個性派トラッド名品と個性派店主に会いに
仙台駅から歩くことおよそ15分。ファッション街からやや外れた場所に突如現れるレンガづくりの建物が、「ブリック」だ。まさに洋品店と呼ぶに相応しいオーセンティックな内観は、同店がオープンした1980年からほとんど変わっていないらしい。同店ではスーツ、シャツ、パンツ、帽子、革靴などあらゆるアイテムのオーダーができるほか、オリジナルの商品がところ狭しと並び、セレクトされたアイテムはほとんど見かけない。
「ブランドイメージに左右されることなく、ただおおらかに服を扱っていたいんです。そういう想いでオープン時からオリジナルのアイテムを作り続けています。作るものと言えば、自分で描いた熊のイラストをあしらったスウェットとか、苺のエンブロイダリーが入ったデニムパンツとか。あまり普通のことはやりたくない。『邪道』と言われるほうが嬉しいから(笑)」
加藤さんへの取材中、営業時間内ということもあって、ひとりのお客さんが入ってこられた。どうやら、齋藤さんという常連の方のようだ。
「毎週土曜日15時は齋藤さんが来てくれる時間。もう12年くらい通ってもらっているかな。なにせオープンが旧いから、大学一年生だった頃から通ってもらって、いまや58歳になったお客さんもいますよ。世間で言うところの『常連さん』になるんでしょうが、常連という言い方は好きではなくて、みんな一見さんだと思ってます。
だからいわゆる接客というものもほとんどやらない。何か聞かれたら答えられるようにはしてるけど、最終的に着るのはお客さんなんだし、ウンチクなんてわざわざ語るようなものじゃない。じゃあ何をお客さんと話しているかと言えば、ほとんどが服と関係ない世間話(笑)。今日来てくれた齋藤さんとだって、服の話をすることは滅多にありません」
確かに、齋藤さんにコーヒーとお菓子を振る舞って談笑している姿は、まるで喫茶店にでもいるかのようだった。「ブリック」が、他所では手に入らない個性的なトラッドアイテムがたくさん手に入る場所という点において魅力的なのは間違いないが、なにより加藤さんと無駄話をするために、店を訪ねたくなるのだろう。現代では忘れ去られてしまったそんな引力が、ここにはまだ残っていた。
【DATA】
Brick(ブリック)
宮城県仙台市青葉区一番町1-12-16
TEL022-266-7947
営業/11:00〜19:00
休み/水曜
https://brick.orhjp.com
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
Photo/Nao Mizoguchi, Nanako Hidaka, Takuya Furusue Text/Kiyoto Kuniryo, Yu Namatame, Shuhei Takano
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