今年も、すでに現地レポートをお届けしているが、さらに、発売を前に先行レビューの機会を得たので、何回かに分けて、細かいレポートをお届けしていきたい。
※本記事は、9月22日の発売日の前にアップルから借りた端末を元に執筆している。新しいOSの利用についても許可を得ている。
パッケージから再生素材への配慮を感じ取ろう
美しいパッケージに入った電子機器というトレンドを作ったのはiPhoneだったが、そのトレンドを終わらせたのもiPhoneだ。
iPhone 15シリーズのパッケージは去年同様少し質素。それを剥がすのが快感だったシュリンクパックもないし、ケーブルも紙に巻かれている。
iPhoneの発表会でも、再生素材の利用と再生可能エネルギーの利用について時間をかけて説明されていいた。このパッケージも100%再生された木材繊維、または責任ある方法で調達された木材繊維で作られているという。
アルミ素材も多くは再生されたものだし、バッテリーのコバルトも、MagSafeの電磁誘導充電器に使われる銅も、USB-Cコネクターに使われている金も、すべて100%再生素材で作られている。
アップルは年間2億台以上のiPhoneを作っているのだから、わずかな削減でも大きな影響を及ぼす。アップル社のオフィス、データセンター、Apple Storeはすでに100%カーボンニュートラル。
アップル製品を使うということは、そういう大きなムーブメントに協力しているのだと、少し自慢に思っていい。簡素なパッケージはそんなことを思わせてくれる。
ちなみに、パッケージには充電器は含まれておらず、付属品はUSB-C to USB-Cケーブルと、SIMピン、ステッカーのみ。充電器ももう多くの人が持っているだろうし、パッケージを小さくした方が、カーボンフットプリントの低減に意味があるということである。
スタンダードラインのiPhone 15/15 Plusが驚くほど魅力的
今回の新製品は、チタニウムボディのiPhone 15 Pro/15 Pro Max、アルミボディのiPhone 15/15 Plusの4機種。
スタンダードラインであるiPhone 15/15 Plusは、昨年とほとんど同サイズ。とはいえ、わずかに形状は変わっているから、同じケースは使えない。心臓部であるApple SiliconのチップセットはA15 BionicからA16 Bionicと、Proモデルを1年遅れで追いかけている。最近、毎年だいたい、10〜20%ぐらいの進歩が続いているから、昨年からの進歩、Proモデルとのビハインドはそのぐらいだと思っておけばいい。
4800万画素のメインカメラのセンサー中央部だけを使って2倍望遠を演出するという、昨年iPhone 14 Proで使われた技法が使われているので、2個しかレンズがないのに、0.5倍、1倍、2倍と3種類の画角をデジタルズームなしで使えるようになっている。
これにより、「Proの方がいいよね」と思えることがまたひとつ減った。iPhone 15はスタンダードラインでも十分に魅力的だ。
電源を入れると迎えてくれるiOS 17。こちらも、着実に進化していて、さまざまな利便性が向上している。
派手だが結果が不安定な生成AIは表立っては使われていないが、画像認識、音声認識などにNeural Engineは使われており、実は最新のiPhoneの技術の多くを支えているのはAIだ。iPhone 15にも16コアのNeural Engineが搭載されており、処理能力の向上に貢献している。
既存の端末に向けても昨日9月19日の午前2時ごろにローンチされたので、新型を買わない場合にもiOS 17にアップデートしておいた方がいいし、新型を買う場合も前もってiOS 17にアップデートしておいた方がスムーズだ。
去年、iPhone 14 Proシリーズに導入され「好評だった」というDynamic Islandも、さっそくiPhone 15でスタンダードラインに導入された。
フロントカメラのための穴の周りをさまざまなサイズに黒くして通知窓として使うというギミックだが、通知はもちろん、稼働しているアプリの切り替えなどにも使えて、とても便利だ。
コネクターはウワサ通りにUSB-Cに更新された。詳しくはこちらを。
付属のケーブルはご覧のメッシュ素材でカバーされた1mのUSB-C to USB-Cケーブル。
