ThunderVoltが考える、EVのメリットとデメリット
さまざまなEVに試乗して感じた、ThunderVolt的なEVのメリットとデメリットを列記してみよう。
メリット===========================
○重心配分の自由度が高いので、優れたハンドリングを得られる可能性がある。バッテリーを床下に敷き詰めれば、エンジン車では得られないレベルの低重心を実現できる。
○トルクレスポンスに優れて、瞬時に大トルクを得られる。滑らかで、かつスナッチなどが発生せず、微妙なトラクションのコントロールが可能。
○自宅で充電可能で、かつ太陽光パネルがあれば、かなりリーズナブルにエネルギー補給が可能。
デメリット==========================
×大パワー、超航続距離を得ようとすると、大電流が必要で、バッテリーが巨大になり重くなる。
×やっぱり、航続距離が足りない。連休などに充電しながら行動しようとした時に、充電ステーションが混んでたらかなり困ったことになる。
ThunderVoltは趣味メディアなので主に趣味性について書いた。
そもそも、EVはエンジン車より本当にエコなのだろうか? バッテリーの製造、廃棄にには大きな環境ダメージが発生するそうだ。原発を推進できなくなった今、EVにチャージする電力も、火力発電に大きく依存することになる。当初ほぼ無料だった、充電ステーションでの充電も安くなくなっている。充電器の設置や、EV購入には多額の補助金、税金が充てられている。
中古EVというのはエンジン車と違って劣化度合いがわからないから、値が付きにくい。EVはエンジン車より早く廃車にして、新しく作って……というサイクルになっていくのだろう。10年10万kmなクルマに乗る筆者は「作って、捨てて」が前提のEVがエコなのかどうかは疑わしく思っている。すべて太陽光などの再生可能エネルギーで電力を供給できるのなら別だが。
ということを考えると、ハイパワーで重いEVより、軽量コンパクトなサクラは理に適ってる。
筆者の親戚も、地方に住む人は1日20〜40kmしか走らない人が多い
筆者は、帰省で一気に600km走るので、どうしても航続距離が気になるのだが、その前提を取っ払えば、日産サクラはありだと思う。
実家方面の人の生活を見てると、毎日10〜20km先の職場にクルマで行く。買い物をしたり、遊びに行くのもそのエリアだ。東京にいると、関東平野から出るだけで100kmぐらい走らなければならないけど、地方にいたら、10〜50kmも走れば桜のきれいな場所があったりもするし、日常の用は足りることが多い。土地があるなら、長距離を走るためのクルマを別に持っていてもいい。
毎日、10〜20kmの通勤。買い物などもその圏内。長距離を走る時用には別のクルマがある。……そういう生活をしている人は、(筆者の親戚などを考えても)地方にはけっこう多い。戸建てでソーラーパネルを設置できるスペースがあるのなら、ほとんどクルマのエネルギー代は不要になる。
軽いは正義
サクラの航続距離は公称180km。アリアやテスラの500〜600kmからすれば、とても心もとないし、東京に住んでいたら箱根まで行って帰ってくることさえできないが、地方に住んでいれば、近所の山をドライブするのに不自由はない。
搭載されているバッテリーの容量が小さいから、軽い。軽いから、余計なパワーも必要としない。それらを支える大きく重いフレームも必要ない。
女神湖の氷上を走って思ったが、運動体において軽いは正義だ。アリアはたしかにe-4ORCEで全輪をコントロールしてスムーズに走るが、2.2トンの車重はハンドリングに対していい影響を与えるとは思わない。対して、小さくて軽いサクラは、FFとはいえとても扱いやすかった。
EVの欠点としてスピードを出すとパワー感がない(カムに乗る感じがしないとか、コンロッドのフライホイールマスを感じるとか言う意味で)というのはあるが、そもそも地方都市で活用するシティコミューターだと思えば、それも気にならない。ゼロ発進からの俊敏さはEVのメリットだ。
筆者が唯一気になるのは『軽自動車』というセグメントに属することによる衝突安全性に対する不安だ。こればっかりは、自分で試してみるわけにはいかないが……(笑)
コンパクトなエンジン(?)ルームのおかげで広い室内
それを除けば、実にサクラは快適だ。
車体の剛性感もあるし、60km/hまでの速度域では実にトルクレスポンスが良く俊敏だ。高速道路に乗っても昼間の首都高速の速度域ではまったく不満は感じない。
エンジンルーム(?)をのぞくと、当然ながらそこにはエンジンは載ってなくて、コンバーター他、見知らぬ機械が並んでいる。もちろん、最新のクルマだって、自分でメンテナンスできるワケではないが、シリンダーヘッド、タイミングベルト、オルタネーター、エアクリーナー、インジェクター……とそれぞれが何をしているものかは分かったものだが。
エンジンルームが小さくて済むおかげもあって、後席は十分に広い。筆者(身長175cm、体重70kg)が座っても、ご覧のようにゆとりがある。
荷室はさすがに狭いが軽自動車ならこんなもの。
後席を倒せば十分なスペースが現れるユーティリティ性の高さも軽ならでは。
EVは本来サクラみたいな方向に進化するべき
EVの航続距離を伸ばすために、大きなバッテリーを積み、車格を大きくして……という方向性が目立っていたが(先進的で高価なEVを買ってくれるのは、大きなクルマに乗るお金持ちだという事情もあったのだと思う)、そろそろこういう本当に効率的なEVが受け入れられる土壌はできてきていると思う。
いつか、歳を取って、地方に住んだら、日常の足はサクラなんていうのも便利かなと思った。もっとも、本当はロータス7に乗るような趣味的ジジイになりたいのだが。
(村上タクタ)
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