福島県白河市にある、バッティングセンター横の「ボクらがつくったファミレス」

  • 2024.11.21  2024.09.24

福島県白河市のロードサイドに30年以上続くバッティングセンターがある。そのすぐ隣に建つのが『カフェ・マンデー』。レトロ調なのになぜかスタイリッシュさとフレッシュさを身に纏う個人経営のファミリーレストランだ。オーナーは鈴木英生さんと相棒の鈴木拓央さん、2人がこのレストランにたどり着くまでを聞いた。

『CAFE monday』オーナー・鈴木英生さん(左)、鈴木拓央さん|2000年生、福島県白河市生まれ。同じ高校でバレーボールの福島県総体で優勝経験あり。英生さんは上京し、デザインからグラフィックまで学んでいるときに、BIG BABY ICECREAMのオーナーである吉田康太郎氏に出会い。そこで働くことで、いずれ自分たちの店を出したいという思いに。2023年に地元の白河で『CAFE monday』をオープンさせた

故郷の福島県白河市に 自分たちが欲しかった店。

レトロなムードの喫茶店、またはファミリーレストランを思わせる『CAFE monday』。キッチン上にある雰囲気抜群のこのメニューサインは店舗用看板に英生さんが撮った写真をプリントアウトして貼ったもの。DIYなファミレスなのだ

福島県白河市のロードサイドに30年以上続くバッティングセンターがある。そのすぐ隣。「カキン」と打撃音が聞こえる場に建つのが『カフェ・マンデー』だ。

やさしい暖色系のライトを灯らす店内、並んだパイプとビニールレザーのイス、おすすめメニューがオムライスやソーダフロート……と、隣に負けず劣らずレトロ調。なのに、この店はスタイリッシュさとフレッシュさも身に纏う。

なぜか?

つくった2人の存在が大きい。鈴木英生さんと相棒の鈴木拓央さん。小学校からの幼馴染の彼らは大学を出たばかりの24歳。彼らが去年に立ち上げた店なのだ。

「白河で生まれ育ち、ずっとこういう店が欲しかったんです。カッコいいけど入りやすく誰しも和める。真のファミリーレストランみたいな店を」(英生さん・以下同)

右手には併設してバッティングセンターがある、実に味わい深いロケーション。打席に立ったあとに寄る常連さんも多い
福島県白河市のロードサイドにある約90㎡ほどの店。実は元ゲームセンターを改装だ。広めのオープンキッチンでカウンターも低くしたのは「お客さんとの距離を近くしたいから」とか

ドキュメンタリー番組が、 今に続くトリガーになる。

きっかけは7年前。高校生だった英生さんは偶然みたNHKの『プロフェッショナル〜仕事の流儀』に小さく背中を押された。

「旧い建物をリノベーションしてカフェなどにつくりかえる建築家を追った回で、街の賑わいにもつなげていた。素敵だなと感じた」 進路がおぼろげに定まった。『建築の仕事がしたい』『白河の町をもっとよくしたい』。 そう考え、空間デザインを学ぶため東京工科大に進学した。キャンパスは蒲田、3駅となりの新丸子駅で一人暮らしをはじめた。

買い物も食事も、カフェチェーンでのアルバイトも。のんびりした白河から出てきた18歳にはすべてが垢抜けて見え、刺激的だった。ただだからこそ、ふと疲れる瞬間もあった。そのせいか授業とバイトを終えたある夜の帰り道、新丸子の商店街で眩しいほどに輝く一軒の店に吸い込まれた。『ビッグベイビーアイスクリーム』。吉田康太郎さんがオーナーを務めるクラフトアイスの名店だった。

「ダイナーみたいな店で質の高いアイスを出す。しかもスタッフがフレンドリーなのが理想的で」

バイト帰り、理想の店に立ち寄るのがルーティンとした。「こういう店が地元にもあったらいいのに」「自分もこんな店をつくってみたい」。ピスタチオアイスとコーヒーを前に、カウンター越しの吉田さんに夜中まで話した。

ただルーティンは1年ちょっとで強制終了する。2020年、コロナ禍で大学の授業がリモート化したからだ。上京者の多くが実家に戻った。英生さんもその一人だった。だからって、じっとしているのはゴメンだった。