iPhoneは27Wまでの充電に対応しているので、20W以上の電源アダプターを使えば、30分で空から50%までの充電を行う高速充電を行うことができる。
A17 Pro、チタンボディ、5倍ズーム、アクションボタン……とすべてが最高のProモデル
チタニウム製のボディを持つiPhone 15 Pro/15 Pro Maxは、サイズがわずかに小さくなっており、角Rが大きく、手にとてもフィットする。USの発表会に行っていたメディア同士で語り合った時に、常に一番に話題になったのはこのことだった。
iPhoneは、その16年の歴史の中で、丸くなったり、角張ったりを繰り返しているが、iPhone 12で角張ったスタイルになったのが、また手に馴染む曲面を取り戻したともいえるだろう。このRのことをコンツアー(輪郭)と言うらしい。
Proモデルの購入を予定されていない人も、ぜひ機会があったら握ってみて欲しい。実に手に馴染む感触なのだ。
Dynamic Island採用で、ディスプレイの差はさらに縮まった
ディスプレイはどちらもSuper Retina XDRディスプレイというOLEDで、非常に発色が良く、200万:1というコントラスト比を持つ。
ピクセル数はiPhone 15と15 Pro、15 Plusと15 Pro Maxは同じだが、Proモデルは最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートを持つPro Motion対応で、常時表示にも対応している。
簡単に言えばどちらも最高レベルのディスプレイでサイズも同じだが、Proモデルの方が少し優れている点がある。
ディスプレイサイズは同じだが、プロモデルの方が本体縁ギリギリまで広がっている。これにより、Proモデルの方が本体サイズをわずかに小さくできている。ほんのわずかな差だが。
A17 Proチップセットと5倍望遠カメラ
Proモデルには、半導体技術で世界のトップを独走する台湾のTSMCが製造した、3nmプロセスで製造されたA17 Proが搭載されている。こちらのベンチマークは発売されるまで取ることができないので、後日のレポートとさせていただこう。
一番の注目点である5倍望遠カメラについては、こちらにレポートしたのでご覧いただきたい。
またアクションボタンについても、近日独立した記事を書こうと思っている。これも便利だ。別途そちらを参照いただきたい。
可能性広がるUSB-Cコネクター
最後にUSB-Cコネクターを試用してみた。
Thunderbolt接続のSSDを接続したところ認識しなかったが、USB-C接続のSSDは認識してくれた。このポートは4.5Wしか供給できないので、その関係かもしれない。
1TBのSSDを認識したので、これはとても便利だと思う。
動作速度などについても、後日検証してみたい。
充電速度は実測で、8.2V×2.9A=23.78Wをマーク。iPhoneはバッテリーの状況を見ながら流す電力を調整するので最大で27Wという話は真実味がある。20W以上のアダプターを使えば、空の状態から、約30分で50%の容量まで充電できる。
スタンダード、Pro、どちらも安心してお勧めできる
とりあえずのファーストインプレッションということで、とりとめのないレポートになってしまったが、全体の印象は非常に良い。
Proモデルのチップセットは3nmという最高レベルのものに進化したし、チタニウムのボディは軽く美しく、手触りもいい。5倍ズームもインパクトがあるし、それ以上に4800万画素のメインセンサーがいい仕事をしてくれる。やっぱり、iPad、Macまで俯瞰して見ても、iPhoneのProモデルがアップル製品のフラッグシップなのだと思わせてくれる。
しかし、iPhone 15シリーズも、チップセットの進化と、メインセンサーをクロップすることで2倍望遠を実現したことにより、かなり便利な存在になった。ディスプレイも遜色ないし、各所でProモデルに一歩譲る設定にはなっているが、致命的な差はない。映像や写真のプロを目指すのでなければ、iPhone 15シリーズを買っても後悔はないと思う。
どちらも、お勧めできる新製品だ。
(村上タクタ)
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