シャツの名門「インディビ」を徹底解剖! 知られざる製造方法とは?

暖かくなってくると無性にシャツが欲しくなる。歳を重ねる毎にこだわりが強くなる自分がいる中で、以前から気になっていたアメリカンブランド/INDIVIDUALIZED SHIRTS、通称”インディビ”を取材させてもらおうと思い、「USONIAN GOODS STORE(ユーソニアングッズストア)」へと足を運んだ。

「インディビ」の歴史をおさらい。

取材前に私が漠然と描いていたインディビジュアライズドシャツの勝手なイメージは、私が担当しているJ.PRESS同様に「日本で買うことができる本格的で歴史あるMade in U.S.A.のシャツ」。しかし、その点だけが魅力的な要素ではないことが、今回の取材を通して理解できた。

インディビジュアライズドシャツを語る上で、必要なキーワードがある。それは、「カスタムオーダーができるシャツ工場」という点だ。まずは歴史を振り返ってみよう。1961年、アメリカのクラフツマンシップが色濃く残っていた時代に、John La Resca (ジョン ラ レスカ)、George Zimmerman (ジョージ ジマーマン)の手によって、 ニューヨーク州・マンハッタンの対岸に位置する静かな港町、ニュージャージー州・パースアンボイで、カスタムメイド専門ファクトリーとして創業した。1990年代まで、ボタンダウンシャツの原点であるブルックス ブラザーズのカスタムオーダーシャツ部門をすべて請け負っていた経緯があり、現在ではBergdolf GoodmanやSaks Fifth Avenueをはじめとした、高級紳士服専門店や百貨店のカスタムオーダーシャツを手掛けているファクトリーであり、ブランドだ。

カスタムオーダーできる内容とは?

そして、USONIAN GOODS STOREは、日本で唯一インディビジュアライズドシャツを常時カスタムオーダーすることができるお店。そこで、実際にどのようなカスタムが出来るのかを下記に羅列する。

Cloth(生地)

随時、更新されているそうだが、多いときは400種類以上の素材から選べる。余談ではあるが、面白い話を聞いた。アメリカ国内のオーダーで圧倒的に多いのが、ロイヤルオックスやピンオックスなど、ややドレッシーな雰囲気が漂う意素材だそう。カラーは無地のサックスブルーが多いとのことで、エリートビジネスマンが仕事で使用するシャツをオーダーしているからだろう。一方、日本ではオックスフォード、デニム、マドラスなど「日本から見たアメリカへの憧れ」を反映した素材選びが多いそうだ。日本人が「アメトラ」を作り上げたという歴史をここでも垣間見ることができる。

Fit(フィッティング)

フィッティングは、スリム、スタンダード、クラシック、リラックス、アスレチックの5種類を軸にオーダーが可能。以前は、圧倒的にスタンダードフィットのオーダーでも多かったそうだが、最近ではややゆったりしたクラシックフィットを選択されるお客様が多いとか。緩やかに裾に向かってシェイプしているので、タックインした時もウエストの収まりがいいそうだ。

Collar(襟)

ボタンダウンに始まり、ラウンドやロングポイント、ワイドスプレッドなど30種類を超える襟型が選べる。その中でも、インディビジュアライズドシャツのファンから最も評価されているのが、ユニバーシティボタンダウンカラー。台襟の高さ、襟羽根サイズ、ボタンの位置、 そして台襟のシェープなど、すべてのディテールが絶妙なバランスで渾然一体となり、伝統的なアメリカンシャツを創り上げている。

Pocket(ポケット)

ポケットは約10種類。スタンダード、クラシックに標準装備されているLポケット、ヘムポケットの他に、アメリカンシャツらしいVヘムポケットをもラインナップしている。

Sleeve/Cuff(袖/カフス)

シャツの隠れた生命線とも言える、剣ボロ。単純な量産品とは一線を画す、カスタムシャツメーカーならではの手間のかかる作りだ。カフスはラウンド型のバレルカフがスタンダード。幅広のレギュラーカフや狭いナローカフを含め、カスタムオーダーでは大きく3型を中心として、角落ちやフレンチカフなどディテールも選択可能で、計15種類を展開。スリーブのオプションも2通り。アームホール自体が小さく、袖全体が細身のナロースリーブ、クラシックなレギュラースリーブがある。その他、当記事内では省略するがプリーツやヨーク、ボタン、芯地なども選ぶことができる。

「INDIVUDUALIZED🟰一人ひとりの」というブランド名

つまり、カスタムオーダーでどんなシャツを作ろうとも、そのどれもがアメリカはニュージャージー州パースアンボイのシャツ工場で、自分のためだけに作られた、世界でたったひとつのシャツとなる。これこそが「INDIVUDUALIZED=一人ひとりの」シャツを指すブランドの由来だ。

インディビのものづくりには「アメリカ製」の魅力がすべて詰まっている。

取材の中で一番驚いたことがある。それは「カスタムオーダーと量産の縫製ラインが同じ」という点だ。一般的にカスタムオーダーはオプションが数多くあり、それぞれが複雑なオーダー内容となるため、ひとりが管理してすべての製造工程を担当することが多いと聞く。しかしインディビでは、それぞれのパーツ毎に担当者が縫う「分業」、つまり量産と同じ製造ラインで1枚のシャツを作り上げていく。アパレルのモノづくりに携わっていない人には馴染みがないかもしれないが、複雑なオーダーを多く受注する工場で、カスタムオーダーを分業で生産することが難しいのは想像できるはずだ。 

このようなことができるシャツ工場は、世界を見回しても、そうそう見当たらない。僕らが憧れを抱く「Made in U.S.A.」のほとんどが、量産型の縫製工場から生まれる。世界でひとつのカスタムオーダー品なのに、いかにも”アメリカ的”な量産手法で縫っているというインディビのシャツ作り。これ以上のロマンを感じさせてくれるシャツ工場は世界を見回しても、きっと見つからない。

USONIAN GOODS STORE
by INDIVIDUALIZED SHIRTS

東京都渋谷区神宮前2-19-16
営業時間 12:00-19:00
INSTAGRAMはこちらから。     

この記事を書いた人
黒野 智也
この記事を書いた人

黒野 智也

ブレザー偏愛家

1985年生まれ、神戸出身。J.PRESS&SON'Sの立ち上げから携わり、現在はショップディレクター。コラボや別注などのほか、マーチャンダイズ、生産管理、企画・バイイング、イベント立案、PR、店頭での接客まで担当。趣味のカメラを活用し、自社ブランドのみならず、他ブランドのルック撮影やイメージヴィジュアルにも携わる。アメリカントラディショナルの普及のため、様々な“ブレザー・スタイル”を啓蒙する@blazer_snapも主宰。
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