「純烈もいいけどキミの奥さんと歌いたい」LiLiCo×松崎しげる、デュエット曲誕生裏話【LiLiCo連載vol.4】

  • 2023.08.15

雑誌『昭和45年女』からWEBメディア『Dig-it』にお引っ越ししたLiLiCoさんの連載。雑誌ではゆかりの方々との対談企画が大好評でしたが、今回、WEB版での初の対談が実現! お相手は、9月6日にデュエットソング「これを愛と呼ぶのか?」をリリースする松崎しげるさん! 共通点が多く、魂の共鳴を感じる二人のパワフルトークには、昭和45年女たちを元気にするエピソードがいっぱいです。

年末の定番になる予感!? 新しいデュエットソングが誕生!

──『黒フェス2023~白黒歌合戦~』が開催される、9月6日“松崎しげるの日”に、松崎しげるさんとLiLiCoさんのデュエットナンバー「これを愛と呼ぶのか?」が配信リリースされます。この曲は、スウェーデンの国民的歌手、モニカ・トーネルとラッセ・ホルムが1986年にデュエットした「E’ de’ det här du kallar kärlek」のカバーです。LiLiCoさんはこの曲をどうしても松崎さんと歌いたかったそうですね。

LiLiCo:私のお母さんは、アイロンがけをしているときに、お母さんのお母さん、私にとってのおばあちゃんが日本から送ってくれるレコードをずっと聴いてたんです。いろんな歌手の歌が入っているオムニバス盤だったんですけど、2曲目が「愛のメモリー」で。当時の私は、日本語がまったくわからなかったので、“音”としてしか理解してなかったんですけど、その後、18歳で日本に来て、何年かしたのちに松崎さんが「愛のメモリー」を歌っている場面を見たんです。それが子供の頃の記憶と合致して、「この人が歌ってたんだ!」って。日本にも低音にこんなにパワーがある男性ボーカリストがいるんだということをあらためて知って、「この人となら『E’ de’ det här du kallar kärlek』が歌えるんじゃないかな? と思うようになったんですよ。

松崎:堅苦しく松崎さんじゃなく、しげるちゃんって呼んでよ!

とってもフレンドリーな“しげるちゃん”

LiLiCo:えぇ~!? それはハードルが高いです! いきなりは無理なので、まずは“しげるさん”からでいいですか?(笑)

松崎:はい、どうぞ(笑)。俺もね、LiLiCoをテレビで観る度、「この子いいな」って思ってたんだよ。こんなパワーのある女の子、なかなかいないなって。

LiLiCo:でも、なかなかお会いする機会がなかったんですよね。私がずっと出たいって思っていた『黒フェス』にもなぜか純烈が先に出ちゃうし(2020年)。小田井(涼平)に、「私、松崎さんとデュエットしたいんだから、アピールしておいて! 男性で黒い、女性で黒いって言ったら誰!?」って詰めてしまいました(笑)。

松崎:俺も、「純烈もいいけど、俺はキミの奥さんと歌いたいんだよね」って彼に話した(笑)。だから、J-WAVEのスタジオでLiLiCoを見かけたときに、すぐに声をかけたんだよ。

松崎さんとのデュエットという念願を叶え、笑顔がはじけるLiLiCoさん

LiLiCo:お会いすることができたからといってすぐにデュエットの話になったわけではないんですけどね。このプロジェクトをどうスタートさせたらいいだろうと考えていたところ、音楽特番の話がきて。私が2021年に出演したミュージカル『ウェイトレス』を観てくださった『ミュージックフェア』のスタッフが、「LiLiCoさんの歌に惚れました。今度私たちが作る特番に出てください」というラブレターをくださったんです。それで私、「スウェーデンの歌を松崎しげるさんとデュエットしたいんです」という提案をしたんですよ。そうしたら「おもしろいじゃないですか!」と言っていただけて。

松崎:この企画を聞いたとき、LiLiCoからの熱を感じてすごくうれしかったんだよね。音楽って、人とのつながりって大事じゃない? 「絶対この人と一緒に歌いたい!」とかさ。

