※本記事は、9月22日の発売日の前にアップルから借りた端末を元に執筆している。新しいOSの利用についても許可を得ている。
iPhone 14 Pro搭載のA16 BionicをベースにしたS9搭載
Apple Watchのチップセットは名称こそ、S1〜S9へとシーケンシャルに進んでいるが、実はその内容の進化は不連続。
初代S1の動作が遅かったことは、初代から使っている人ならご記憶だと思うが、その後S2で16nmプロセスのチップセットに進化、S4で10nm、S6で7nm、そしてついに今回のS9でA16 Bionicをベースにした4nmプロセスで製造されるチップセットへと進化している。
これをベースに考えると、チップセット的に2世代前のSeries 4、5、初代SEあたりは間違いなくそろそろ買い替え時。そして、Series 6〜8、第2世代SE、Ultra初代が、旧世代に追いやられたということになる。
S6世代はすぐに買い替えが必要というわけではなく、まだしばらく使えるとは思うが、OSがアップデートされていくと動きがもったりするようになるかも。そういう意味で、最新4nmプロセスで製造されるS9搭載の、Apple Watch Serise 9とApple Watch Ultraは3〜4年は問題なく使えるだろうから、お買い得なモデルということになる。
S9チップが実現する高度な機能『ダブルタップ』
S9は、CPUはSeries 8より60%多い56億個のトランジスタを搭載、GPUは30%高速、Neural Engineは従来の2コアから4コアに増量……と大幅なパワーアップをしている。
このS9チップの高性能を使って実現したのが、指を2回ピンチすることでApple Watchを操作する『ダブルタップ』という機能だ。
そういうと地味な機能に見えるかもしれないが、手首で指の動作の検知をするとうのは非常に高度なセンシング技術がなければ出来ないことなのだ。6軸ジャイロによる微妙な手首の動き、振動と、血流の変化からそれを検知しているという。
これにより、Apple Watchをしていない側の手で他の荷物を持っていたり、手すりを掴んだりしていても、Apple Watchを操作できる。
鳴ってるタイマーを止めたり、着信に出たり、電話を切ったり、音楽を再生したり、止めたり……と、その時点で最優先に表示されているタスクの、一番大きなアイコンになっている動作を行うことができる。
また、文字盤の状態でダブルタップをすると、watchOS 10で装備されたスマートスタックを開くことができる。これも便利。
ちなみに、この機能はApple Watch Series 9とUltra 2に、10月公開予定のアップデートで追加される。筆者は、Steve Jobs Theaterでの発表会と、ベータアップデートを施したApple Watch Series 9で体験させてもらったが、誤動作もなく快適な使用感だった。
Neural Engineを4コア持つS9搭載機だからこそ実現可能な機能で、今後追加される今回のような微妙な動きの解析や、言語解析なども同様にS9搭載機のみで実行可能になるだろう。このような地味に見えるが、高度な技術を使った機能こそが、何気ない快適な使用感を実現していくはずだ。
実際、Siriの音声認識もかなりスムーズになっている気がする(これはいろいろな条件に左右されるので断言できないが)。今後、意識的にApple WatchのSiriを使っていって、スムーズさを確認したいと思っている。
LEDライトとしても使えるほどの明るさ
Apple Watch Serise 9は外見上の変更点はないが、ディスプレイの輝度が最大1000ニトから、2000ニトへと向上している。晴天の昼間などでもディスプレイ表示が見やすくなるはずだ。
同様に、Apple Watch Ultra 2は、最大1500ニトから3000ニトへとアップデート。3000ニトというと、ちょっとしたLEDライト並みの明るさで、Apple Watchだけで暗闇を歩くハメになった時に短時間なら照明として使えそうだ。
ちなみに、懐中電灯の入ってるコントロールセンターの起動は、以前は画面下からフリックアップだったが、watchOS 10からはサイドボタンのプッシュで呼び出すことができる。
デジタルクラウンを回すことで明るさを調整できるし、左右にフリックすることで、点滅にしたり、色を赤にしたりすることもできる。非常用に覚えておきたい機能だ。
その他、watchOS 10で、パレットや、スヌーピーなどの新しいウォッチフェイスも追加されている。Apple Watch Ultra 2では情報量の多いモジュラーUltraというウォッチフェイスも付け加えられている。
変わらないように見えて、Apple Watchは毎年着実に進化しているのである。
(村上タクタ)
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