人気のガラスペン、使い方から注目の工房、購入する方法まで解説!

万年筆インクの盛り上がりに並行して人気を集めているのが、透明感とファンタジックなデザインが魅力のガラスペンだ。ガラスは、古くは瑠璃、玻璃、ビードロ、ギヤマンなどと呼ばれ、憧れと親しみを感じさせる素材。これを筆記具に応用したガラスペンは、明治35(1902)年、日本の風鈴職人・佐々木定次郎が考案したと言われている。

近年、日本ではガラス工芸作家が続々とガラスペンを作り始め、先達の人気工房も負けじと機能的で美しい1本を追求している。そのせめぎ合いとインク人気が相まって、ガラスペンは空前のブームを迎えている。何と楽しいことだろう。さぁ、今こそガラスペンを選ぼう。

ガラスペンの使い方。

ガラスペンの仕組みはとても簡潔だ。だから誰でも簡単に使うことができる。楽しく活用するために知っておきたい構造や取り扱いの基本についてまとめてみた。

ガラスペンの構造

ガラスペンの多くはガラス製の軸の先端にガラスペン先を付けている。全身がガラス製なので透明感があり美しい。またガラスペン先を木軸や金属軸などに装着したモデルもある。

ペン先

縦に溝があり、ここにインクを蓄える。溝はまっすぐ入っていたり、ひねった形状のモデルもある。溝の本数は一般的に8~12本。

8本溝のペン先を上から見たところ

1.インクを付ける。

ペン先は細く、衝撃に弱い。「ペン先に余分な筆圧や強いショックを与えないこと」が、使いこなしの超基本となる。

インクを付ける量

ペン先をインクに浸す目安は、ペン先の先端から半分~ 2/3 くらい。インクの付け過ぎに注意。

ボトルの底に要注意

書くことに夢中になると、ペン先の先端をボトルの底に当ててしまいがち。ボトルにはそ~っとペン先を入れる習慣をつけよう。

ペン先の出し入れに注意

ペン先を出し入れする時は垂直ぎみに、ボトルの口に当てないように注意しよう。

付け過ぎたインクは落とそう

もし、インクをたっぷり付け過ぎた時は、ペン先の根元をボトルの口に密着させて余分なインクを落としてから書く。

2.書く。

ペン先の調整具合(または個体差など)によって最適な筆記角度は微妙に違っている。約60 度を基本としてもっとも書きやすい角度を探ってみよう。

筆記角度は約60度が目安

一般的にガラスペンは広い筆記角度に対応するが、ペン先(特に細字)に余計な筆圧をかけないよう高めの角度で使うのがおすすめ。まずは約60度を目安に書いてみよう。

回転させながら書く

ペン先の溝から先端部に流れるインクが面に触れるとインクが引き出される。少しずつ軸を回転させながら書くと、次々に別の溝のインクが使われ、インクフローが一定になる。

原則として垂直では書けない

ペン先の溝は先端まで走っていないので、原則として垂直では書けない。

ペン先の頂点には溝がないので垂直ではインクが届かない

低い角度では筆圧に注意

低い角度だとペン先の横方向から筆圧がかかる。特に細字では注意しよう。

3.ペン先を洗う。

ガラスペンはインクを洗うのがとても簡単。水に浸けただけでインクはすぐに流れ落ちる。洗う時もペン先に細心の注意を払おう。

[1]まずはインクを落とす

水に入れる前に余分なインクを落とす。毛羽立ちが少ないキッチンペーパーがおすすめ。

[2]水に入れる

コップなどに入れた水を用意しておくだけで、机上で簡単にインクを落とすことができる。底にはスポンジをカットして入れておく。ペン先が保護される。安定感のある底が広い容器がおすすめ。素材は柔らかいプラスチック製を選ぶと◎。

[3]水分を落とす

水分を落とす時もキッチンペーパーなどの上に優しく置く。

頑固な汚れは水につけ置き

溝のインクが落ちづらい場合は水につけ置きをする。台所用品の横長な整理トレーなどを活用し、ペン先に負荷をかけないよう横置きにする。また顔料インクなどが固着した場合は、万年筆用のクリーナー液を活用しよう。

