時代やジャンルを超えて愛されるフライトジャケットの代名詞、MA-1のヴィンテージシーンの現状は?

  • 2023.03.16 2023.03.10
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アメリカ軍が開発した数あるミリタリーウエアのなかで、最もストリートファッションに溶け込んだ普及の名作MA-1。そんなMA-1 の歴史とヴィンテージシーンの現状を見てみよう。

採用から20年以上現役で活躍した不朽の名作。

1944年からインターミディエイトゾーン(ー10℃〜10℃)で採用されたフライトジャケットB-15の後継モデルとして’50年代初めに開発され、’50年代中頃に米空軍に正式採用されたMA-1。

大きな変更点としてはB-15シリーズにあった大きなムートン襟からリブニット襟となった。その背景には1947年に米陸軍航空隊が解体され正式に米空軍が誕生ことがある。時を同じくして軍用機がプロペラ機からジェット機へと変わったことで、パイロットの装備がレザー製のヘッドギアからハードヘルメットへと移行。これにより大きな襟がヘルメットに干渉することから、B-15シリーズのモディファイモデルとしてムートン襟からリブニット襟に変更した新型ジャケットとして登場。

後継モデルのCWU-45P(’76年〜空軍に正式採用)、36P(ライトゾーンモデル。’78年〜採用)が採用された後の’80年代まで現役で活躍した(タイプF・Gはグランドクルーも着用)。

正式な軍用規格番号はMIL-J8279で、数字後に表記なしからA〜Gまで計8タイプが存在。年代によりナイロンの色味やライニング、ポケットの形状の変化はあるが、基本的な規格は同じ。

精巧なレプリカが台頭するもファンにはやはり本物が人気。

ジャンルを超えファッションアイテムとして確固たる地位を築き、精巧なレプリカも台頭する今、状態のいい本物は減少傾向だが、その分、状態の良いものは本物にこだわる愛好家の間では高値で取引されている。

「僕はフライングジャケットが好きなので扱うのはタイプEまで(〜’78年)。F以降はグランドクルーの冬期用ジャケットになり分類がフライングジャケットでなくなるので対象外です。後継モデルのCWU-45Pやライトゾーン用のCWU︲36Pはフライングジャケットなので扱いますけどね」

と話すのは、ヴィンテージクロージング専門店「ゴー・フォー・ブローク」の成田さん。

数あるフライトジャケットの中でも最も知名度の高いMA-1。今回取材に協力してくれたのは、ミリタリー系のみならずデニム、ハワイアン、スポーツウエア、レザーなど幅広くアメリカンヴィンテージウエアを扱う「54BROKE(ゴーフォーブローク)」(東京都目黒区)の成田さん。今回も40年以上に渡るコレクションの中からMA-1の歴史がわかるスペシャルなアイテムを厳選チョイス

「状態がよくなかったり、サイズが大きすぎたりするものはそれなりの価格でも入手できますが、サイズや状態もいいと高くなりますね。特に、階級章付きで実際に着用していた人がわかる『エヴィデンス』が付くとコレクターの間で高額になります。あと、映画『トップガン』人気でCWU-36Pや45Pも注目が集まっているので価格が上がってきてますね」

ただ、今やアメカジ系ブランドはタイプ別に精巧なレプリカを製作していることもあり、「実物」にこだわるコアなファンでない限りヴィンテージを入手するメリットは少ないかもしれない。

ただ、時代を経た質感はやはり「本物」でしか味わえないもの。本物にこだわりたい人は、偶然の出会いを楽しみにこまめに古着店やネットをチェックしてみよう。

パーツも時代によって仕様が若干異なる

階級章

肩口に付けられることが多い階級章。こちらは少将。少尉〜大尉、少佐〜大佐、少将〜大将・空軍元帥の順で線や星など違いがある。

ライニング(裏地)

MA-1といえばオレンジのライニングのイメージが強いが、これはタイプC以降でそれ以前はグレーのライニングとなっている。

カスタムパッチ

所属する部隊をはじめ、搭乗機の種類やスキル(経験値)、記念行事など様々な種類がある。カラフルでポップな絵柄が多い。

比翼(前立て)

風の侵入を防ぐフロントの比翼(前立て)はファーストモデルのみ上部の角が角型で2代目(タイプA)以降は丸型になる。

ファスナー

最初期モデルはクラウンのスプリングジッパー、以降は年代によってクラウン、コンマー、スコービル製が採用されていく。

コードループ&タブ

脇の機内通話装置のコードを固定するコードループやフロント左に着く酸素マスクのホースを固定するタブは初期モデルのみに付く。

ポケット

ポケットにフラップが付くのは1971年に製造スタートしたタイプE以降。それまでのタイプDまではフラップなしのポケット。

タイプや年代、製造業者はタグを見れば詳細がわかる!

