オーダー製作してもらったPREBLICのコードバンウォレットをリペアしてもらい、そのクラフトマンシップを再確認。

たまに身につける洋服とは違って、毎日のように使っているモノほど経年変化も経年劣化も早い。もちろんそれがアジのある経年変化であればプラスだけど、残念ながら劣化も背中合わせ。今回は毎日使っているレザーウォレットの縫製が一部崩壊してしまったことに気がついて大慌て。私が普段使いしているウォレットはフルオーダーで作ってもらったPREBLIC謹製。同じモノは2つと無いので早速PREBLICに相談すると「リペアできますよ」と心強いお言葉をいただく。ずっと使えるように高級レザーの代名詞であるコードバンを選んで、中身の仕様まで考えてわがままなオーダーをしてもらっただけに、リペアしながら使い続けることができるのはうれしい。というわけでそのリペアの模様をレポート。

悲報は突然に。縫製部分が切れてるじゃん。

ラブ・ストーリーは突然にと小田和正さんは言っていたけど、私の場合はバッドニュースは突然やってくるであった。というのもここ最近はキャッシュレス決済が多く、支払いもスマホで「ピピ」というケースがほとんどなので、ウォレットをポケットから出し入れすることも少ない。で、たまに財布を取り出して中から紙幣を出そうとしたら悲報が。内部のポケットの端のステッチが切れているではないか。

ここの部分は紙幣の出し入れで負荷がかかる部分だったことと、ヒップポケットに普段入れているとポケットの上から顔を出す部分なので、座ったときにこすれたりすることも多いのだろう。崩壊までは行ってないけど、何とかしないといけない事態に。

でもそこは私のわがままなデザインをカタチにしてくれたPREBLIC。ハンドメイドなだけに、縫製が切れたくらいの状態であればリペアも基本的には可能だという。

ついでに新品のときから、現在2年半使用した経年変化も合わせて、リペアの様子を紹介します。

これが作ってもらったばかりの新品の状態。ホーウィン社のコードバンのなかでも、現在は入手困難だと言われているウイスキーカラーを採用したロングウォレット。中は小銭入れを設けず、左右にカードが横向きに計18枚入るポケットを設けることで、バイクに乗ってもカードが割れない仕様に。その他、紙幣や領収書などを入れるポケットが3つあるというわがままな仕様。既製品のカスタムオーダーやフルオーダーでも作ってもらえるのがPREBLICの強みである
約2年半、いつもパンツのバックポケットに入れて経年変化した現在の状態。お尻の形にクセが付いたり角が馴染んだりとカタチも変わり、レザー自体も色に深みが出て、コードバンらしい艶も出ている。ウォレット上部に付いた線はどうやらジーンズのインディゴが色移りしたみたいで、個人的には気に入っている
悲報。普段紙幣を入れている一番奥にあるポケットのサイドの縫製が崩壊。紙幣の出し入れのときに負荷がかかる部分なだけに縫製糸が耐えかねた様子。いつ切れたのかはまったく不明(笑)。ただ、革の部分には破れなどのダメージが無かったので、再縫製すれば大丈夫という診断
今回さくっとリペアしてくれたPREBLICの今村さん。ブランドオーナーであり、クラフトマンでもある。英国留学でビスポークやレザーウエアの知識と技術を学び、帰国してレザージャケットから小物までハンドメイドで製作している気鋭のブランドである

詳しくはこちらの記事も参考に。

ビスポークのレザーアイテム道をひた走るPREBLICが代々木八幡に移転してパワーアップ。

ビスポークのレザーアイテム道をひた走るPREBLICが代々木八幡に移転してパワーアップ。

2023年10月25日

その1。メンテを超えてリペアになってしまった。まずは縫い直す前の下準備。

基本的に私の場合、ウォレットのメンテはクリームやオイルなど塗ることは、レザーがよほどの状況になっていないかぎりはしない甘やかさない主義(笑)。メンテといえば、手にするときに気がつけば手でこすって撫でるだけ。要するに手の脂をたまーに入れている感じ(笑)。

