「Made in JAPAN」、すでにひとつのブランドとして認知されているこの言葉を日本人として再度、徹底検証してみよう。日本で作られたモノの良さ、日本で作ることの意味を真摯に問うていきたい。手始めに「カインドウェア」について取り上げてみたい。
「カインドウエア」とは?
1894年(明治27年)に創業し、日本におけるフォーマルウエアを定義するなど洋装文化の歴史を作った「カインドウェア」には、カジュアルファッションの視点からも興味深い点がいくつもある。
カインドウェアはテーラリングの本場、英国サヴィル・ロウを代表する最高級テーラー「ハンツマン」のオーナーであった経験から、そのノウハウを自家工場である那須夢工房に反映。前面に毛芯を配した本格的なジャケット作りを開始する。約260にも及ぶ工程は創業当時のまま簡略せず、現在も上質で着心地の良いスーツを生み出している。ジャケット作りにおいて、とくにこだわりを持っているのが「首への吸い付き」と「そら豆型のアームホール」。
”棒襟”と呼ばれる本来ビスポークに採用される仕立ては、湿度で伸び縮みするウールの性質を利用し、プレスを繰り返しながら小さく襟を作っていく。その縮みが伸びようとすることで、首の太さに関わらず吸い付くようなフィットが得られると同時に、ジャケットの重さが肩にかからず着心地も軽やかになる。
また肩と腕周りの作りにも一過言あり。当工房では前肩に対し、後ろ肩の生地を約2㎝も余分にとり縫製。肩甲骨の丸みを作ると同時に、肩を前に押し出すことで前肩にスペースを生む。これがそら豆型のアームホールを作り出し、アジア人特有の前肩体型にも沿うシルエットとなるのだ。
現在は有名セレクトショップからのオファーが後を絶たないカインドウェアの自家工房である那須夢工房。限りなくビスポークに近い形で、より多くの服好きに本物のテーラリングを提供する希少な存在だ。
手仕事を拝見。
1. 後ろ肩の縫い目には約2㎝のイセ(ギャザー)を作り肩甲骨に丸みを生む。同時に前肩部分にも空間が生まれ、アジア人特有の前肩体型にも馴染みやすい
2.まるで首に吸い付くような襟の形状は“棒襟” とよばれる本来ビスポークに採用される仕立て。ジャケットの重さが肩にかからないのが着心地のよさの秘訣にも
3.同工房のジャケット作りを語る上で欠かせないのが、中間プレスの多さ。通常2回のところ当工房では計6回に分けることで、より立体的なシルエットを生み出す
4. その道50年の那須夢工房統括マネージャー、鈴木豊二さん。元ラルフ ローレン生産工場社長のレオ・ロッジ氏から直々に学んだイタリア式製法をいまに伝える
5. 本格派の証と言える“フル毛芯”。立体的なシルエットを成型するだけでなく、型崩れもしにくい。しつけ糸は解くだけで1時間以上かかるという業界屈指の数の多さ
いかがだったろうか。日本人の手仕事、なかなか奥深い世界です。
Photo/K.Suzuki 鈴木克典
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