即きれいにするなら歯ブラシで磨く

溝の深いところをきれいにするなら歯ブラシを使う。ブラシは極細かつ柔らかめを選ぶ。磨く時もペン先に余計な負荷をかけないよう注意する。付け根から先端方向に、優しく撫でるように行おう。

使わない時のペン先保護

使わない時は、洗った後にペン先をしっかり乾燥させる。その後でゴムチューブなどを被せてペン先を保護をしておく。ゴムチューブがきついと感じる時は、端に切れ目を入れておく。

国産のガラスペンの主な工房を紹介。

最近のブームもあって増えているガラスペンの工房。ここでは、歴史があるパイオニアやガラスペン愛好家から人気を集めている定番ともいえる工房を10か所紹介する。

1.ガラス工房 まつぼっくり

美しい外観と安定の書き味を手の届く価格のガラスペンにまとめ、世を魅了するブランド、「ガラス工房まつぼっくり」。作り手の松村潔さんは理化学ガラス職人として技術を磨いたのち1995年に「ガラス工房 まつぼっくり」として独立し、作家としての活動を開始。2007年からガラスペンを作り始め、後進の育成にも尽力するガラスペン界のパイオニアのひとり。

[定番モデル] ストームグラス+(プラス)

まつぼっくりの定番軸の中でも特に人気なのが天然石を中空の軸に封入した「ストームグラス+(プラス)」。気温や湿度で結晶が変化する神秘的なストームグラスに加え、軸を傾けるたびに天然石が揺れ動いて嬉しくなる。全長約175mm・重量約21g・税込9,900円

【問い合わせ】
ガラス工房 まつぼっくり
https://shop.matsubokkuri.biz

2.川西硝子

現在のガラスペンブームの火付け役の一人が工房を北海道・ニセコに構える「川西硝子」の川西洋之さん。「芸術性と実用性を兼ね備えたガラスペン」を体現したその作品は、文具の枠を超えて広く文具ファンの心を引き付けている。ガラス内を浮遊する川西硝子の象徴的な模様は、インプロージョンと呼ばれるガラス工芸技法で作られている。これは管ガラスの内側に、ガラスを溶かす際に生じる対流を利用して模様を立体的に浮かび上がらせる技法のこと。さらに金や銀を熱して気化蒸着させ、ガラスの表面をコーティングするフューミングの色出しにもこだわり、組み合わせている。

[定番モデル] 稜線 ※写真奥

川西硝子の特徴である立体模様を全体に入れたフラッグシップモデル。グリップ部だけでなく、後端にまで模様を入れ、透明感をいっそう増している。全長約150mm・重量約32g・税込49,500円

【問い合わせ】
川西硝子
http://www.kawanishiglass.com

3.Glass Studio TooS

技法はバーナーワークではなく「吹きガラス」、素材はボロシリケイトガラス(硬質ガラス)ではなく「軟質ガラス」。そんな、現在は少数派の選択肢でガラスペンを制作する日本で唯一のガラス工房が岡本常秀さん率いる「Glass Studio TooS」だ。ダイナミックな幅広ペン先を開発して書く道具としてのガラスペンの可能性を高めるなど、そのオリジナリティーは日々更新され、ガラスペンの世界をますます楽しく広げている。

[定番モデル] +g ever twist clear

Glass Studio TooSの最初のシリーズであり、現在も定番「ever(エヴァー)」シリーズ。「常に、あなたのそばに」という願いを込め、ヴェネチアングラスのステム(脚)に用いられる吹きガラスの技法をデザインに生かしている。このくびれた細工部(アボリオ)に金彩を施したものは「+gシリーズ」、プラチナを施したものは「+pシリーズ」と呼んでいる。

