当時のハドソンそのまま。現代的なマフラーエンドなんかが見えたら雰囲気を損なうので、あくまで当時の外観を壊さないように仕上げているところがおもしろい。

インパネはオリジナルを重視してきっちりとレストア。ステアリングはパワステ付きだけど、あえて当時のホーンリング付きの16 インチにして当時の面影をしっかりと残している。

手染めしたアリゲーターとムーアアンドシャイルズ製レザーのコンビで張り替えたシートはオリジナルの雰囲気を壊さないよう、褪色しているグラデーションもポイント。あくまでオリジナルをリスペクトしている。

1949  ICON Derelict Lincoln Club Coupe(リンカーン クラブクーペ1949)

日差しに長い間さらされていたことで、塗装の劣化やうっすらと浮かび上がるサビこそ、長い年月の成せるワザ。ならばその味わいはそのままにしようと、メッキパーツのみをリクロームして中身を一新したリンカーン。車両自体も珍しいだけでなく、この雰囲気でフリーウエイの流れに乗れる(むしろ速い)というスペックがおもしろい。

エンジンフードを開ければフォードの現行マスタングに搭載される5 リッター・コヨーテV8 が鎮座。それに合わせてアートモリソンのフレーム、4 輪ディスクブレーキを搭載。

ストックのインパネをキープしながら、エアコンのスイッチやBluetooth対応のオーディオシステムはすべて隠して搭載。中央に置かれたタブレットが現代車両という証明。

オーバルのリアウインドーや今となっては視認性が低い小さなテールランプなど、オールドカーらしいデザインが満載。当時も高級車ブランドだったリンカーンだけにデザインも作りも豪華そのもの。

今となっては貴重なエンブレム類も現存し、ヘコミも無い個体なので、そのままの雰囲気をキープしながらパフォーマンスだけを現代車両以上に仕上げた。

内装は当時の雰囲気を壊さないよう、レザーでカスタムメイド。ボディのヤレたトーンに合わせて薄めのカラーをチョイスするあたりにセンスの良さを感じる。

1973 ICON FJ44 Old School(オールド・ランドクルーザー)

アイコンを一躍有名にしたオールド・ランドクルーザーのカスタム車両。これが評判になりトヨタFJクルーザーが発売されるアイデアの発端にもなったというモデル。当時のスタイルはキープしつつ、現代的なカラーリングでネオクラシックに仕上げるのがオールドスクールシリーズの特徴だ。これはGM製6.2リッターV8エンジンを搭載。

リアからの眺めはオリジナルのFJ らしさそのままをキープしている。ボディカラーのパウダーコートによるグレーは、原野よりも都会を走っている姿がよく似合うアーバンなカラー。

内装はオリジナルを重視しながらレストアにとどめ、シートヒーターなども装備する快適仕様にアップデート。リアシートはボディサイドに搭載される跳ね上げ式になっている。

トカゲのエンブレムはアイコンのオリジナル。よく見るとヘッドライトのレンズも現代のパーツへと換装されているので、顔つきが古臭いのにどこか新しい。

ホイールは純正のスチールに見えるけど、実はアルミのビレットホイールをスチール風にペイントして、オリジナルスタイルのホイールキャップを装着。昔風で現代のスペックというニクイ演出。

【DATA】
ICON
9601 Lurline Ave. Chatsworth, CA 91311
TEL818-280-3333

(出典/「Lightning 2020年5月号 Vol.313」)

この記事を書いた人
ラーメン小池
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ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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