3つ上の兄と近所の元倉庫を借りて那須のアンティークショップや雑貨店、あるいは近隣の農家に声がけ。委託販売でそれらを売る「朝市」を主催したのだ。

「近隣の人がおもしろがって結構来てくれた。嬉しかったですね。『活気ある場を当事者としてつくりたい』思いがここで固まった」

そして1年が経ったころ、1本の電話が入る。「うちで働かないか?」。兼ねてから働きたいと憧れていた『ビッグベイビーアイスクリーム』の吉田さんだった。「自分の店をつくるノウハウを学べる!」。2つ返事でイエスと答えた。再び上京。今度はカウンターの向こう側に立ち、アイスを売り、常連客とのトークに花を咲かせた。

間もなく拓央さんもスタッフとして誘って同僚になる。上京後、友人たちと、都内のカフェ巡りをしていた仲間のひとりでもあった。「この店いいね」「雰囲気が好きだ」なんて評価をするセンスが不思議といつも一致したからだ。 「白河に店をつくるなら拓央くんとだなと。彼は料理も好きだったし、町への思いも強かったし」

2年間、『ビッグベイビー〜』で働いて、2人の思いはさらに強まった。機会をみては白河へ戻った。いい店舗物件が出ないか探すためだ。ただ気に入る物件は見つからない。考えてみたら資金もなかった。ところが幸運が訪れる。

調理は拓央さんをメインにしながら2人で手掛ける。タイ・ファンクが流れる中、若い2人が一所懸命バーガーやパンケーキをつくる姿はそれだけで心地よい。「バタバタと料理している姿もエンターテインメントとして楽しんでほしい(笑)」
旧い喫茶店のイスやスピーカーなどを揃えて独特の世界観に。大学で空間デザインを学んだノウハウを活かす

バッティングセンターの横に 家族の新たな賑わいを。

『元ゲームセンターの物件がある。ココで店をやってみないか?』

地元で会社経営をする従兄弟が声をかけてきた。「白河で何かしたい」。そんな英生さんの思いを知り、バッティングセンター横の物件を購入、託してくれたのだ。

「ありがたい話でしたし、即座に決めました。元ゲーセンをリノベーションするのも何か良かった」

『ビッグベイビー〜』のようなおしゃれな店づくりは“らしくない”かな、と感じた。白河の町と距離が出すぎるのも避けたかった。

「そこで旧い喫茶店をイメージしました。白河や那須で僕が行った良い店って喫茶店だったから」

メニューも気取り過ぎず、バーガーやオムライスなどの馴染み深いものを推した。店名の『カフェ・マンデー』は学校や職場に憂鬱な顔して行きがちな月曜日のことだ。寄ってくれるだけで少し心が晴れる。そんな場にしたかった。

2023年7月。こうして『カフェ・マンデー』は誕生した。

「洒落た店ができたね」「グルメバーガーが美味しいらしい」。噂が広まり、老若男女がすぐに来てくれた。ただ最も嬉しいのは「ひとりで行っても落ち着く」「ムダ話にも付き合ってくれる」「あそこに行けば、カウンター越しにあの2人がいる」なんて評価だ。

「僕らが『ビッグベイビー〜』にぐっときた感覚。そういう場所にしたくてはじまっていますから。フランクに話しかけやすく、オープンな雰囲気を心がけています」

格好つけ過ぎず心地よさを意識して。今日も明日も月曜日も、2人はカウンターの向こうに立つ。それこそが2人の仕事の流儀だ。

どこか懐かしく、しっかり美味い、2人が生み出す極上ファミレス・メニュー。

ハンバーガーからオムライスまで、『CAFE monday』が提供するのは、老若男女が満足できる食事&ドリンクメニュー。あの名店やあのレストランからインスパイアされた絶品レシピも2人が再現している。普段使いに最高だけど、わざわざ出かける価値もありあり、なんです。

HOMEMADE BACON CHEESEBURGER

自家製パティ&ベーコンの濃厚な肉汁を、近所の老舗『山田パン』に特注した素朴なバンズがキャッチするバランス最高の絶品バーガー。1100円

HONEY MUSTARD CHICKEN

甘じょっぱさがライスにもパンにもビールにもいけるハニーマスタードチキン。ザワークラウトとの相性もベストです。6P・650円

ICECREAM PANCAKE

古巣の新丸子『BIG BABY ICECREAM』のバニラアイスをトッピングしたスペシャルなパンケーキ。白河で毎日食べられる贅沢よ。700円

【DATA】
CAFE monday
福島県白河市明戸168
TEL080-2366-0729、11時~22時 水曜休
Instagram:@cafemonday_

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning 2024年10月号 Vol.366」)

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