MA-1は精巧に作られたレプリカも多数存在するが、襟下もしくはポケット内側に付けられたタグを見ればミルスペックかどうか、年代や製造業者などがわかるので、タグの見方を覚えておくべし!

1 ミルスペックナンバーとタイプ
MA-1の正式名称は「MIL-J-8279」。その後の「D」がタイプ。文字なしから「G」まで全8種類。

2 契約番号
DSAやDLAで始まる番号が米国政府の契約番号。’60年代以前の黒ラベルにはこの表記は見られない。

3 製造日
こちらは1968年の7月19日に製造されたモデル。

4 製造メーカー
有名なアルファインダストリー以外にもローレン、エクセルガーメント、スカイラインクロージングなど年代によって多数ある。

市場価格を知る!

MA-1のヴィンテージといえるのは、” ミルスペック” として正式採用されていた「タイプG」まで、フライトジャケットに限定すれば「タイプE」までだが、年代が古く状態のいいものになると数は少なく数万〜数十万と高値で取引されている。ただ、’80年代以降で民間用に作られたものやレプリカ品も比較的安価でヴィンテージとして市場に多数出回っている。米空軍に正式採用されていた “ミルスペック”(実物)にこだわりたい人は注意が必要だ。

1950年代中期 B-15D モディファイ メーカー不詳

MA-1の前身となるB-15の最終モデルとなるB-15Dの襟を廃したモディファイモデル。丁度MA-1との移行期に製作された貴重な品。脇のコードループや角形の比翼など初期モデルまでしか見られないディテールも見所。10万7800円

1957年 MA-1 TYPE A ROLEN製

1957年まで製造された2型目となるタイプAの最終モデル。こちらから比翼上部は角がなくなるが、脇のコードループや酸素マスクのホースを固定するオキシジェンタブが採用されていた。ボディはウールとナイロンの混紡。ジッパーはコンマー製。6万3800円

1960年 MA-1 TYPE B EXCEL GARMENT製

1958〜’60年まで製造されたタイプB。タイプBからコードループやオキシジェンタブが廃され、後のモデル同様よりシンプルなスタイルに。襟や袖のリブはもちろん、胸のネームや「戦術航空軍団」のパッチ、タグも完璧に残るミントコンディション。17万3800円

1961年 MA-1 TYPE C SKYLINE CLOTHING CORPORATION製

1961年から製造されたタイプC。ジッパーの形状やタグの位置が襟からポケット内に変更されたほか、特徴的なのがライニングがオレンジに切り替わりリバーシブルになった点。肩には階級章(中尉)が付く。12万8000円

1968年製 MA-1 TYPE D ALPHA INDUSTRIES製

MA-1のコントラクター(製造業者)として知られるアルファインダストリーが手がけたタイプD。こちらはジッパーにスコービル製を採用。こちらにも肩に中尉の階級章、胸と腕には戦略航空軍団と第509爆撃航空団のパッチが付く。8万5800円

1972年製 MA-1 TYPE E ALPHA INDUSTRIES製

1971年より製造されたタイプE。フライトジャケットとして最終モデル。このモデル以降、Gまでポケットにフラップが付く。肩には少将の階級章が付くほか、状態がいいだけでなく、こちらは実際に着用していた本人の略歴も資料として残っているという、歴史的資料として貴重な1枚。ASK

1970年代 CWU-45/P GREENBRIER INDUSTRIES製

MA-1の後継モデルとして採用されたCWU-45/P。生地がナイロンから耐熱アラミド繊維に変更されたほか襟やポケットの形状、背中のプリーツなどに変更が加えられた。ネームタグも残っている。複数の部隊に参加したパイロットのようで各所に複数の酢コードロンパッチが付く。ASK

【問い合わせ】
ゴーフォーブローク
TEL03-6277-4269
https://ameblo.jp/54broke-evis/

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2023年2月号 Vol.346」)

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