デニム偏愛家に聞くリペアすることの悦び
“正解のなさ”こそリペアの魅力
「リーバイス」からストアブランドのものまで様々なヴィンテージデニムを所有するNAOさんは生涯で計300回以上ものリペアを施してきたもはや“リペア狂”。中でも18歳の時に購入した「リーバイス」の[501]ビッグEは200回以上ものリペアを施した代物だ。
「当時はブレーキのついていないピストバイクに乗っていて、その時にスポーツウエアの代わりにデニムを穿いていました。太ももに圧力がかかるのですぐに破れてしまい、そこからリペアをするように。20回、30回とリペアを重ねるうちに周りの方から『そのデニムいいね』と褒めてもらうようになり味を締めましたね(笑)」とリペアの沼にハマっていったという。
そんなNAOさんがリペアに惹かれる理由として挙げるのがその“不確実性”と“人とのつながり”。
「リペアには正解がありません。また、着用を重ねたデニムはその人の体型や癖が現れるのでひとつとして同じものが存在しない。そんなものを直すので、リペアしたその先の姿は完成まで、想像こそできても正確にはわからず、そのワクワク感がたまらないですよね。リペア職人とコミュニケーションを取りながらふたりで理想のデニムを作り上げていくという、“人と人とのつながり”もリペアとは切っても切り離せないものだと思います」
NAOさんのREPAIR DENIM COLLECTION
約50回のリペアを施した「リーバイス」の[501]ビッグE。色落ちとリペア跡が好相性。
ヴィンテージのデニムジャケット。左肩に大きなダメージがあり、別のデニム生地を移植。
40年代のオーバーオール。全体の雰囲気を考慮してリペア跡を最小に。
リペアを介して生まれた親子のような関係
10年以上前、当時20代前半だったNAOさんが緊急でデニムのリペアをする必要があり途方に暮れていたところ、たまたま見つけたのが小林さんのリペアショップだった。そしてその仕事ぶりと人柄に感銘を受けたNAOさんはそれ以降、自身のデニムのリペアのほとんどを小林さんにお願いするようになる。
「小林さんは大ベテランというだけあって知識も経験も豊富。自分が見逃している箇所も直してくれたりと気が利くし、デザインのセンスもある。自分はリペアをお願いする頻度も高くて大変だと思うのですが、つい小林さんに頼んでしまいます。そして何といってもお話ししていて楽しい。仕事や家族のことも話しますし、会うと『自分ももっと頑張ろう』という前向きな気持ちになれるんです」とNAOさん。
小林さんも「歳も離れていて付き合いも長く、自分の子どもみたいに思っています。リペアは根気のいる作業で大変な面もあるけど、こうやって信頼してもらえるのが嬉しいですよね。本当にこの出会いに感謝です」とふたりの気の置けない関係性がうかがえる。
リペアはまさに二人三脚でひとつのアイテムを作り上げるいわば共同作業。1本のデニムを介して生まれたこの素敵な出会いもリペアをすることの醍醐味だ。
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