使うほどに好きになる民藝の器って何だろう?

  • 2023.06.01

民俗や地域伝統文化のあれこれに没頭しがちなエディターが、あなたの日々の暮らしに、とても小さなときめきをお届けしましょう。言葉だけは知っている作法や行事、未来をひらく温故知新、興味はあるけどよくわからない民俗のことなどについてわかりやすく紹介します。

さぁ、陶器市・クラフトフェアへ。

ようやく陶器市やクラフトフェアが例年どおりに全国開催され、先日の有田陶器市(佐賀県有田町)では1日最大20万人の人出で賑わうほどだったという。器好きにとって、一期一会の器に出合えるかもしれないワクワクを実感できる日々が戻ってきたのだ。

華やかな絵付の白磁という高級イメージがある有田焼にも、伝統的な一品にとどまらず、シンプルでモダンな一品、デザイナーとコラボレーションした一品などさまざまなスタイルが生まれている。

有田焼

器選びは現地で。それがいちばん楽しめる。

器自体も、器の作り手やその背景や地理も好きなため、もっぱら窯元のある現地で器を購入することが多かった。以前、有田町で購入した器も日々使うなか、気づけば手元には民藝(みんげい)の器が多くあり、用途によって毎日使いわけている。

民藝とは、民衆的工芸品のこと。もともとは名もなき職人が手仕事で作る生活道具で、各地の窯元で作られる器をはじめ、ガラス、竹細工、染色、和紙などその種類も幅広い。

現代における民藝の伝承と普及を活発に推進されていた久野恵一氏との深いご縁もあり、これまで各地の窯元や工房などを訪ね、知らないなりに手仕事の一端を肌で感じてきた時期もあった。

民藝とは、生活の新しい価値観だった。

民藝を確立した人は、明治生まれの思想家・柳宗悦(やなぎ むねよし)。

華やかな装飾が施された工芸品が主流だった当時、日本各地の手仕事の調査をしていた宗悦が「無名の職人が作った民衆の日用品の美」の価値を広く知らしめたいと、1925年(大正14年)に作った新しい言葉であり価値が民藝だった。

この価値の理論付けをするため、民藝運動(生活文化運動)の父と呼ばれる宗悦は、著書『工藝の道』を上梓し、雑誌『工藝』を創刊。1936年(昭和11年)には東京・駒場にある日本民藝館の初代館長にも就任した。

ちなみに宗悦の子は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)パーマネントコレクションのバタフライスツールなどで著名なインダストリアルデザイナー柳宗理(やなぎ そうり)。宗理は、日本民藝館の三代目館長でもあった。

用の美とは何だろう。

民藝を語るとき、キーワード「用の美」が頻出する。実用性の中に美しさや充足があるというもので、皆が多用しているキーワードだが、そもそも明確な出典についてはおそらくわかっていない(はず。ご存じの方がいましたら教えてください)。内容として然りのキーワードであり、さらに言えば、宗悦が民藝を解く際「健康の美」と以下語ったように、健やかさこそがとても重要なのではないかとも感じている。

柳宗悦は語る。

「工藝の美は健康の美である」

「用と美と結ばれるもの、これが工藝である」

「なぜ手工が優れるのであろうか。それは自然がじかに働くからである」

「かく想えば工藝の美は、伝統の美である」

「正しい工藝においては真に用美相即である」

(※相即[そうそく]:事象が密接に溶け合っていること)

……手仕事の醍醐味については、また改めてお伝えできればと思います。

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