ビンテージバイクの魅力は、経過した年月の分だけ重ねてきた歴史にある。新車当時のペイントを大切に維持してきた車両には、レストアした車両にはない熟成された魅力が詰まっている。
「カバチモーターサイクル」代表・山口和幸さん
フルカスタムバイク製作で知られるカバチモーターサイクル代表。自身のヴィンテージバイクコレクションは状態をキープするため、塗装面のワックスなど日々のケアを欠かさないという。こういったケアがよいエイジングを生み出しているそうだ。
大切にメンテナンスされ続けてこそ生み出される、オリジナルペイントの魅力。
ヴィンテージバイクのコレクションを多数所有していることで知られているカバチ代表の山口さん。数あるコレクションの多くは新車当時の塗装がそのまま維持されたいわゆるオリジナルペイントをキープした車両だという。
30年前のバイクであれば、30年間風雨に晒され徐々に劣化、つまりエイジングしていく。多少艶が退けていたりクロームパーツがくすんでいたとしても、あえてオリジナルペイントを選ぶのには意味があると山口さんは語る。
「ヴィンテージバイクはペイントも含めたその車両の歴史も一緒に引き継ぐのが最高の贅沢です。だからこそ、新車時からの塗装は、そのバイクと一緒に過ごしてきた歴史として大事にしたいんです」
ちなみに技術的な話をすると、高温で焼き付ける純正塗装は、後からペイントされた塗装面よりもはるかに表面が硬く耐久性もある。ある程度のコンディションをキープしていれば、再塗装するよりオリジナルペイントを維持するほうが塗装は長持ちするとも言われている。オリジナルにこだわるのにはこうした理由があるのだ。
間違って欲しくないのは、決してカサカサ塗装がエイジングの魅力なのではない。オーナーの愛情をたっぷり受けて、丁寧にケアを受けることで、劣化を極力免れた状態の良いオリジナルペイントにこそ、真のエイジングの魅力があるというわけだ。
1974 YAMAHA 350TR BIGHORN|ロータリーディスクバルブ採用のスクランブラー。
’70年代に登場したカワサキのトレールモデル。350TRに搭載される2ストローク346㏄のエンジンは、カワサキのお家芸であったロータリーディスクバルブを採用し、33馬力を発生。当時としてはかなりパワフルなユニットだった。TRシリーズはこの350TR”BIGHORN” を筆頭に250TR”BISON”、125TR”BOBCAT”、90TR”TRAIL BOSS”をラインナップし、この350TRのみアメリカにも輸出された。取材車両はそんなアメリカ輸出仕様で、日本に里帰りを果たした個体だ。
基本的にはガソリンタンクのペイントはもちろん、マフラーやサイドカバーに至るまで基本的にフルオリジナルをキープしている。
基本的にはガソリンタンクのペイントはもちろん、マフラーやサイドカバーに至るまで基本的にフルオリジナルをキープしている。
ガソリンタンクのデカールは輸出仕様専用のデザインで、ブラックの部分はステッカーになる。多少艶が退けており、全体的に歴史を感じさせるものの、50年近く前の車両であることを考慮すれば、かなり良い状態だ。
【DATA】
KAVACH MOTORCYCLE
東京都大田区大森北6-26-27
TEL03-3765-5767
営業/12:00~20:00
休み/不定休
http://kavach-custom.com/
(出典/「Lightning2023年2月号 Vol.346」)