LiLiCo:「E’ de’ det här du kallar kärlek」は、ほかでもない、しげるさんとじゃなきゃ絶対にダメなんですよ。だから、タイミングがくるまで待とうと思ってたんです。なぜここまでしげるさんにこだわるのかって言ったら、オリジナル歌手のお2人が嫉妬するぐらい、オリジナルのグルーヴにしげるさんのパワーが合うと思ったから。私たちのカバーを聴いたら、ラッセ・ホルムもきっと、「日本にもいたんだね、ハスキーでカッコいいボーカリストが」って言うはずです。

松崎:うれしいねぇ~。LiLiCoの歌も最高だったよ! 番組やレコーディングで歌ったとき、自分が発する声のエネルギーが、LiLiCoを通して返ってくる感覚があってね。そのぶつかりあいがすごく気持ちよかった。それはきっと、LiLiCoがディレクションした曲の力もあったと思う。外国の曲を日本語訳してメロディにのせるのってすごく大変なの。俺たち日本人歌手はいつもそれで苦労するんだけど、今回の曲は譜割もハマッたし、歌詞もすごくよかった。

LiLiCo:これまで、英語の歌詞を書いたことは何度もあったんだけど、日本語は初めてだったので、いろいろ考えました。でも、タイトルだけは3秒で出てきた(笑)。

松崎:原曲のタイトルには“?”はついてないんだよね。

LiLiCo:はい。原曲の直訳に“?”をつけて、「これを愛と呼ぶのか?」にしました。なぜかというと、単なるラブソングにしたくなかったんです。この曲、とにかく聴いていてハッピーになれるし、年末のカラオケで盛り上がるデュエットソングを目指したかったんですよ。

松崎:カラオケのデュエット定番といえば、甘ったるくて歌うのが恥ずかしい曲が多いからね(笑)。でも、この曲は違う!

LiLiCo:そうそう。ブラウスの中に手も入れないし(笑)。でも、これだけじゃないですよ。しげるさんとデュエットしたい曲、まだまだいっぱいあるので、これからも元気で現役を続けてくださいね!

デビュー53年、日本中に元気を届け続ける松崎しげるの歌

──松崎さんは、LiLiCoさんが生まれた1970年にデビューされました。デビュー53年、いろいろなことがあったと思います。

松崎:1968〜69年は、学生紛争があった大変な時代だったでしょ。俺はそのときちょうど大学生だったけど、2年ぐらい学校に行けなかったんだよ。だから、歌い手になるつもりなんてなくて。もともと、ディレクションに興味があって、日芸(日本大学芸術学部)に入ったしね。

LiLiCo:なる気がなかった歌手になったのはなぜだったんですか?

松崎:1968年にミルクっていうバンドをやってたんだけど、そのとき、宇崎竜童さんにスカウトされたの。彼は俺のマネージャーだったんだよ。

LiLiCo:えー!!!!

松崎:ミルクで活動したのは2年間だったんだけど、メンバーには、のちにガロを結成する日高(富明)と堀内(衞)がいて。だから、「マツも(ソロで)いけよ!」って後押しされてね。意気揚々とデビューしたんだけど、ガロだったり、周りの仲間たちが俺の上をヒューヒューと飛んでいっちゃった(笑)。

──デビュー後はしばらく“売れない時代”をご経験されています。

松崎:デビュー当時はレコードキャンペーンがすごく多かった時代でね。銀座・山野楽器の真ん前にできたマクドナルド(1号店)のあたりで、ミカン箱みたいな箱の上に乗って、カラオケ一発でガンガン歌ってたねぇ。

LiLiCo:私が歌手デビューしたのは1992年で、しげるさんの20年以上あとですけど、山野楽器の前で歌ってました! やってきたプロモーション活動は変わらないんですね(笑)。

松崎:地方のレコード屋さんの前で即売会をやったり、キャバレーやスナックに営業に行ったりね。一応、マネージャーもついてはいたんだけど、バンドの譜面やらサイン色紙、レコードを全部自分で持ってあちこち回ってたなぁ。

LiLiCo:私もカセットテープを自分で持って地方を回ってました。たまに、レコード会社から違う歌手のレコードが届いたりなんてこともありましたけど(笑)。

松崎:俺なんか、営業先のレコード店に行ったら、「松崎しげこさんご来店」って書かれてたことがあったよ(笑)。

LiLiCo:そこでへこたれたりはせず、「どうも〜! しげこです〜!」ってステージに出て行ったんでしょ?

