半世紀を越えてもなお愛されるワーゲンバスの魅力をその系譜でディグってみる。

  • 2024.03.05

VW(フォルクスワーゲン)の歴史をさかのぼるとタイプ1ことビートルと並んで重要なモデルがタイプ2ことワーゲンバスの存在。愛くるしいデザインと、シンプルなスタイルで生まれ、気がつけばその歴史は70年以上という長寿車。時代は変わり、スタイルや性格は変わったけれど、その歴史を見ながらワーゲンバスを掘り下げてみる。

正式名称はVWタイプ2。トランスポーターとして開発された商用車がその始まりだった。

先に誕生したタイプ1(ビートル)をベースにキャブオーバー型のバンという発想で生まれたのがタイプ2。タイプ1同様にリアエンジン、リアドライブを踏襲することで、広い室内空間を持った商用のトランスポーターとして生まれた。その実力は商用車のバンという枠をこえて、ピックアップトラックや、乗用モデル、社外のコーチビルダーが架装したキャンピングモデルなどに派生しただけでなく、その実用性の高さからドイツだけでなく世界中に輸出された。現在もその系譜は進化を続け、トランスポーター(ドイツ語ではトランスポルター)というカテゴリーでT1~T7という世代別に整理されている。今も商用モデルから乗用のバンまで存在し、1995年以降はVWの商用車部門の取り扱いになっている。

第1世代 T1 1950~1967年 アーリーバスの愛称で知られるもっとも愛嬌のあるデザイン。

タイプ1のノウハウを商用車ベースに強化し、ラダーフレームにリアエンジを搭載するカタチで生まれた第1世代。エンジンはタイプ1と同様の空冷水平対向4気筒(初期は1131cc)をリアに搭載するレイアウトで誕生した。

全長はタイプ1とそれほど変わらないながらも、3列シートを可能にした床面積を確保できるキャブオーバースタイルが愛嬌のあるフォルムにひと役買っている。日本には1953年から正規輸入がされていたという歴史もおもしろい。

後年になって付けられた愛称はアーリーバス。今や第1世代はクラシックカーの仲間入りをしているので、好コンディションの個体はかなりの価格で取引されている。

第2世代 T2 1967~1979年 アメリカではヒッピーやサーファーに愛された第2世代。

湾曲した1枚のフロントガラスに一新されたことからベイウィンドーやレイトバスという愛称で呼ばれる第2世代。アメリカにも数多く輸出され、当時のアメリカの法規制をクリアするために安全性や排気ガス対策が施され、ヨーロッパだけでなく世界中を視野に入れた開発によって生まれた。

アメリカでは当時のヒッピーやサーファーたちに愛され、ロードトリップの相棒として好まれた。現在でもヒッピースタイルのカスタムが似合うクルマとしてアーリーバスといっしょに多くのファンがいるモデル。

いわゆる「ワーゲンバス」という意味ではこのモデル(世代)までを狭義では表している。

本国ドイツでは1979年に第3世代に移行するが、ブラジルではこのモデルが1975年から2013年までKombiの名前で生産されていた長寿モデルとして君臨していた。

1973年にフェイスリフトが行われ後期型であるT2bに。フロントウインカーがヘッドライトの上に移動して、ベンチレーショングリルと平行にセットされた。これはキャンピング仕様に架装されたコンバージョンモデル。Photo by Volkswagen Nutzfahrzeuge

第3世代 T3 1979~1990年 空冷から部分水冷へとエンジンが進化。オートマ、エアコンも実装。

T2のイメージをそのまま残すものの、フロントマスクのベンチレーショングリルの左右にヘッドライトがレイアウトされ、全体的に直線基調のシェイプへと進化した第3世代。

前期モデルに搭載されたのは空冷水平対向4気筒だったが、後年にエンジンのヘッド部分を水冷化した部分水冷エンジンに進化。

さらには現代車両としての必須項目であるエアコンやパワステ、それにオートマチックトランスミッションなどもチョイスできるようになった。駆動系では1986年に「シンクロ」と呼ばれる4WDモデルも追加された。

この世代から初めて車名が付けられるようになったがややこしく、T3はヨーロッパではカラベル、北米ではヴァナゴンと違う車名で販売された。日本では当初はカラベルだったが、1991年式のみがヴァナゴンの名前で販売されていた。

