ミリタリーウエアを元にアレンジも効いたワークウエア。
1933年3月4日にアメリカ合衆国大統領に就任したフランクリン・デラノ・ルーズベルトは、世界恐慌後の深刻な経済問題に対処するため、ニューディールという経済政策を行なった。その中で失業者に仕事を与え、国の環境や農業、社会問題を緩和するために結成されたのが『市民保全隊(CCC)』と『雇用促進局(WPA)』だ。
前者の対象者は18〜25歳までの失業した青少年。”Tree Army”の異名のとおり軍隊に対して関心を高める目的も兼ねていた。一方、後者は『Work Progress Administration』の略で、1935〜43年まで運用。対象者の平均年齢は40歳で、校舎や病院・橋・飛行場の建設から雨水の排水管や下水管の敷設、2400万本もの植樹も行なった。
このWPAという大規模なプログラムでは、労働に従事するためのワークウエアを女性が製造した。『SEWING ROOM』と呼ばれる縫製室で作られたワークウエアには“Made by W.P.A SEWING ROOMS, NOT TO BE SOLD(雇用促進局縫製室製品、売り物にあらず)”というラベルが付けられた。
このWPAの衣料は、CCCと同様にミリタリーウエアを元にデザインされるが、厳格なスペックはなく、ユニークなアレンジが施されている。そして、当時主流だった環縫いではなく本縫いだけで仕上げているのも特徴。それゆえアメリカではCCCを凌ぐほどコレクターも存在するほどなのである。
Lot.2216 NEW DEAL PROGRAMS DENIM COVERALL
シンプルな2ポケットのカバーオール。CCCと似ているがステッチやポケットの形状も異なる。こちらもSEWING ROOMで作られた1着で、すべて本縫いで仕上げられている。3万5200円
戦前に見られる糸で芯地を組んだ紙ラベルを使用し、プリントで表記している。
黒い塗装が施された鉄ボタンが使われている。すべて手付けされているのも特徴。
ライトオンスのデニム生地が使われ、前立ての裏にはセルビッジも使われている。
身頃の両サイドのダブルステッチの裏側。本縫いのため折り伏せ縫いとなる。
肩部分の縫製も表側はダブルステッチなのだが、裏側はすべて折り伏せ縫いだ。
Lot.1231 NEW DEAL PROGRAMS DENIM TROUSERS
ミリタリーのような特徴的なポケットが施されたモデル。非常に丁寧に作られており、ワークパンツのような見た目と裏腹に折り伏せ縫いを多用した、クラシカルな仕様のトラウザーズだ。3万800円
ボタンはすべてトラウザーズ同様の手付け仕様だ。
トラウザーズ仕様のベルトループが施されている。
ラベルはカバーオールと同様に戦前の仕様を完全再現。
アウトシームが折り伏せ、インシームは脇割仕様。
ポケットの折り返し部にセルビッジが配される。
【DATA】
WAREHOUSE TOKYO
Tel.03-5457-7899
http://www.ware-house.co.jp
※情報は取材当時のものです。
(出典/「CLUTCH2024年8月号 Vol.96」)
Photo by Shunichiro Kai 甲斐俊一郎 Text by CLUTCH Magazine 編集部
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