松崎:あっはっは! 「いつか見返してやる!」とは思ったけどね。そうやって、悔しい思いや大変な思いをしたこともたくさんあったけど、苦労とは思わなかったかな。行った先でみんなで騒ぎながら飲むのも楽しかったしね。

今日初めて聞いた話もいっぱい。LiLiCoさんは「えー!」の連続でした

──その後、松崎さんは、コマーシャルソングを歌う歌手として活躍されています。

松崎:言ってしまえば、自分の名前や顔が表に出ない裏方歌手だけど、「あんたの声は一日に50回も60回も聞こえてくる」って言われたときはうれしかったよ。だから、こういう歌い方もアリなんだなって思うようになってたんだけど、さすがに芸能界が放っておかなかったね(笑)。ルックスにプロポーション……まあ、それがいいわけではなかったけど(笑)。

LiLiCo:「愛のメモリー」(1977年発売)で状況が変わったんですよね? 53年も誰もが知っている歌手として活動しているって本当にすごいと思います。

松崎:あの曲は、スペインの「マジョルカ音楽祭」のために作られて、現地で歌って、最優秀歌唱賞をもらったの。総合でも2位になって。フランシス・レイやポール・モーリア、ミシェル・ルグランが審査員で、その場でジャッジされたんだよ。日本の音楽祭とはまったくシステムが違う。

LiLiCo:それはすごい!

松崎:そう思うでしょ? 俺も、意気揚々と帰国したわけ。でも、記者会見もないし、羽田空港ではフラッシュのひとつもたかれなかったよ。「あれ? こんなものなのか?」と思ったね(笑)。

──その後、「愛のメモリー」は「グリコ アーモンド・チョコレート」のコマーシャルソングに起用されて大ヒット。いまだにいろんな方がカバーするスタンダードになりました。

LiLiCo:私、いつも思うんですけど、勝たなくていいんですよ。長く続けることが大事。埼玉西武ライオンズの応援歌(1979年発売「地平を駆ける獅子を見た」)もずっと使われ続けているし、それがしげるさんのすごいところだと思います。

松崎:ライオンズが優勝すると、所沢(本拠地)の街中で「ウォウォウォ ライオンズ〜」って流れるんだよね(笑)。

──ほとんどの所沢市民がソラで歌えると思います。

松崎:優勝セールをやってるお店の店員さんから、「朝から晩までこの曲がずっとこの曲がかかってて。耳タコです」って言われたこともあったよ(笑)。でも、もはや、この曲ができたときのことを知ってる現役選手はもういないの。当時も、俺より年上だったのは、野村(克也)さんや田淵(幸一)さんぐらいだったかな。

みんなのチャレンジを後押しする歌を80歳まで歌うよ!

──ここまでお二人のお話を聞いていて思ったのですが、“ラテン気質”が共通しているような気が……。

松崎:ああ、それはそうかもしれない。俺は江戸川区の柴又の隣町で育ったから、下町特有のラテンのようなノリはあるのかもね。

LiLiCo:私は日本に来ていちばん最初に住んだのが葛飾区なので、やっぱり、しげるさんとは環境が似てるのかも! それと、似ているといえば、色黒な人って元気なんですよ(笑)。

松崎:LiLiCoはいつも本当に元気だよね。「これを愛と呼ぶのか?」のレコーディングをした翌日、テレビを観たら、朝からLiLiCoが出てるわけよ。元気な顔を見て、昨日、歌い終わったあとに何を思って寝たのかな? なんて考えてうれしくなっちゃったよ。

──人を元気にするパワーがあるんですね。

松崎:どうしても、枠に納まっちゃう人って多いでしょ? LiLiCoにはそれがないからなんかうれしくてさ。

LiLiCo:日本は“いい子”でいないといけない国。なんでもあって豊かなのに、幸福度ランキングが47位でしょ(2023年度調査より)。それって、すぐに人の幸せばっかりを見てうらやましがるからだと思うんです。ハッピーは自分の中にあるのに、それを見ず、幸せはどこからか飛んでくると思っている。だから私、そういう風潮を少しでも変えたいと思って、ウザイと思われてもいいからとにかく自分から動こうと思って生きてきたんですよ。

松崎:共通といえば、俺は酒が大好きで。

LiLiCo:はい。私も大好きです(笑)。

松崎:それなのに、まだ、一度も一緒に飲めてないのよ。俺の親友の西田敏行の方が全然先に飲んでるんだから。

LiLiCo:西田さんには、ベッド・ミドラーの「The Rose」を一日に何回も歌わされます。「りりちゃ~ん、歌って」って(笑)。うれしいですよね、好きな同士がつながってるって。しげるさんとはぜひ、『黒フェス』が終わったら乾杯させていただきたいです!

