当時の紺ブレの着こなしの話。【紺ブレが当たり前だった時代の話をしよう。第3回】

日本のトラディショナル・ファッション界の重鎮・慶伊道彦さんとアイビーに魅了されVAN JAKETに入社した三浦俊彦さん。東京オリンピックをきっかけに日本に浸透したブレザー。そこから1970年代半ばまでの「ブレザー全盛期」の着こなしをお二人にお聞きした。

「UNIVERSAL LAB」三浦俊彦さん|10代の頃からアイビー・ファッションに心酔し、1966年に「VAN JACKET」入社。1970年代に〈KENT〉、〈GANT〉のデザイナーを務めた。1992年、自身のブランド〈SOUTIENCOL〉を開始。国内外に顧客を持つ
「KAY STANDARD STYLE」慶伊道彦さん|1976年、青山にてネクタイ・ブランド〈Fairfax〉を創立。 2019年に代表取締役を退き、現在はインスタグラムやYouTubeでトラディショナルなメンズ・ウエアの魅力をカルチャーとともに紹介し幅広い支持を得ている

“ニューポート”の名付け親はくろすとしゆきさん。

慶伊さん 自分がもっともブレザーを着ていた時期は学生の頃からサラリーマン時代ですね。年齢でいうと18歳から23歳くらいまで。アイビーに一番ハマっていたときで、ダブルのブレザーが好みでしたね。僕は体型的にVANのサイズが合わないから、それをチェックしてテーラーで仕立ててもらっていました。ブレザーは“ちゃんとした恰好”をするアイテム、お出かけするときに着る服という感じでした。

アメリカでブレザーが広まったのって1950年代から60年代だそうで、日本は東京オリンピック(1964)があったおかげで一気に浸透した。そういう意味では日本もわりと早かったんですよね。そういえばブレザーに〈ファーラー〉の裾広がりのニット・パンツに足元は〈クラークス〉、シャツにアスコット・タイなんていうコーディネートもしていました。25歳くらいの頃で、ちょうどアイビーが変化している時代。だから西海岸の匂いがありますね。

〈VAN〉のボタンダウン・シャツは背後のボックス・プリーツ上のループと後ろ襟のシェイプがアイビー的。「当時のボタンダウンによく見られる仕様です」(三浦さん)

三浦さん 僕も慶伊さんと同じくらいの年頃にはよく着ていました。今日も持参したんですけどニューポート・ブレザーが好きでしたね。

慶伊さん “ニューポート”っていう呼び名はくろすとしゆきさんがつけたんですよね。だから和名。でも洒落てるよね。それにかぶれて若い頃はニューポー ト・ブレザーしか着なかったな。エレガントなんだよね、大人っぽいというか。シングルのブレザーを着だすのは歳をとってからです。

三浦さん 僕はニューポート・ブレザーにタートルネックやアスコット・シャツを合わせてちょっと変化させていましたね。ボトムスはサキソニー素材だけどモッズ系のレジメンタル・ストライプの細身のパンツで。ブレザーはタイド・ アップするよりもスポーティにコーディネートしていました。

“ニューポート・ブレザ ー”とも称される4つボタンのダブル・ブレスト・ブレザーもアイビー・スタイルの定番。シェイプは緩めで英国ものとは趣を異にする。「普通この手のブレザーはフランネルが多いですが、これはベネシャンを起毛させています」(三浦さん)

慶伊さん 僕の2回目のブレザー・ブームはDCブランドの勢いがあった年代だね。〈BIGI〉のブレザーをややオーバーサイズな感じで、胸にエンブレムをつけたりして着ていました。それが時代の気分だったんですよね。クラブに遊びに行くのによくそんな恰好をしていました。

三浦さん 僕はその時代も変わらずアイビーをやっていましたね。紺ブレってどこかリッチな、いいところのお坊ちゃん風な育ちのよさがありますよね。崩れすぎないというか。

昔はブレザーを着るのは洒落者ばかりだった。

慶伊さん ブレザーが無地になるのって1930年代とかでしょう。もともとはストライプ。クリケットとかテニスのようなイギリスのスポーツウエアですよね。

三浦さん そうですね、ブレザーはやっぱりイギリスがもとですねアメリカというより。

慶伊さん アメリカだとスコット・フィッツジェラルドあたりが着はじめたんじゃないかな。お金持ちのスポーツウエアをあえて着るのがかっこいい、みたいな。日本では東京オリンピック頃に街でブレザーを着ているのは洒落者、アイビーやってる人たちが中心だった。

三浦さん ハリス・ツイードのジャケットなんかよりは紺ブレの方が多かったですかね。

慶伊さん 今だと普通の人も紺ブレを着ますけど、昔はお洒落な人のアイテムでした。それがだんだんと普通の人にも広まってゆくんだけど、VANが〈ミスターVAN〉ブランドでヨーロッパっぽい路線のものを発表していくタイミングでブレザー・ルックも減っていった気がします。その後5年ほどのブランクがあって、ブレザーが再び脚光を浴びるのはプレッピーの頃ですね。

三浦さん 時代的にはそのあとに渋カジ・ブームがあってまたブレザーに注目が集まると思うんですけど、僕は渋カジは関心なかったなぁ。アウトドア・ミックスみたいな流れもありましたよねその時代。僕自身は古着ミックスだったと思います。

慶伊さん 僕はその頃だとブリティッシュだね。カジュアルには向かわずに、サヴィル・ローのテーラード・スタイルでした。

三浦さん 昔、VANの時代に石津さんが盛んに「TPO(タイム・プレイス・オケージョン)」を説いていて、当時はなんかオッサンくさいなぁなんて感じていたん です(笑)。でも振り返ると、たとえば握手するときは上着のボタンを止めるだとか、そういった基本を教えてもらっていたんだなということがわかります。

慶伊さん TPOっていう基本があるからそれを崩せるんです。大事なことだと思いますよ。そういう部分も合わせて、若い頃に学んだトラディショナルな服や身のこなしというのは忘れることなく一生の基本になっていますね。

三浦さんのブランド〈SOUTIENCOL〉のアスコット・シャツは〈KENT〉の同型を参照した。タッターソールでスポーティだが共生地のアスコット・タイがエレガントさを加味

(出典/「2nd 2022年12月号 Vol.189」)

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