アイビーが気分の今行きたい「洋品店」。仙台の「ブリック」に行けば“あの頃”が待っている

アイビーが一世を風靡した時代、日本にはたくさんの洋品店があった。時が経つにつれ、店舗数は減り、今ではごく少数派となってしまっているという。そんな時代に全国で見つけた、”あの頃に戻れる”そんな洋品店を紹介。仙台駅の近くにある「ブリック」は1980年のオープン当初からスーツ、シャツ、パンツ、帽子、革靴などあらゆるアイテムのオーダーができるほか、オリジナルの商品がところ狭しと並び、セレクトされたアイテムはほとんど見かけない洋品店だ。

個性派トラッド名品と個性派店主に会いに

スーツ、シャツ、帽子、靴など全身分のアイテムがオーダーできるうえ、店内に並ぶ既製服はそのほとんどがオリジナル。これほどまで、わざわざ足を運ぶ理由のある店も珍しい

仙台駅から歩くことおよそ15分。ファッション街からやや外れた場所に突如現れるレンガづくりの建物が、「ブリック」だ。まさに洋品店と呼ぶに相応しいオーセンティックな内観は、同店がオープンした1980年からほとんど変わっていないらしい。同店ではスーツ、シャツ、パンツ、帽子、革靴などあらゆるアイテムのオーダーができるほか、オリジナルの商品がところ狭しと並び、セレクトされたアイテムはほとんど見かけない。

オンワードで企画、信濃屋で接客の経験を積んだのち、27歳という若さで「ブリック」をオープンした加藤周一さん。店名の通り、レンガ(=brick)づくりの建物がクラシック!

「ブランドイメージに左右されることなく、ただおおらかに服を扱っていたいんです。そういう想いでオープン時からオリジナルのアイテムを作り続けています。作るものと言えば、自分で描いた熊のイラストをあしらったスウェットとか、苺のエンブロイダリーが入ったデニムパンツとか。あまり普通のことはやりたくない。『邪道』と言われるほうが嬉しいから(笑)」

オーナーである加藤さん自身が制作したイラストをあしらった、愛嬌のあるスウェット。「Bの文字は店名からとったのと、AじゃなくてBランクがちょうどいいと思って」と謙遜

加藤さんへの取材中、営業時間内ということもあって、ひとりのお客さんが入ってこられた。どうやら、齋藤さんという常連の方のようだ。

「毎週土曜日15時は齋藤さんが来てくれる時間。もう12年くらい通ってもらっているかな。なにせオープンが旧いから、大学一年生だった頃から通ってもらって、いまや58歳になったお客さんもいますよ。世間で言うところの『常連さん』になるんでしょうが、常連という言い方は好きではなくて、みんな一見さんだと思ってます。

だからいわゆる接客というものもほとんどやらない。何か聞かれたら答えられるようにはしてるけど、最終的に着るのはお客さんなんだし、ウンチクなんてわざわざ語るようなものじゃない。じゃあ何をお客さんと話しているかと言えば、ほとんどが服と関係ない世間話(笑)。今日来てくれた齋藤さんとだって、服の話をすることは滅多にありません」

知らずのうちにお客さんに撮られていたという40代の頃の加藤さんの写真が。ほかにも、常連さんが作ってくれたという加藤さんを模した人形など、気になるものがチラホラ

確かに、齋藤さんにコーヒーとお菓子を振る舞って談笑している姿は、まるで喫茶店にでもいるかのようだった。「ブリック」が、他所では手に入らない個性的なトラッドアイテムがたくさん手に入る場所という点において魅力的なのは間違いないが、なにより加藤さんと無駄話をするために、店を訪ねたくなるのだろう。現代では忘れ去られてしまったそんな引力が、ここにはまだ残っていた。

お客さんにはコーヒーやお菓子を振る舞って、雑談に花を咲かせる。取材の日に偶然訪れた常連の齋藤さんとは、いつもこの位置で「服以外」の話で盛り上がるそうだ

【DATA】
Brick(ブリック)
宮城県仙台市青葉区一番町1-12-16
TEL022-266-7947
営業/11:00〜19:00
休み/水曜
https://brick.orhjp.com

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2023年11月号 Vol.199」

この記事を書いた人
パピー高野
この記事を書いた人

パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

Pick Up おすすめ記事

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...