──今年の『黒フェス』には念願かなってLiLiCoさんも出演されますもんね。

LiLiCo: “松崎しげるの日”にもう9回も開催されてるんですよね。記念日認定って、みなさん、いろいろネタを考えて申請するじゃないですか。個人の日ってあんまりない気がするんですけど。

松崎:事務所から「9月6日を“松崎しげるの日”にしたいっていう連絡が日本記念日協会から入りました」って聞いたときはふざけてるのかと思ったよ(笑)。

──デビュー45周年にあたる2015年に認定されて。その年から『黒フェス』が開催されています。

松崎:フェスに呼ばれることは、それまでに何度もあったけど、まさか自分が主催するとは思わなかったよ。でも、せっかくだし、9月6日は毎年やろうと決めて。俺はこれまで、みんなにパワーを与える役割を担ってきたと思ってたの。でも、『黒フェス』に初回から出てくれているももクロ(ももいろクローバーZ)が一生懸命頑張ってる姿を見て、逆に若い子たちから俺がパワーをもらってることに気付いた。ここ3年はコロナ禍で思うようにできなかったけど、今年は、やっと生のステージでみんなとジョイントできるのがうれしい。LiLiCoも出てくれることになって、「これを愛と呼ぶのか?」を披露できるのがすごく楽しみだよ!

LiLiCo:ありがとうござます! 配信リリースが始まってるタイミングだし、ステージから、「はい、みなさん、携帯を出して今すぐダウンロードしましょう!」って案内しようかな(笑)。では、そろそろ対談の締めを。しげるさんがデビューした年に生まれた“昭和45年女”にエールをお願いします!

松崎:戦後のバラックを見て育った俺にとって、日本の高度成長期にあたる1970年代って、あまりの変わりようにビックリした時代だったんだよね。街並みが変わっていって、楽しくて楽しくてしょうがなかった。そんな時代に生まれたLiLiCoたちは、いいものをいっぱい見て育ってきてると思うんだよね。だから、これからも、どんどん前に出て行ってほしい。それをLiLiCoが先導していってさ。チャレンジすることには失敗やリスクももちろんあるけど、何かを恐れていたら何もできないでしょ。俺は、そんなみんなの後押しをできるような歌を歌っていけたらいいなと思ってるよ。今のところ、80歳までは元気に歌っていきたいと思っているからね!

 

松崎しげる×LiLiCo

「これを愛と呼ぶのか?」

Digital Single 2023年9月6日(水)発売

作詞:L.Holm / 日本語詞:LiLiCo 作曲:L.Holm 編曲:鈴木豪

『黒フェス2023~白黒歌合戦~』
2023年9月6日(水)開催
東京・豊洲PIT
開場/16:45 開演/17:30
出演:松崎しげる、ももいろクローバーZ、nobodyknows+、THE冠、超ときめき♡宣伝部、LiLiCo、華原朋美、丘みどり、OCTPATH
and more… ※順不同

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

Lightning, CLUTCH Magazine, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

ランボルギーニ三浦

Lightning

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

ラーメン小池

Lightning

アメリカンカルチャー仕事人

ラーメン小池

上田カズキ

2nd(セカンド)

アメリカントラッド命

上田カズキ

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

金丸公貴

昭和50年男

スタンダードな昭和49年男

金丸公貴

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

杉村 貴行

2nd(セカンド)

ブランドディレクター

杉村 貴行

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

趣味の文具箱 編集部

趣味の文具箱

文房具の魅力を伝える季刊誌

趣味の文具箱 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部

昭和45年女 編集部

昭和45年女

“昭和カルチャー”偏愛雑誌女子版

昭和45年女 編集部

昭和50年男 編集部

昭和50年男

昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50年男 編集部