フラットソールでもヒールだけリペアができる「埋め込みタンクリフト」を体験。

レザーシューズやブーツはリペアをしながらずっと履き続けることができることが強み。日頃のメンテは当然ながら、ソールが減ったらソール交換が可能なことがその特徴だろう。

ただ、それらのソールは大抵、ヒールから減っていく。ヒールが独立したソールになっていればヒール部分だけの交換をすればいいけれど、フラットソールに代表される一体型のソールの場合は、ソールのカカト部分が減った=オールソール交換と思いがち。

しかし、シューリペアショップ「BRASS」ではフラットソールでもカカト部分のみを交換することができるという。

オールソール交換になる前に「埋め込みタンクリフト」でヒール部分の修理が可能。

シューズやブーツはとかくヒール部分からすり減っていくため、クレープソールなどのフラットソールは、まだつま先部分はそれほど減っていないのに、ヒール部分が先に減っていく。その際にオールソール交換ではなく、フラットソールでもヒール部分だけを新品に移植するのが今回紹介する「埋め込みタンクリフト」だ。

BRASS代表の松浦さんに聞くと、

「フラットソールのカカト部分が減ったらすぐにオールソール交換だと思われている人は多いんですが、部分的にリペアできます。すり減った部分だけを取り除いて、そこに新しいソールを埋め込むことで、靴にもオールソール交換ほどの負荷をかけずに済みますし、ヒール部分だけのリペアなら、オールソール交換ほどコストもかかりません。限界まで履かずに、メンテするときなどにヒール部分の減りは気にしておいてもらえればと思います」

オールソール交換はコストもかかるし、都合2回くらいまでしかできず、それ以上になるとウエルトも交換しなくてはいけなくなることを考えると、リペアにも時間が掛かるしコストもかかるので、フラットソールでもヒール部分のみをリペアしていくことはおすすめしたい。

今回リペアをしてくれたBRASS松浦さん。ヴィンテージから現行モデルまで、シューズやブーツのリペアからカスタムまでお手の物。まずは現物を見せて症状を確認してもらおう。今回の場合はヒールの埋め込みで対応できるということでこの企画が実現した

実際のリペアの様子を見学してみたので、そのスゴ技をご覧あれ。

「埋め込みタンクリフト」と言われても「?」な人もいるかと思うけれど、これは補修部分だけに新たなソールパーツを移植するリペア方法。仕上がりだけ見てもいったいどうやってやっているのかわからない部分なので、今回は特別にその工程を見学させてもらった。リペア自体はそれほど時間はかからないけれど、それはプロの技だから。大好きなシューズを永く履くためには、ユーザーも常に愛靴に気を配ってあげることで、大きなリペアを未然に防ぐことができると学ぶのであった。

1.ヒール部分がミッドソールまで削れる寸前のDanner × Lightningサイドゴア・ショートブーツ。

今回リペアを相談したのはDanner × Lightningサイドゴア・ショートブーツ。オリジナルのビブラム #148のヒール部分は、ミッドソールまであと1mmくらいのところまですり減ってきたためにBRASS松浦さんに相談してみる。

つま先部分はまだまだすり減っていないけれど、ヒール部分はご覧のようにもうすぐミッドソールに到達しそう。この状態であればヒール部分の埋め込みリペア「埋め込みタンクリフト」が可能だという。

2.埋め込むソールの下処理とすり減ったソールを剥がす。

まずは埋め込むヒールの接着面を研磨。これは接着剤が付きやすくするための下処理のため、荒削りになる。

その後、ヒールを実際のシューズに当てて、ソールパターンに違和感無く合わせるように調整し、元のヒール部分の切除する部分を位置出しし、線を引く。

カッターでヒール部分に切り込みを入れる。あまり深く入れるとミッドソールの中まで刃が達してしまうので慎重にカットする。

切れ込み部分からピンサーという専用の道具を使ってソールのヒール部分だけを掴んで剥がす。ここは力技になる。

写真上/ヒール部分のみをカットした様子

写真下/下が元々のすり減ったヒール部分と、上が今回埋め込むパーツ。厚みだけでもかなり違うことからずいぶんとすり減っていたことを思い知らされる

3.新たなソールを埋め込む下準備。

まずは剥がしたヒール部分のミッドソール(新たなヒールを接着する側)を研磨する。これは表面を整えるだけでなく、接着剤がつきやすいようにするための工程。

今度は何度も埋め込むソールを仮り合わせしては削り、ソールパターンが違和感なく移植できるように微調整していく。

ソールを埋め込む位置出しをしたら、基準線をペンで書き、ソールを埋め込む下準備が完了。いよいよ埋め込み作業に入る。

4.ソールの埋め込み接着。

接着剤を塗る前に下地用のプライマーをヒール部分とシューズ側のミッドソールの両方の接着面に塗り、乾燥させたらそれぞれに接着剤を塗っていく。

接着剤がある程度乾いたら、ヒーターを使って接着するヒールのパーツだけを1分ほど加熱して温める。こうすることで接着しやすくなる。

先に引いていた基準線をガイドに、位置を微調整しながらヒールを接着。

仕上げにシューズに木型を入れ、マシンを使って圧着する。

5.余分なソールを削る。

埋め込み接着したソール部分のパーツは大きめで、左右がはみ出ているので、研磨して余分な部分を削り取る。この時点で埋め込んだヒール部分はぱっと見ではほとんどわからない。

6.削れたコバを再塗装する。

研磨によってコバ部分が削れて塗装が剥がれてしまったので、ここを再塗装する。刷毛を使って手作業で外周をぐるりと塗装する。

7.最終仕上げ。

コバの塗装が乾いたら最終研磨。研磨をしながら移植部分の継ぎ目を整えたり、新たなヒールパーツ特有のバリを取って滑らかにしていく。

研磨が終わったら、BRASSがプロデュースするThe Mail’s Shoe Care Co,のミディアムブラウンのクリームを使って磨く

8.リペア完了!! ぱっと見ではわからないほどキレイにヒール部分が移植された。

 

