いまの紺ブレとファッションの話。【紺ブレが当たり前だった時代の話をしよう。第4回】

日本のトラディショナル・ファッション界の重鎮・慶伊道彦さんとアイビーに魅了されVAN JAKETに入社した三浦俊彦さん。長年にわたりアイビー、そしてネイビー・ブレザーに魅せられ続けているお二人による、“今、紺ブレをどう選ぶか”の道標を対談とルックから探っていく。

「UNIVERSAL LAB」三浦俊彦さん|10代の頃からアイビー・ファッションに心酔し、1966年に「VAN JACKET」入社。1970年代に〈KENT〉、〈GANT〉のデザイナーを務めた。1992年、自身のブランド〈SOUTIENCOL〉を開始。国内外に顧客を持つ
「KAY STANDARD STYLE」慶伊道彦さん|1976年、青山にてネクタイ・ブランド〈Fairfax〉を創立。 2019年に代表取締役を退き、現在はインスタグラムやYouTubeでトラディショナルなメンズ・ウエアの魅力をカルチャーとともに紹介し幅広い支持を得ている

何でもありの時代に選ぶべき紺ブレとは。

三浦さん 今は何でもありの時代で、その反面トレンドセッター的な人、お手本にしたいと思える人がいないじゃないですか。スーツはまぁ選べるけどカジュアルはどうしたらいいかわからないという話はよく聞きますが、それはお手本になるようなかっこいい大人がいないからなんでしょう。

慶伊さん ものが豊富な時代だから自分で決めきれない、選びきれないというのはあるよね。自分のキャラクターが出ないというか。それとさっきも話題にのぼったTPOのような決まりごとが今はないからかえって崩すのが難しいというのはあります。初めから崩れているものをまとめるのって大変ですよね。昔と今ではそういう差はあると思います。

三浦さん その点、スティーヴ・マックイーンなんかは若い人にもいまだに人気あるじゃないですか。ああいうお手本がもっと出てくるといいんでしょうね。

慶伊さん 1960年代頃の銀幕のスターの系譜は現在もメンズ・ファッションのなかに脈々と続いているということですよね。それを中心に行ったり来たりしているような感じで、ブレザーもそのひとつだと思います。あの時代のスタイルはメンズのファッションのひとつの柱なんです。

三浦さん ブレザーや〈バラクータ〉のG9は、時代によって浮き沈みはあるけれどなくならないですもんね。紺ブレなんかはさっきも出たように育ちのよさみたいな雰囲気を持ったアイコン的なアイテムなので、こうした何でもありの時代にも有効だと思います。ゴージの位置やラペル幅、ウエスト・シェイプのバランスなどに多少の変化はあれど、いつの時代のファッションにも合う普遍性が紺ブレにはあるんです。

慶伊さん ネイビーという色は制服や軍服などのユニフォームにも使われる一方、ロイヤル・ファミリーといったイメージ、どこか高貴な印象もあります。そうした変わらなさは魅力ですね。

三浦さん まずはベーシックなスタイルでなおかつ自分の身体に合った紺ブレを一着見つけてほしいですよね。それにはプロがいる店に行く必要がある。洋服を販売する人は本当は型紙、パターンのことをわかっているのがベストだと僕は思っていて、そういう人から買うというのが理想的です。身体の特徴と洋服の構造をきちんとマッチさせられる人ですね。

慶伊さん 僕は1960年代や70年代、つまりブレザーの黄金期といわれていた時代に作られたヴィンテージを探すのをおすすめします。ブレザーにパワーと品格があった時代の本物に一度は触れてみてほしいですね。

いまのふたりの話をしよう。

三浦さんの本日の着こなし

「逆撚り」でドライな風合いを実現したトロピカル・ウールのブレザーとシャツはご自身のブランド〈SOUTIENCOL〉、中に着たマドラス・チェックのヴェストは〈Polo by ラルフ ローレン〉。ヴィンテージの〈エルメス〉のニットタイ、軍ものチノーズに〈Tricker ’s〉のスエード・チャッカを合わせて三浦さん流ヴィンテージ&シーズン・ミックス・アイビーの完成だ。

トラディショナル・スピリットと職人気質が融合した妥協のないものづくりで知られるブランド。自社オンラインショップでは注力したポイントをスタイリングとともに紹介している

慶伊さんの本日の着こなし

「テーラーケイド」で15年ほど前にあつらえたブレザー。同じく「テーラーケイド」のコーデュロイのヴェストは共生地でジャケットもあるそう。シャツも オーダー品でこちらはイギリス製。ボトムスは〈PT 01〉でシューズは〈オールデン〉。サドル・シューズをセレクトしてアイビーの匂いを加えているのがにくい。トレードマークのハットは〈KIJIMA TAKAYUKI

ブログやYouTubeでトラディショナルなメンズ・ファッションの面白さを伝えている慶伊さん。映画を軸にしたインスタグラムは海外のファンも多い

(出典/「2nd 202212月号 Vol.189」)

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2nd 編集部
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