基本的に1990年までの製造だったが、南アフリカでは2002年まで製造されていた。水冷エンジン搭載モデルはフロントグリルが2段になっているので判別しやすい。

T3は北米マーケットでは当初は丸目2灯だったフロントマスクが1986年から角目4灯に変更される。これは販売される国の法規制によって変わり、同じ世代でも国によって丸目2灯、丸目4灯、角目4灯などが存在した。Photo by Volkswagen Nutzfahrzeuge

第4世代 T4 1990~2003年 FFベースの水冷エンジンモデルへと大幅進化。

VWやポルシェの伝統でもあったRR(リアエンジン、リア駆動)から脱却し、FF(フロントエンジン、フロント駆動)へと大幅に進化した第4世代。いわゆるクラシカルなVWバスの乗り味は失われたが、より現代のトランスポーターバンやミニバンとして舵を切った。

角目2灯のスタイリングももはや過去のモデルのイメージからは大きく変わったが、今見ると、これはこれでヤングタイマー的なクラシックな雰囲気になっている。1996年にマイナーチェンジし、よりラウンドシェイプが際立つデザインに変更された。

搭載されるエンジンは直列5気筒の2.5Lがメインで、ディーゼルエンジンもラインナップ。後期モデルには2.8LのV6エンジンも搭載された。

車名はヨーロッパではカラベル、北米ではこの世代からユーロバンという名称に変更。日本ではヴァナゴンの名前で1997年まで正規輸入されていた。

同じクルマなのに販売国で車名が変わってしまうというの何ともややこしい。

いわゆるワーゲンバスの持っている独特なキャラクターは無くなったが、実用的なミニバンとしてのユーティリティは格段に向上した第4世代。この世代までは日本に正規輸入されていた。Photo by Volkswagen Nutzfahrzeuge

第5世代 T5 2003~2015年 車格が大きくなった第5世代。

取り扱いがVWの商用車部門(Volkswagen Nutzfahrzeuge)になって初めての新モデルが5世代目。先代よりも車格が大きくなって、居住性や積載能力が向上した。同時にそれまで社外のコーチビルダーが担当していたキャンピングモデルを自社生産にスイッチ。ポップアップルーフテントを装備したカリフォルニアが登場する。

グレードは商用ベースのトランスポーター、乗用モデルのミニバンになるマルチバン、さらにキャンピング仕様のカリフォルニアという3本柱になった。カリフォルニアというモデル名が登場しておきながら、アメリカにはT5は輸出されていないという。

2009年にマイナーチェンジによってフェイスリフトが行われ、より吊り目が特徴になった現代的な顔つきになった。

第6世代 T6 2015~2022年 スタイリングはT5を踏襲し、細部がアップデートされた。

全体的なイメージは先代から大幅な変更をされることなくフルモデルチェンジとなった第6世代。といっても細部や内装などはアップデートされた。エンジンは新たな欧州の法規制に準拠したディーゼルエンジンが搭載された。日本への正規輸入はない。

第7世代 T7 2022年~ シャープな顔つき、三角窓もある新世代モデルはハイブリッドも登場。

フロントグリルが先代よりも薄型になり、それにともなってヘッドライトもシャープなデザインへと一新された第7世代。スタイリングではフロントウィンドーが先代に比べると寝たことで空力がアップしたスタイルになるとともに、三角窓がデザインされるのが大きな違いになっている。

エンジンは1.5Lと2Lのガソリンエンジン、2Lのディーゼル、それに新たに218馬力のハイブリッドモデルもラインナップされた。

ID.Buzzは新型ワーゲンバスの派生モデルとして新たな歴史に名を刻む。日本導入も決定し、価格も気になるぞ。

いわゆるトランスポーターシリーズの直系ではないけれど、かつてのワーゲンバスの現代的な解釈として生まれたのがID.Buzzの存在。これはT1、T2のイメージを現代のEVで再構築したモデルとして生まれ、日本でも正規輸入のアナウンスがされているモデル。もうひとつのワーゲンバスの歴史を作っていくモデルになるかもしれない。完全EVという新たなチャレンジも見逃せない。ヨーロッパで発表された価格で換算すると日本円で約900万円近い価格。もはや手軽に乗ることができるモデルではなさそうなのが気になるところ。

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