上の写真はリボンニブツインを付けた「+g ever twist clear」。螺旋模様がエレガントなtwistは4本の気泡を入れたガラスを伸ばしながらひねって作られる。リボンニブツインは幅広の線を引くことができるリボンニブに続いて開発された特殊なペン先で、リボンニブの先端部が二股に分かれ、装飾的なダブルラインを楽しめる。全長約205mm・重量約40g・税込12,650円

【問い合わせ】
Glass Studio TooS
www.toos.jp

4.HASE硝子工房

埼玉県坂戸市に工房兼ショップのあるHASE硝子工房は、文具イベントなどでもおなじみのガラスペンメーカー。「HASEさんのガラスペンで、書きやすさにすっかりはまった」というファンが多く、イベントを待ちきれない! と足しげく通うユーザーもいるという。工房にはショップも併設されており、数々のガラスペンが揃う。どのモデルも非常に人気が高く、オンラインショップでは不定期に抽選販売が行われている。

[定番モデル] 彗星(グリーン)

夜空に突然現れ、長い尾を引きながら天空を駆け抜ける彗星をイメージ。握りやすさと心地良さを考えられたフォルムで、中が空洞のため軽量なのも魅力。全長約172mm・重量約10g・税込11,000円

【問い合わせ】
HASE硝子工房
haseglass.thebase.in

5.ガラス工房 aun

岡山県・倉敷の美観地区にショップを併設する人気工房。作家・江田明裕さんの豊かな創作意欲と特殊技法から生まれるボロシリケイトガラスの軸は、背景色によって表情が変化するものが人気。研磨師の小野 拓さんが好みの字幅(EF~BB,C)に仕上げる、まろやかな書き味にも定評がある。

写真左はマーブルシリーズのライトパープル。鮮やかなパープルとムーンストーンのような乳白色、ラメのブルーが溶け合っている。マーブル模様にキラキラと泡が輝き、空気の層を挟み込んだような奥行きを感じるaunの軸。 光に透かして眺めていたくなる。全長約170mm・重量約19g・税込7,700円

【問い合わせ】
ガラス工房 aun
http://edaakihiro.com

6.ガラス工房 LUC

「ファンタジー物語の魔法が使えるような杖」をイメージした幻想的なガラスペンが大人気。作家の直川新也さんは大阪芸術大学でガラス工芸を学び2016年から活動する期待の逸材。2021年4月には大阪・阿倍野区に工房を移し、精力的に制作している。

写真は話題を集めたLUCのオリジナルインク「誰そ彼(たそがれ)インク」の配色(ピンクにブルーラメ)をベースにしたガラスペン。キラキラと輝くダイクロガラス(金属を真空蒸着させたガラス板)と2色の色ガラスを使い、美しいグラデーションにしている。人気モデルのため、イベントやネットショップ(https://naog.thebase.in)で随時抽選販売される。全長約155~160mm・重量約28g・税込16,500円

【問い合わせ】
ガラス工房 LUC
https://naog.thebase.in

7.哲磋工房

ボロシリケイトガラスを酸素バーナーワークで操り、精緻な作品を作り続ける人気工房。製造数が極めて少なく、抽選販売の競争率も常に高い。透明感や手触りなど五感に響くガラスの魅力とペンとしての書きやすさを追求している。

写真はアクセサリーのように身に着けて持ち歩ける指先サイズのミニガラスペンシリーズ「with me!」のオリジナル極太ペン先「ぽちょニブ」付き。ペンシル型、クリスタル型、ボトル型など多様なデザインがある。手作りなので色、形状も1点ずつ異なる。価格も各々。販売はイベント参加時を予定しているが抽選の可能性も高く、ホームページ、SNSの告知を注視したい。全長約60~80mm・重量約13~18g・税込16,500~27,500円

【問い合わせ】
哲磋工房
www.studio-tessar.com

8.ひとつ房

沖縄在住のガラス工芸家、山田妙子さんのブランド。1994年から活動し、東京国立博物館のミュージアムグッズなども手がけてきた。茶道具や動物ペンダントなども制作しており、その経験とアイデアがガラスペンにも生きている。作るたびに色柄が微妙に変わるため、どれも言わば1点もの。