ヒール部分のみが新品のソールに生まれ変わった。見た目では移植していることはまずわからない仕上がりはさすがプロのテクニック。

埋め込みタンクリフトのリペアは、シューズを預かってから約2週間で仕上がる。今回のリペアで価格は4500円(ソールの種類やリペアするシューズによって変動)と、オールソール交換よりも格段にリーズナブル。

オールソール交換は何度もできないし、コストも時間もかかるだけに、まさに「転ばぬ先の杖」なリペアといえる。

このリペアはソールパターンが同じパーツが存在していれば対応してくれるので、まずは現物を確認してもらうことをおすすめする。

フラットソールのヒール部分がすり減って来た人はぜひ相談してみよう。

【DATA】
BRASS Shoe Co.
東京都世田谷区代田5-8-12
TEL03-6413-1290
営業日、営業時間はSNS参照。https://www.instagram.com/brasstokyo/
https://www.brass-tokyo.co.jp

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

無垢の金属、輝く伝統。純金や純プラチナを使った「市松」の究極の逸品

  • 2026.09.25

純金や純プラチナなど、純度100%の軟らかい金属をアクセサリーにするためには非常に高い技術が必要だ。それを可能にするのが「市松」。約30年にわたって培った“叩く”技術が可能にする唯一無二のリングの輝きに迫る。 熟練の技なくしては完成しない究極の逸品 原材料高騰の影響もあって、希少性が高まっている純金...

全16色! 10年以上のロングセラーを誇る「HEATH」の名作ネルシャツが超人気なワケ

  • 2026.09.30

秋冬のアメカジ服の定番、ネルシャツ。横浜のセレクトショップHEATHが手がけるオリジナルブランドBLUE PORTのネルシャツが10年以上のロングセラーを誇るとのことで、その人気の秘密に迫る。 【理由①】優れたコストパフォーマンス ディテールやシルエットにもこだわった高いクオリティに対して、なんと税...

憧れのアメリカンハウスに住む! 「SUNNY SPOT」の家づくりを徹底解剖

  • 2026.10.09

福岡・沖縄を拠点にアメリカンな家を作り続ける「サニースポット」。住む人のライフスタイル考慮しつつイメージする憧れの生活を実現する、そんなこだわりの家を手に入れたお宅を訪問! 広い土地を贅沢に使う、カリフォルニア風の平屋[ 石川邸 ] もともとアメリカンなものが好きだったという石川さん。家を作るに当た...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

TRUE SWEATWEAR, MADE IN JAPAN. “未来のヴィンテージ”となる究極のスウェット。

  • 2026.09.29

スウェットやTシャツを中心に、高品質なプロダクトを創り続けるジャパンブランド「RIDING HIGH」。生地や糸より前の“綿”から開発するなど、徹底的なモノづくりの姿勢は国内外で高い評価を獲得している。そんな彼らが生み出すプロダクトは、すべてメイド・イン・ジャパンである。 [caption id="...

Pick Up おすすめ記事

時間を重ねて、ヴィンテージになる。「RAGGY CLOTHING」の何年先も、格好いいと思える服

  • 2026.10.02

時代が変わっても、色褪せない格好よさがある。「ラギークロージング」が大切にするのは、流行に左右されない普遍的さ。アメリカンカジュアルの王道を、いまの時代に自然に着られる1着へと仕立てる。 旧きよき服を現代の日常に アメリカンカジュアルの王道を見つめながら、現代の日常に馴染む服を作る「ラギークロージン...

歴史に残る空軍服を、いま再び。機能美が息づく「中田商店」のモーガンメンフィスベル

  • 2026.10.02

メンフィス・ベル号の機長、ロバート・K・モーガン氏との交流から始まったモーガンメンフィスベルは第二次世界大戦期の空を支えたフライトウエアを現代に蘇らせる中田商店のオリジナルブランド。極限の環境で求められた機能と、色褪せない完成されたデザインが魅力の航空服を紹介する。 R.A.F. Irvin She...

TRUE SWEATWEAR, MADE IN JAPAN. “未来のヴィンテージ”となる究極のスウェット。

  • 2026.09.29

スウェットやTシャツを中心に、高品質なプロダクトを創り続けるジャパンブランド「RIDING HIGH」。生地や糸より前の“綿”から開発するなど、徹底的なモノづくりの姿勢は国内外で高い評価を獲得している。そんな彼らが生み出すプロダクトは、すべてメイド・イン・ジャパンである。 [caption id="...

無垢の金属、輝く伝統。純金や純プラチナを使った「市松」の究極の逸品

  • 2026.09.25

純金や純プラチナなど、純度100%の軟らかい金属をアクセサリーにするためには非常に高い技術が必要だ。それを可能にするのが「市松」。約30年にわたって培った“叩く”技術が可能にする唯一無二のリングの輝きに迫る。 熟練の技なくしては完成しない究極の逸品 原材料高騰の影響もあって、希少性が高まっている純金...

今季ワードローブに加えたいアイテムを厳選紹介! 「EIGHT-G」で秋支度。

  • 2026.10.04

秋の装いが楽しくなる季節。ミリタリーやワークといったアメリカ由来の実用服をベースに、素材やディテールへこだわりを詰め込んだエイトジーの新作から今季のワードローブに加えたいアイテムをピックアップ。 (右)ジャケット110,000円(TMJ2615)、シャツ23,100円(8LS-81)、ジーンズ24,...