まあそれでもウイスキーカラーのコードバンは艶もあって「らしい」経年変化をしてくれている。ただ、今回の場合はメンテを超えて思いっきりリペアになってしまったけれど、慣れた手つきでサクッと丁寧に仕事をしてくれたのはさすが。まずは縫い直す部分の状況を見て、リペア方法が決まったら縫い直すための下準備をしていく。

最初に縫製糸のチョイス。今回は同じ色、素材の縫製糸であるフランスの麻糸をそのまま使うことに。もっと強い糸を使うのではなく、糸切れした部分を再縫製して、さらに返し縫いをすることで強度を高めることにした。こうすれば最初に縫っている糸とも色が合うので違和感なく仕上がる。もともと麻糸は馬具の縫製などにも古くから使われているモノと同じ糸を使っている
切れている縫製糸を千枚通しを使ってレザーを傷つけないよう丁寧に抜いていく。外周すべての縫製糸を抜くのではなく、縫い直す部分のみに限定して処理していく
抜いた糸は余計な部分は短く切り、先端に接着剤を付け、もともとある縫い穴の中に入れ込んで接着することで抜けなくなるように処理する。接着剤が表面に出ないように丁寧な作業は必須だ
縫製している革が幾層にもなる部分にはもともと接着剤が塗られているけれど、使用によって乾燥し、汗などを吸って強度も低くなっているので、目の細かいサンドペーパーで元々塗られていた接着剤の層を削る。こうすることで新たな接着剤の乗りが良くなる
サンドペーパーで磨きを入れて以前の接着剤が削られ、さらに革表面が肉眼ではわからない程度にザラザラになることで、接着剤の食いつきが良くなる。そこに小さなヘラを使って接着剤を塗る。必要最低限の量にとどめるのは感覚と経験値が物を言う
そのままだと接着剤がある程度乾く前に革同士がくっついてしまうので、クリップを挟んで患部(正しくは接着面)を空気に触れさせることで接着剤をある程度乾燥させる。接着剤は空気に触れることで接着力が高まるのだ。約3分間このまま放置して再縫製する下準備が完了

その2。ハンドステッチで縫製してリペア完了。

基本的にプレブリックのプロダクツはレザー小物でもレザージャケットでもミシンとハンドステッチを併用するスタイル。私のウォレットの外周はハンドステッチで仕上げているので、リペアも同じようにハンドステッチで再縫製する。長年の経験がある今村さんはスピーディに仕上げていくのはさすが。あっという間にオペ完了。

ウマと呼んでいる木製の土台にウォレットを固定して両手を使って縫い上げていく。もともと縫製されていたときに革に空けた穴に合わせて麻糸を通していくので、新たに革に穴を空けたりはしない
縫い終わりの糸は先端に接着剤を少量塗り、革の中へ入れ込んで乾燥させることで糸留めになる。ウォレットの表面に接着剤がはみ出さないように丁寧に作業する。これで再縫製は完了
接着剤がある程度乾いたら、ハンマーで今回再縫製した部分を叩く。こうすることによって革にステッチ部分が埋もれて糸が切れにくくなるだけでなく、縫い目の凹凸感がフラットになってキレイに見える
リペア完了。今回は見栄えよりも耐久性を考慮して糸切れしていた部分に返し縫いをすることで強度を高めることに。こういうちょっとした気遣いをしてもらえるのもハンドメイドのプロダクツならでは。これを機に中身を掃除したりする私なのであった

PREBLICのアイテムはジャケット、小物問わずリペアに対応していて(もちろんリペア可能な状態にかぎるけど)、すべてのプロダクツが永く使ってもらうことを信条としているので、「ウチのアイテムであれば、まずは相談していただければと」と今村さん。リペアの預かり期間やリペア料金もアイテムの状況によって変動するのであしからず。たとえば今回の場合であれば、革のダイヤモンドと言われる高級素材でもあるコードバンも、リペアをしながら一生モノになれば安いもんだと思うのは私だけではないはず。

【DATA】
PREBLIC
渋谷区元代々木町54-1 東京セントラル代々木101
TEL03-6884-8197
13時~20時 水曜定休、木曜は予約制
https://www.preblic.jp/

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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