日本酒のヴィンテージ、古酒の魅力。
ヴィンテージのお酒といえば、まず思い浮かべるのはワインやウイスキー。現在銀座を拠点する長期熟成日本酒バー「酒茶論」のマスター、上野伸弘さんは、「無色より、琥珀色のお酒の方が価値が高く見られるんです」という。事実、ワインやウイスキーといった色の付いたお酒は、日本のみならず世界で高価で取り引きがされ愛飲者も多くいる。
最近では日本酒も世界中に輸出され、日本酒人気は否めないが、それは新酒がメイン。日本酒の古酒はまだまだ知られていない。上野さんは、日本酒の古酒を世界に広めるための様々な活動を行っている。
「昔は日本酒も古酒で飲むのがスタンダードでした。しかし明治以降、製造段階で税金をかけ始めたことで、早い段階で現金に換えたい酒蔵は、新酒を流通・販売。とはいえ、古酒を好む人は多く、新酒に古酒のような香り付けをすることもあったのようです。戦後、酒造りを再開したことで、再びそれぞれの酒蔵が古酒を造り始めました」
日本酒というのは、陶器や磁器、ガラスといった様々な質感の器で楽しめる唯一のお酒。それが古酒だったら……。酒茶論では、旧くは1964年ものからいただくことができる。自分の生まれ年や青春時代のお酒を飲むことで、自分の熟成をも感じならじっくりと楽しむのもいいだろう。
ヴィンテージ日本酒の奥深き世界を体験。
現在の日本において、日本酒は新酒で飲むというのが一般的になっているため、なかなか古酒を飲む機会はなかったという人も多いかもしれない。ギュッと凝縮された古酒特有の味わいをぜひ味わって欲しい。その中でもおすすめがこちら。
達磨正宗/昭和四十七年醸造酒
古酒に特化した酒蔵で、古酒=達磨正宗といった知名度もある。通常日本酒を造るときには過度にお米を削るのではなく米の旨みを生かした精米を心掛ける。こちらは50年熟成された希少な一杯だ。
笹の川酒造/二十五年古酒
笹の川酒造は日本酒だけでなく、スピリットやウイスキーの技術も持つという少し珍しい酒蔵。こちらの25年モノの純米酒は、年数のわりに重さがなくスッと飲める一杯。香りを楽しみながら飲んでほしい。
天吹酒造/吹息の天
泡盛を造るときに採用される全麹仕込みを取り入れており、蒸した米を麹にして使っている。さらに天吹酒造のオーク樽で熟成させることで、酸味と甘みが融合して絶妙な味わいを造り出している。2007年もの。
月の桂/純米大吟醸古酒
京都の増田徳兵衛商店の銘柄、月の桂の純米吟醸酒を贅沢に熟成させた古酒。オーダーして作った特製の磁器の甕に入れ熟成させるというこだわり。美しい琥珀色で華やかな香りも楽しんで欲しい。
榎酒造/貴醸酒
通常、日本酒を造るときに水が使われるが、この貴醸酒はお酒を使うというとても贅沢な造り方をしているため、高貴な方が好んで飲んでいた御酒。濃厚で香りを楽しみながらゆっくり飲んで欲しい一杯だ。
東力士/熟露枯
奥深い洞窟で熟成した東力士の熟露枯(うろこ)シリーズ。淡い琥珀色が特徴で、10年と20年熟成がある。蜂蜜の様な甘い熟成香と、アルコールの刺激を感じさせないまろやなか味わいで飲みやすい古酒。
【DATA】
長期熟成日本酒BAR酒茶論
東京都中央区銀座6 丁目4-8 曽根ビル B103
TEL03-6263-9710
営業/平日18:00~深夜、土曜16:00~21:00
休み/日曜
https://www.shusaron.net
(出典/「Lightning2023年4月号 Vol.348」)
Text/M.Matsumoto 松本めぐみ Photo/A.Osaki 大崎晶子
関連する記事
-
- 2024.11.22
渋谷発!! カクテル世界チャンピオンがプロデュースした新世代ハイボールが誕生。
-
- 2024.11.12
ビール造りに終わり無し!クラフトマンシップに共感したOHRAIラガー誕生!