写真はアニマルシリーズ「氷上のペンギン」。四層にガラスを重ねて作った氷柱がリアル。そこに佇むペンギンが愛おしい。2 色使いのペン先も涼し気。全長175mm・重量約34g・税込22,000円

【問い合わせ】
ひとつ房
https://hitotsubou.com/

9.ガラス工房 スタジオ嘉硝

作家の田嶋嘉隆さんが福井県坂井市に構える工房。ガラス工芸材料輸入商社に長年勤務した田嶋さんが、豊富なガラス材料の知識とガラス工芸技術を生かし、ボロシリケイトガラスだけでなくソーダガラスのガラスペンも制作している。ソーダガラスはボロシリケイトガラスに比べてガラスの扱いが難しいが、華やかで美しいカラーリングが魅力だ。

写真は、色数豊富なブルズアイ社(USA)の工芸用ソーダガラスを使用し、金箔やダイクロガラス(光彩)でキラキラを加えて四季折々の色彩を表現したシリーズ「ソーダガラスペン シーズンリミテッド」。その中の夏柄をピックアップしたもの。全長170~173mm・重量約25~28g・税込13,200円

【問い合わせ】
ガラス工房 スタジオ嘉硝
http://studio-kasho.com

10.Kokeshi(コケシ)

美術作家としての創作と並行し「使う人が主役となる芸術品」であるアクセサリー制作を行いながら、ぐり工房での活動を経てガラスペン制作を探究。軸のガラスの造形からペン先作りまで時間をかけてこだわり抜き、Kokeshiブランドを立ち上げた。透明の色ガラスと不透明の色ガラスのコントラストをリボンケーンの模様で描き、飴をイメージした美味しそうな色使いが特徴。手にして書き心地良く、飾っていれば眺めて美しいガラスペンが好評を博す。

Kokeshiのガラスペンを象徴する、リボンケーン軸。ケーンは「杖」を意味し、ガラス軸の内部にリボンが螺旋を描く透明感が魅力だ。写真右から2本目(ブルー)はワイングラスのステム(脚)を連想させるデザインに、ポップな装飾と色使いをミックスし、清々しい空色の青が美しいリボンケーン Lollipop Long スカイブルー。全長約163mm・重量約20g・税込18,700円

【問い合わせ】
Kokeshi
https://www.emifujita.com

ガラスペンはどんなインクを使えばいい?

ガラスペンで使うインクは万年筆インクが一般的。洗浄の手間がかからず、内部で詰まる恐れのないガラスペン顔料インクでもラメ入りインクでも、ここぞとばかりに楽しむことができる。

特にラメインクは光り輝くラメインクはその美しさから、SNS全盛の現在「映える」として一層人気が高まっている。ラメを濃厚に入れたド派手なガラスペン用インクもあるので、盛って光らせて、思う存分ラメを楽しもう。「TONO&LIMS」はラメ入りなどガラスペン推奨のインクが豊富で、ガラスペン工房とのコラボインクも多くガラスペンユーザーから人気を集めているので注目だ。

ダイアミン/ブルーエディション シーン&シマーリングインク|ブルーエディションは、2019年冬に人気を博したインクベントカレンダーを個別販売したもの。シーン&シマーリングインクはフラッシュインクにラメを入れたもので、万年筆ではつまりに注意が必要だが、ガラスペンならばラメの輝きとフラッシュの変化の両方を存分に楽しめる

また、香り付きの万年筆インクもガラスペン向き。内部やペン芯に匂いが残るのが心配な方はぜひともガラスペンで挑戦してみよう。

いま最も注目されている筆記具と言って過言ではないガラスペン。これまた注目を集め様々なオリジナルやコラボ商品が登場しているインクをより一層楽しむのにも最適なツールだ。手ごろな価格のものもあるのでまずは1本、手に入れてみてはいかがでしょうか?

(出典/「趣味の文具箱vol.61、60、59、58、57、56、53」)